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2012年10月4日木曜日

10月1日裁判(審尋)期日の報告

 弁護団 井戸謙一

10月1日,仙台高裁で開かれた審尋期日につきましては,地元仙台はもとより、遠く東京,郡山,福島をはじめ,全国各地(大阪、伊豆、新潟など)から多数の方が支援のために集まって頂きました。事前の集会,デモ行進も,裁判中の交流会、事後の裁判報告会及び矢ヶ崎先生と松崎先生の講演会も,大勢の参加者の皆さんの熱い思いに満ちあふれ,弁護団としても大いに力づけられた1日でした。

審尋期日は午後2時半から約1時間,仙台高裁の審尋室で行われました。裁判所側は佐藤陽一裁判長を含め裁判官3名と書記官1名,抗告人側は,お母さん2名と弁護士4名,相手方(郡山市)側は弁護士2名が出席しました。矢ヶ﨑先生と松崎先生は,別室に待機してもらいました。

当日の期日で裁判長が抗告人側に求めたことは,子どもたち一人一人について,自主避難できない理由を個別に主張,立証することでした。

疎開裁判は通常の訴訟ではなく、仮処分という緊急の救済を求める裁判です。仮処分の申立てが認められるためには,①被保全権利(子供たちが郡山市に対し,疎開させることを求める権利があること)と②保全の必要性(緊急に疎開を実現する必要性があること)の2つが必要です。1審の福島地裁郡山支部は,主に、現在の線量下では,①の被保全権利が認められないことを理由にして,私たちの申立てを却下しました。これに対し,仙台高裁は,②の保全の必要性に関心があるように見受けられました。

今回、抗告人側は,準備書面(2)(その内容は,前回の相手方(郡山市)の主張に対する反論と,最近明らかになった事実に基づく主張の追加)と新たな証拠(甲147~164号証)を提出した上で,最近明らかになった衝撃的な事実,すなわち,福島県で甲状腺ガンの子ども1名が発見されたこと,福島市の子ども4万2000人の調査によって,そのうち43%に甲状腺に結節又は嚢胞があることが発見されたことをどうみるかについて,矢ケ先生と松崎先生に専門家の立場から意見を述べさせてほしいと裁判所に申し出ましたが,裁判所は,これを受け入れませんでした。
また,先日裁判所に提出した「審理手続に対する申入」書で申入れた通り、公開の法廷で、両先生のほか,今年2月、抗告人らが通う小学校で線量を測定され、その結果を意見書として作成し、提出した山内知也先生と、3.11以来、相手方(郡山市)側の主張を最も明快に裏付ける見解を表明してきました山下俊一県立医大副学長の意見を聴く手続き(証人尋問)を申請しましたが,裁判所は,この裁判は仮処分の抗告審であり、証人調べはしないのが原則という考え方を示して、現段階ではという留保付きながら,証人調べをすることは考えていないと言いました。

そのあと,お母さん二人が,何故この裁判の申立人になろうと思ったのか,自主避難することがいかに多大の犠牲を伴うものであるか,自主避難ではなく,行政の責任で疎開させてほしいと思うのはどうしてか,等について,裁判官に切々と訴えました。裁判官は,口をはさむこともなく,聞いていました。

そして,裁判長は,次回期日を11月26日午後2時30分と決めました。それまでに,抗告人側が裁判長の上記求めに応じた主張・立証をするほか,子どもたちに予想される健康被害の深刻さや避難の緊急性について主張,立証を追加することになります。
審尋が行われた約1時間の間,仙台に集まった沢山の支援者の方が裁判所の廊下と交流会会場で待機し,裁判所に熱い視線を注いでいただきました。

審尋期日が終了した後は,報告集会と矢ケ先生及び松崎先生の講演会が行われました。両先生の講演内容は,最新の知見に裏付けられた大変貴重なものでした。 

以下は,私個人の感想です。
裁判官は,普通はポーカーフェイスを旨としていますから,なかなか内心を読み取らせません。ただ,今回の審尋期日で特徴的だったのは,裁判長が,子どもたちが自主避難できない理由に関心を示し話題にしましたが,放射能による健康被害の実相についてはとくべつ話題にしなかったことです。これが何を意味するか。可能性としては,2つ考えらえます。1つは,保全の必要性がないという理由で申立てを却下しようと考えているというもの,もう1つは,抗告人側から保全の必要性があると認定できるだけの証拠を出させた上で,申立てを認容しようと考えているというもの,です。
いずれかは判らないし,それを詮索してみてもあまり意味がありません。大切なことは,裁判官が後者の考えでいるのなら,その決意をより強めさせるよう,前者の考えでいるのなら,それを考え直させるよう,もっともっと市民の声を大きくしていくことだと思います。
以 上

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