脱被ばく実現ネット(旧ふくしま集団疎開裁判の会)の基本情報

2017年5月29日月曜日

第10回子ども脱被ばく裁判 被告国の主張は、論理もない、倫理もない、あきれ果てたもの

2017年5月24日(水)第10回子ども脱被ばく裁判口頭弁論が行われました。


脱被ばく実現ネットは福島駅前でのチラシ配布を行い、裁判前集会・裁判傍聴・裁判後の記者会見と参加してきました。


福島駅前でのチラシ配布の様子、皆さんよく受け取ってくれます。


学習会でお話しした西中誠一郎さん(右)と
翌日の25日に国会の復興特別委員会で参考人発言をすることを
報告する原告の松本徳子さん。



開会の挨拶&学習会:西中誠一郎さん「今村復興相発言を巡る取材報告と質疑応答」

続)西中誠一郎さん「今村復興相発言を巡る取材報告と質疑応答」


支援団報告と弁護団より本日の裁判の争点


福島地裁前集会


記者会見と今後の裁判についての意見交換


以下は参加者の方の報告及び裁判傍聴感想です。


(宮口さん報告)

今回も脱被ばく実現ネットの関係参加者8名で、福島駅前で
裁判リーフレットや当会のチラシ約300枚配布し、
裁判前集会に参加しました。
傍聴は抽選には至らず、フリーのジャーナリストを含め傍聴席は
ほぼ満席に近かったです。
裁判内容は、原告陳述人(男性)が子どもの関係で参加できず、
原告代表の今野さんが陳述を代弁しました。
当事者の置かれた状況、放射能被ばく、東電や国の原発事故責任など
当局への確固たる訴えは大変素晴らしい内容で信念の原告陳述は、
今野さんに乗り移ったような迫力でした。
弁護団の反論意見弁論も具体的かつ、根拠を明確に上げ素晴らしいものでした。
20ミリシーベルトの放射能防護の原則無視の根拠。
文科省の学校再開通知の強制力による被ばくの強制。
スピーデイの公表は国の義務にもかかわらず隠蔽の違法。
土壌汚染で、微粒子、セシュウムボールなど内部被ばくの
β線、α線による危険。
韓国のコリ原発周辺の甲状腺癌多発の公表と承認されている事実。
放射能事故後放射性物質基準が環境基準から除外されたままで、
学校法環境衛生基準数値は環境基準にあり、福島原発事故は
公害であり、環境基準に放射性物質規制をしていない行政の怠慢。などを
6人参加した弁護士がそれぞれ担当し、分かりやすい文言で裁判官や、
傍聴者にアッピールしました。
  
子ども脱被ばく裁判弁護団ページの裁判報告は下記。
民の声新聞の裁判記事は下記
【子ども脱被ばく裁判】弁護団「土壌汚染を無視するな」「SPEEDI活用すべきだった」。
男性原告は「子を守るのが悪いか」と怒りの意見陳述~第10回口頭弁論



(松岡さん報告)
 524日、第10回子ども脱被ばく裁判を傍聴しました。
 朝、福島駅前広場で子ども脱被ばく裁判のチラシ撒き、チラシをなかなか受け取ってもらえない東京組は、いつも新鮮な驚き。今回も、快く受け取ってくれる。新しいメンバーが加わり、その上、山形大の学生さん、今春新社会人になった若者が、水曜日は仕事が休みだからと駆けつけ、チラシ配りに参加。総勢8人。
 市民会館で午前中の学習会は、ジャーナリスト西中誠一郎さんの講演。
 「復興省には記者クラブがない、今村大臣の話のあと誰も質問しないから、手を挙げて『330日で、自主避難者の住宅支援打ち切りをどう思うか』と聞いた。その場にいて記者は誰も発言しなので、一問一答になり、今村大臣が、興奮し怒り出したのは驚いた。
 その後『まだ東北でよかった』発言があり、辞任に追い込まれた。発言が原発だけなら抑え込んでしまうが、東北全体にかかわるから、官邸は即反応をしたと思う。
 吉野新復興大臣も『帰って復興』路線であり、被ばくの問題には踏み込まない。避難者の現実をおもてに出し、『最後の一人まで支援する』という吉野大臣の発言を具体化させていくように粘り強く要求していくことだろう」
 改めて、記者クラブ制度、大手新聞社が仕切って大臣が言いたくないことを聞かない、突っ込んだ質問をさせない、政権のスポークスマンなっていること、記者クラブの記者たちは、西中さんのように避難者の苦しみに向き合い、政府の政策に批判意識を持っているのかなあと思いました。
 昼食後、各地の支援団の報告、井戸弁護士からの「本日の裁判の争点」の説明。
 福島地裁前での短い集会、会津からの報告に愕然とした。夏休みにウクライナから医師らを呼んで原発事故から31年目のチェリノブイリについて聞く会を計画して、福島市の県教組に行った。「事故後しばらくは、校庭の放射線測定などをして、プールや植物の栽培にも気を遣っていましたが、今は311以前と同じ、気にしていません。人が集まるかなあ」と講演会の後援を引き受けてくれなかった。教師たちは放射能安全神話を信じ込んでいるようだ――ショックだった。「逝いて還らぬ教え子よ、私の手は血まみれだ 君を縊ったその綱の端を私は持っていた」教師たちは放射能でも、国や県の先兵になり、子どもたちをどこに連れて行こうというのだろうか。
 傍聴人は59人、法廷は満席でした。福島在住の男性の意見陳述、子ども脱被ばく裁判代表の今野さんが代読しました。魂を振り絞るような憤怒、深い悲しみに心が締め付けられます。
 市民会館で記者会見、井戸弁護団長、各弁護士から今日の裁判の報告がありました。
 「低線量被ばくは健康に影響があるかないか、科学的にどちらが真実かの判断を裁判所に求めるのかと裁判長から聞かれた。何が真実か統一的見解はまだないのだから、そういうことを裁判所に求めていはいない。しかし、統一的見解がなくても、そういうことを前提として、行政は、子どもたちに何をなすべきかを判断してほしいと答えた。
 新しい視点として、原発被害者、放射能汚染被害者を原発という公害の被害者ととらえる。公害に対する闘いの中で『公害対策法』が作られ、現在は『環境基本法』に引き継がれた。。『環境基本法』には、国の環境保全責任、国の国民の健康と生活環境の保全責任、被害者救済責任、財政上の責任がきちんと明記されている。以前は、『環境基本法』に放射性物質の排除の条項があったが、福島原発事故後、この条項が削除され、放射能汚染は『環境基本法』の適用対象になった。原発被害者の救済の権利、国が被害者に何をしなくてはいけないかは、『環境基本法』にのっとればいい。北海道の山本行雄弁護士が始めた運動で、原発公害被害者という視点で、この裁判も組み立てたい。
国が主張する「放射線被ばくに閾値がないというならそれを証明せよ」に対し、疫学的調査から反論、スピーディを隠す意図、安全配慮義務に対する履行請求の根拠など次回までに用意する」

こども脱被ばく裁判は、核心に迫ってきたなという思いがしました。

(冨塚さん報告)
5月24日第10回子ども脱被ばく裁判口頭弁論を傍聴し、裁判前・裁判後集会に参加ました。
― 被告国の主張は、論理もない、倫理もない、あきれ果てたものです。

 子ども脱被ばく裁判は、「子ども人権裁判」と「親子裁判」の二つで構成されており、子ども人権裁判は、放射能汚染のない年間1mSv以下の環境で教育させよという福島県内市町村に対する要求、親子裁判は原発事故の際適切な回避策を取らずに無用の被爆をさせた国・県の責任を追及する裁判です。

この日原告側弁護団は被告の主張を完璧に批判しました。
 被告国・福島県の自治体は、2011年原発事故の直後4月福島県の学校再開に当たり、年間20ミリシーベルトという線量は子供の健康に問題ないとしました。この裁判でも被告は20ミリシーベルトは暫定的行政措置として2007年ICRPの緊急時被ばく状況・現存被ばく状況の目安に従っていると主張していますが、ICRPの勧告を正しくとらえていません。
 日本はICRPの1990年勧告を放射線防護の法体系に取り入れて、年間1ミリシーベルトを公衆被ばく限度としました。2007年勧告については、国はほとんど審議しておらず法体系にとりいれていません。国の主張は事実に基づかないものであるばかりでなく、現在起こっている健康被害(小児甲状腺がんの急増、大人の甲状腺がん、その他の健康被害に増加)を無視した、非倫理的主張です。
 国は相変わらず内部被ばくによる健康被害を無視していますが、福島県内ではいまなお放射線管理区域の基準を超える地域が広範に広がっており、土壌汚染レベルが高いと、土壌中の放射性微粒子が再浮揚し、呼吸によりこれを取り込んで内部被ばくの危険があります。
 原告側はこうした内部被ばくの証明をするために、今後専門家証人として、共著「放射線被曝の争点 – 福島原発事故の健康被害はないのか」の著者3人に証言してもらう予定です。
 (その一人は渡辺悦司さんで、6月3日スペースたんぽぽの学習会の講師です)
 また原告側弁護士は、国がSPEEDIのデータを公表しなかったこと、使わなかったことを
正当化するのは不当であると述べました。事故以前、SPEEDIは総務省の原子力防災行政の
中心に位置づけられており、原子力災害訓練にも活用されていました。「混乱を招く」などと事故後使わなかった理由を述べていますが、責任逃れの詭弁です。
 多くの福島県人を放射線管理区域(1平米あたり4万ベクレル以上の場所、飲食禁止、18歳未満立ち入り禁止等)に居住させている違法性について国は、放射線管理区域に関する法律は、放射線に関する労働に携わる人に関する法律で、一般公衆にかんする法律でないゆえ、違法でないと主張しています。詭弁としか言いようがありません。人間としての倫理に欠けています。一般人を対象とした法律がないならば、なぜ作ろうとしないか? 環境基本法には放射能汚染は含まれていないそうです。放射能汚染は最悪の公害ですから、放射能汚染防止法を制定しようという運動が一部自治体から始まっているそうです。弁護団はこうした運動との連携も視野に入れています。被告国・福島県の非論理的・非倫理的主張に対し、原告側弁護団は事実と論理を着実に積み重ね陳述していると感じました。
冨塚元夫



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