脱被ばく実現ネット(旧ふくしま集団疎開裁判の会)の基本情報

2016年12月16日金曜日

20161212 子ども脱被ばく裁判 命がけでわが子を守る、同時に被ばくに曝されている福島の子どもたちを守りたいと原告訴え

12月12日(月)第8回子ども脱被ばく裁判口頭弁論が行われました。
脱被ばく実現ネットからボランティアは福島駅頭でのチラシ配布後、
裁判前集会、裁判傍聴、記者会見等に参加しました。




裁判後の報告会
https://www.facebook.com/hideko.wada/videos/10211172862614897/

第8回子ども脱被ばく裁判に参加して
                     松岡加代子

12月12日福島地裁で、第8回子ども脱被ばく裁判が開かれました。裁判に先だって、弁護士さんから「裁判の今後」について、報告がありました。

 子ども人権裁判で原告の子どもたちが実行を求める「安全な環境で教育を受ける権利」に対し、自治体はそんなものはない、そもそも根拠が不明確と主張する。
 弁護団は、憲法、教育基本法、学校保健安全法、その中の学校環境基準、安全配慮義務――そこには子どもの健康を守るため細かな規則が定められている。確かに今迄の法律、告示には放射能については言及されていない。放射線汚染地の学校・授業・学習なんて想定していなかったのだから。法律に触れられてないからと知らん振りをしていいのだろうか。安全な環境で子どもに学習させることは、学校設置主体・自治体の義務であり、子どもからすれば、当然要求できる権利。
 
 次に、安全基準の問題。低線量被ばくの問題。『女性自身』で取り上げられた福島の小中学校の土壌汚染問題。60校の校庭の土壌は、8割が「放射線管理区域」以上に汚染されていた。空間線量にカウントされないα線、β線を放出するプルトニウム、ストロンチウム。土壌汚染から内部被ばくの問題を明らかにしていく。
 
 国は、以前から何度も、原告一人一人の被ばく量を提出するように求めてきている。
福島県民健康調査は、県民に3・11当時の行動を記入させ、おおよその被ばく量を算出している。この被ばく量判定調査に対し、県民の27%程しか応じていないが、判定した人の99.8%の外部被ばくの数値は5ミリSV程度に収まっている。だから、原告の被ばく量から健康には影響ないと結論づけたいのだろうが、そもそもヨウ素131がどれだけ空気中に放出されたか分かってない、被ばく量算出の公式がどこまで信憑性があるのか。なにより内部被ばく量は、カウントされていない。

 3・11直後、放射能ブルームの中、子どもを連れて半日給水車に並んだ、無用な被ばくをさせてしまった、何故外に出るなと知らせてくれなかった・・・と悔やんでも悔やみきれない原告の無念。県は「いや、情報を提供した。山下俊一教授の講演会を県内で何度も開き、放射能の危険について正確な情報を流した」と回答したそうだ。・・・絶句。

 私たちは今の医療の大勢である予防原則を主張、被害がでてからでは遅い。しかし、被告は、因果関係が立証されなければ認めようとしない――チェリノブイリ法を制定したウクライナ政府の高官が「国民の不安に応えたかった、1ミリSVを基準にした」と語るのを以前テレビで見た。国民を守ろうという姿勢と日本政府の国民を切る捨てる姿勢。

 二人の原告陳述。一人は家族4人で自主避難して、国や東電からの賠償もなく自力で生活再建する5年間の苦闘を語り、もう一人は、福島にとどまり歯をくいしばって耐え暮らす困難を語った・・聞いていて胸が詰まる思い。そして、勿論命がけでわが子を守る、同時に被ばくに曝されている福島の子どもたちを守りたいとはっきり断言するお二人に、喝を入れられた気分で決意を新たにした。

 会場から、福島医大で甲状腺がんを手術した男性の発言、「リンパに転移があった。手術で切り取った甲状腺を返却してもらい放射線の影響かどうか、研究所に送って調べてもらおうと思っている。自分が甲状腺がん患者だと公表したら、結構いろんなところから実は自分も甲状線がん患者だと名乗りを上げる人が現れてきている。多くの人は、国や県、東電とケンカして、勝てるはずがない、反論する自信がない、力がないと怖気ついて、黙ってしまう、諦めてしまう、怒りや抵抗する力を削がれてしまっているのだと思う。しかし、辛いことだけれど、福島の地で健康被害は今後増加していく、患者が一人で耐えたり、家族で孤立するのではなく、みんなで情報を公表し、共有し、論議し、腰を据えて闘いを作り上げていきたい」

「直ちに健康に影響はありません」3・11直後、枝野官房長官は繰り返した。お伽噺の魔女のような禍々しい予言は、5年半が経過する中で、正体を現わし始めた。国や県、地方自治体が、福島復興の掛け声をあげ、復興イベントを盛り上げようとしても、さまざまな姑息な策を講じようとも、事実は隠しきれるものではないのだと思う。







     第8回子ども脱被ばく裁判を傍聴して
                        宮口高枝

第8回子ども脱被ばく裁判口頭弁論が12月12日、福島地裁で開催された。今回の裁判前アクションは弁護団報告会「裁判のこれからについて」今後の裁判展開について詳細の説明があった。
今回から、実質的な議論に入る。

原告の主張。
1「因果関係論」(陳述書9通提出)
2「子ども脱被ばく裁判 被告自治体の主張に対する反論
 (1)「安全な環境で教育を受ける権利の根拠が不明確」という被告の主張に、憲法、教育基本法、学校保健安全法「学校保健安全法4条、学校環境基準、文科省告示60号、安全配慮義務がある。
(2)「既に1mSvを切っている」という主張(いわき市、伊達市)。
(3)「クリアランスレベルは廃棄物を安全に再利用できる基準であり、人の健康影響とは関係ない」という主張には、子どもはあらゆるものから被ばくする。土壌からの被ばくに常時晒されているので、予防原則の立場から反論。
(4)「不作為請求の根拠が不明確」との被告の主張に対しては子どもの人格権である。
・親子裁判については、行政も国も、原発爆発事故時の情報隠蔽、ヨウ素剤配布義務はないと主張、それに反対弁論の準備をしてきた。
・防災計画を県など各行政は立てているが、義務ではないとしている。何の為に出しているのか対立。
学校開始を年間20mSvで決めたのは、それぞれの自治体で県には責任はないとしているが、子どもの年20mSvまでの被ばくを許容するとの評価を問い反論。今後、低線量被ばくの問題を証明する専門家の意見書を提出する方向。
事故時学校再開は、1時間4.20μシーベルトの基準でやった。しかし、文科省の基準は1時間3.8μシーベルト。この数値も超え、放射線量の高かった山木谷地区は1時間6.6μシーベルト。渡り地区では1時間5.8μシーベルトと高かった、それでも学校再開をしていた。
損害賠償請求に関しては、原告の個別の状況を提出中。

3「内部被ばくについて」→土壌汚染の危険を問う。
・原告は空間線量よりも土壌汚染をより重視している。それは内部被ばくに結びつくからである。
5年が経過してもセシュウム137の90%は残存している。
空間線量ではβ線は計測できない。β線は、内部被ばくでは、γ線と同等に扱われており、過小評価である。
内部被ばくの危険は1mSv規制では安心できない。


★被告側
被告国の主張→ 損害論に立ち始めている。国の責任原因議論から始める。
原告番号13の訴えを棄却せよ。→いわき市民訴訟との2重訴訟
・いわき市民訴訟は、福島第一原発の安全についての規制制限不行使だけを理由にしているのではなく情報提供違反も主張している。
・原告が東電から受取った賠償金の問題と情報隠蔽により学校再開で無用な被ばくをした問題とは違う。

 被告県の主張 →対立
・情報を提供すべき法的義務はない。
・SPEEDIの計算データーを情報提供すべき義務はない。
安定ヨウ素剤の服用基準について小児甲状線等価線量100mSvよりも厳しくする必要は無かった。
安定ヨウ素剤の服用指示について、国の服用指示に備えていた事は何ら裁量の逸脱はない。

 被告いわき市の主張 
原告らが主張する権利について法的根拠が不明確
原告らが主張する「安全な地域」と主張している根拠が不明確
いわき市は分校を作ってまで教育を提供する義務を負担しない。
いわき市では、空間線量は既に年1mSvを下回っている。


★原告側
今後、学術的検査、証拠調べ、証人を立てる方向で検討。

今回の裁判では実質的議論に入り、弁護士も原告も迫力ある弁論を展開した。
今回は、被告から出てきた20ミリシーベルトに関する反論と、低線量被ばく、内部被ばくについて、詳細に亘って反論の弁論を展開した。
今回も2人の原告が口頭弁論に立った。1人は長野に避難した2人の子どもの父親。東電からの賠償はない中、原発難民となって避難した場所で長男の「この花さわっていいの?」との問に我慢を強いてきた。その子不登校になり、経済的な蓄えが無くなり、心身ともに追い詰められた思いだと、原発事故が起こった後の行政や国の対応に2000字では語り切れない苦しい状況と思いを訴えた。
もう一人の女性原告は体調不良にて裁判に来る事ができず、別の原告がこれを代読した。事故時、情報不足の中、塾に通わせて無用な被ばくをさせた。後で、空間線量は1から20μシーベルト/hも有ったと知り、子どもに申し訳ない思いでいっぱいだ。町内の除染されたものは公園に埋められた。保養に出したらいじめられた。子どもに「ママが放射能のことをやっているのはマイナスだったんだよ!」といわれた事は辛かった。代読した佐藤さんは自分の思いも込めて代読しますと、被告側に向き直って力のこもった声で訴えていた。この原告の訴えを、被告席の1人の男性が下を向いて、涙を拭きながら聞いていたのは印象的だった。


裁判後の記者会見、意見交換では、18歳未満の甲状腺被害で100名ほどの手術をした人が放射能被ばく数値を公表されない。切り取られた甲状腺にはヨウ素131、セシュウムが甲状腺に集積しているが本人にもなかなか教えてくれない。裁判に繁栄できるのではないか? 自分は甲状腺癌で10mmの腫瘍を手術し、転移もあった。そのとき切り取ったものを借りて自分で検査に出している。その経験を皆の前で話してきたが、不安に思っている人々からの反応が大きく、話してよかったと貴重な声が語られた。
又、行政の不作為に反論するのは子どもの権利しかないのだろうか。学校教育は安全の配慮義務が基本だとの意見もあった。
内部被ばくはシーベルトで計測できない。ベクレルで考える必要があるだろう。
1人1人の被ばく証明は大事だが、健康県民調査では推定被ばく線量は本人に回答しているが、弁護団としてはそれを出させる方が良いのか検討する。
20ミリシーベルト基準の反論は今後も準備していく。
内部被ばく、低線量ひばくについて、他の訴訟の資料も参考に、国の反論も予想して準備していくが、被告に反論させたい。この裁判はゼロから作っていく裁判になる。
主張の基本は予防原則に立つことだ。 など活発な交流が行なわれた。
これまで毎回裁判を傍聴してきて感じる事は、原告が心身ともに強く前を向き始めたと実感している。親が強くならないと子どもを守れないと語る原告の言葉に不退転の意志を感じた。裁判はこれからだ。





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