脱被ばく実現ネット(旧ふくしま集団疎開裁判の会)の基本情報

2016年8月13日土曜日

子ども脱被ばく裁判を傍聴して(3) 及び 弁護団報告

第6回の子ども脱被ばく裁判参加の冨塚元夫さんからの報告です。



88日(月)子ども脱被ばく裁判第6回口頭弁論を傍聴し前後の集会に参加しました。

1)次回第7回口頭弁論から被告国・福島県等を本格的に追及できることになりました。

前回第5回口頭弁論で弁護団は「子ども人権裁判」が門前払いされる危険性がなくなったという判断をされましたが、今回それが確認されました。
子ども人権裁判は「追加放射線量年間1mSv以上の市町村で教育をうけている子供を1mSv以下の場所で教育させよ」という要求です。それを門前払いせよという福島県の市町村の主張は「1mSv以上でも問題ない」という法律違反です。下々に対しては法律違反を厳しく取り締まる一方、自分たちの都合が悪い場合に法律を無視するというこの国、地方の官僚の常套手段を阻止する戦いが前進しました。弁護団の努力と知恵に感謝します。

2013424日ふくしま集団疎開裁判控訴審で仙台高裁第2民事部は、決定の「理由」で次のように書いています。「積算の年間の空間線量が1ミリシーベルトを超えた地域及びこれを超えることが確実に予測できる地域において教育活動を行った場合、抗告人らが放射線障害によるがん・白血病の発症で生命・身体・健康を損なわれる具体的な危険性があり、この点は同種の原発事故であるチェルノブイリにおける原発事故の被害状況と対比してみれば明らかというべきである」しかし判決文はその後、被告郡山市には子供を他の場所で教育する義務はなく、原告が自分で避難すればよいという決定になりました。
国・福島県はいま年間20mSvを下回ったので帰還せよという政策を強引に進めています。
それに対決する裁判は、この裁判と南相場20mSv特定避難勧奨地点指定解除取消訴訟だけと言われています。この裁判の意義をもっと広げていかなければなりません。

100mSvの累積被ばくでは癌は出ない」という天動説のように古い説が誤りであることは、この間多くの人々が証明してきました。医療や原発作業者のデータでは10mSv20mSvの被ばくによる健康被害の疫学報告がたくさんあります。イギリス・オックスフォードのアリス・メアリー・スチュワート医師の妊婦への放射線検査と小児癌のリスクの報告、CTスキャンと小児白血病・小児脳腫瘍の関係の研究、自然放射能の影響に関するスイス国家コホート調査など多数あります。これらの研究データも裁判所に提出されると思います。

2)公判前集会で、おしどりマコ・ケンさんの講演がありました。

重要な情報が発信されました: 福島県民健康調査の欺瞞を暴くものです。
福島県は平成25年以降に生まれた子供の甲状腺検査は行わない方針というのです。
全く許せないやり方です。チェルノブイリ原発事故で、かろうじて、子どもの甲状腺がんのみが原発由来と認められたのは、ヨウ素が消えてしまってから生まれた子どもはそれ以前に生まれた子供と比べて大幅に甲状腺がんが少ない、という事実があるからです。小児白血病もその他の癌・健康被害も原発事故による被曝によって有意に増加したことは、さまざまの研究で明らかにされていますが、国際原子力マフィアは小児甲状腺がんのみ認めたのでした。ところが、IAEA(国際原子力機関)はこれを失敗と総括して、福島原発事故では認めない方針で日本に来たようです。20121215-17日郡山市で開かれた日本政府とIAEA共催の「福島閣僚会議」に基づいて、IAEAの了承なしに日本政府は何も発表できないようになりました。とんでもないことです。平成23年生まれの子どもに甲状腺がんが多発するのはこれからです。24年生まれは減少すると予想されます。25年生まれ、26年生まれと連続して検査することで真実がはっきり見えてくるはずです。

おしどりさんがこの頃、福島県の農家の人と話をすると「数十年農業やっているが、原発事故の後、何かおかしい」というそうです。まっすぐ伸びない松(先端が伸びない主幹欠損)や根が4か所からでてくる玉ねぎなど。医者も「数十年医者をやっているが、原発事故の後、何かおかしい」というそうです。

今年、おしどりさんがドイツに行ったとき「年間20mSv以下は安全といういう日本政府の見解を日本国民は受け入れたのか」と質問されたそうです。このような理屈が通用するのは日本だけです。2011年文科省は「3.8マイクロシーベルト/時以下では差支えない」というグランド使用基準を通達しました(年間20mSvに当たる)。最近福島県では運動クラブ系の子どもに、文科系クラブの子どもよりも多く病気が出ていると聞いているそうです。この通達にすでに表れているように、この国は事故後すぐに国民の健康を犠牲にして、国際原子力産業を守る決定をしたわけです。これを認めたならば、日本は世界の人々に顔向けができないと思います。

2016812日 冨塚元夫

なお、欺瞞に満ちた文科省の2011年通達に関するQ&Aはこちら↓
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1307458.htm

現在も福島県の多くの学校で放射線管理区域以上の数値が出ていると報じた
女性自身の記事についてはこちら↓
http://fukusima-sokai2.blogspot.jp/2016/03/18.html

次回期日は10月12日、午後2時半からです。


以下は8月8日の井戸弁護団長による期日報告です。

準備書面など弁護団ブログはこちら→http://fukusima-sokaisaiban.blogspot.jp

2016.8.8第6回口頭弁論期日報告

 子ども脱被ばく裁判 弁護団長 井 戸 謙 一


第1 第三次提訴について
1 2016年5月10日、第三次提訴を行いました。子ども人権裁判原告が3名、親子裁判原告が30名(子ども人権裁判の原告3名を含む)です。
2 本日、第三次提訴分についての第1回口頭弁論が開かれ、第一次提訴分・第二次提訴分の事件と併合されました。(今後は、3つの事件が一体として審理されることになります。)

第2 今回の期日について
1 原告側が準備した準備書面
(1) 原告側は、準備書面(14)(15)(16)を提出しました。
(2) 準備書面(14)は、被告国が前回提出した準備書面(2)の一部に対する反論で、国が依拠する低線量被曝に関するワーキンググループ報告書(WG報告書)及びICRP2007年勧告の内容を批判するものです。
準備書面(15)も、被告国準備書面(2)の一部に対する反論で、国には市民に対してスピーディやモニタリングデータの情報を提供する義務がないとの国の主張を批判し、このような市民の生命、健康にかかわる情報を提供するのは法律上の義務であることを主張するものです。
(3) 準備書面(16)は、被告国からなされた質問に対する回答です。被告国は、親子裁判の原告の中に、他の訴訟(生業訴訟、いわき市民訴訟等)でも原告になり、国に対して損害賠償を求めている人がいることから、重複訴訟ではないかと問い質してきました。これに対しては、他の訴訟で求めているのは、国が東京電力に対して規制権限を適正に行使せず、福島原発事故を招いたことに対する損害賠償であり、本件で求めているのは、福島原発事故発生後、国が被ばくから市民を防護する義務を果たさなかったことに対する損害賠償であるから、対象が異なり、重複訴訟には当たらないと主張しました。また、国は、被ばくの不安についての精神的苦痛は、東京電力から受け取った賠償金によって満足していると考えられるから、原告ごとに東電から受け取った賠償金の金額を明らかにするよう求めました。これに対しては、東京電力から受け取ったのは、東京電力が原発事故を起こしたことによる損害の賠償であり、本件で請求しているのは、事故後になされるべき防護対策がなされたなったことによる損害の賠償であって、対象が異なるから、東電から受け取った賠償金の金額を明らかにする必要はない、として、国の求めを拒否しています。

2 本日の裁判所
裁判所は、子ども裁判の進行について被告自治体らの意見を求めました。被告自治体らは、裁判所の判断に従うとの意見だったので、裁判所は、子ども裁判について分離判決をしないことを明言し、子ども裁判の被告自治体らに対し、原告らの主張の中身について(今の環境が子どもにとって健康上のリスクがあるか否かについて)反論をするように求めました。これによって、子ども裁判が門前払い却下されるおそれがなくなりました。

第3 今後の展開
1 子ども裁判の被告である自治体らから、実質的な反論が出てきます。ようやく、現在の福島の被ばく環境と健康上のリスクについて、本格的な議論が始まります。
また、親子裁判では、今後、原告側で、原告の陳述書に基づいて、国や福島県の違法行為によって各原告がどのような損害を被ったか(どのように無用な被ばくをさせてしまったか)について主張をしていくことになります。
2 県民健康調査を縮小する方向が打ち出されています。被ばくを軽視し、その被害を隠す企てが急速に進行している中で、この裁判の持つ意味は大きいと思われます。
子ども裁判について門前払い却下するという裁判所の方針を変えさせることができたのは、全国の方々から多数の署名をお寄せいただいたことの成果だと考えます。これからも、ご支援をよろしくお願いいたします。
以上 


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