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2016年12月19日月曜日

第8回子ども脱被ばく裁判弁護団報告「この裁判は、長期低線量被曝の健康に対する危険性の有無、程度が第一のテーマ」

12月12日に行われた子ども脱被ばく裁判の第8回口頭弁論の報告が井戸弁護団長よりありました。
この裁判は原発事故関連の裁判の中でも「被ばく」を問題とした裁判です。
現在のところ、被告の国や県は被ばくについて形式的な反論のみとのことです。
山下氏などを法廷に引き出して「被ばく」について、重要な討議をして広く広報する必要があります。
次回の第9回口頭弁論は2月15日です。
ご参加、ご注目をよろしくお願いします。


井戸弁護団長

以下の文章は、弁護団ブログより転記



2016年12月12日第8回口頭弁論期日の報告

弁護団長  井 戸 謙 一

1 原告側は、準備書面(20)(22)を提出しました。その内容は、次のとおりです。
(1) 準備書面(20)【親子裁判関係】
9人の原告の陳述書の内容を踏まえ、国や福島県の不作為と子どもたちが無用な被ばくをしたことの因果関係を主張するもの
(2) 準備書面(21)【子ども人権裁判関係】
ア 被告自治体の主張に対する原告の次のような反論を記載したもの
() 「安全な環境で教育を受ける権利」の発生根拠は、被告自治体の子どもたちに対する安全配慮義務である。そして、子どもたちの安全配慮を求める権利は、憲法26条、教育基本法、学校教育法、学校保健安全法に由来する。
() 「現在の学校施設での教育を差し止める権利」の根拠は、子どもの健康を中核とする人格権である。
  イ 被告自治体らの主張は、原告が低線量被曝の危険性の根拠とする次のような事実(日本の法律が、一般公衆の被ばく限度を年1ミリシーベルトと定めていること、日本の法律が放射性セシウムによる表面濃度4万ベクレル/㎡を超える環境を放射線管理区域として厳しい規制をかけていること、累積5ミリシーベルトの被ばくで白血病の労災認定がなされた事例があること、原爆症の認定基準では、1ミリシーベルト以上の被ばくをしたと考えられる人で、一定の類型の疾病に罹患した人は、原爆症と認定されること等)に対して、これらの事実は、低線量被曝による健康被害とは関係がないと主張するのみで、それ以上の具体的な主張をしていないので、これに対する具体的な理由を述べるように求めました。その他、多くの求釈明(相手方に説明を求めること)をしました。
(3) 準備書面(22)【子ども人権裁判、親子裁判とも】
内部被ばくの危険性について述べ、それゆえに、被ばくによる危険性は、空間線量によって判断するのではなく、土壌汚染濃度をより重視するべきことを述べたもの

2 被告の主張
 (1) 被告国
ア 第4準備書面【親子裁判】
いわき市民訴訟の原告ともなっている原告について、二重起訴にあたる(同じ請求を複数の裁判でしている)として、却下を求めるもの
イ 調査嘱託の申立て
東京電力ホールディングス株式会社に対し、各原告に支払った損害賠償額について回答を求めるもの
 (2) 被告福島県の準備書面(9)【親子裁判】
   被告福島県については、スピーディ情報や線量情報を県民に提供するべき法的義務はない、安定ヨウ素剤の服用指示について、国の見解に従ったことにし違法はないとするもの
(3) 被告いわき市の準備書面(8)
いわき市は、線量が下がり、既に1ミリシーベルト/年を下回っているとすること等を主張するもの

3 原告の意見陳述
  今回も2名の原告が意見陳述をしました。
家族で長野県に避難しているお父さんは、経済的にも肉体的にもぎりぎりの生活だが、子どもを守るためにこの道を選んだことを述べ、言いたいことの10%も話せていないけれど、裁判官や被告側の代理人に対し、人の子の親として考えてほしいと訴えました。初めて信州の公園で遊ばせようとした子どもたちが、「お花触っていいの?」「マスク外していいの?」と聞いてくるのを見て、子どもたちに大変な我慢をさせてきたことに気づき、夫婦で涙を流したという話に胸が詰まりました。
県内に住んでいるお母さんは、体調不良で裁判所に出頭できず、他のお母さんが代読しました。情報が知らされなかったために子どもたちを被ばくさせてしまった無念、根拠のない安全宣伝のために、人と人が分断され、親子の間ですら溝ができてしまうことのつらさを訴えられ、しかし、子どもの健康を守るために親として闘うのだという凛とした決意がみなぎる陳述でした。

4 この裁判は、長期低線量被曝の健康に対する危険性の有無、程度が第一のテーマです。この点について、被告の国、福島県らは形式的な反論しかしてきていません。早期に実質的な反論をさせて、議論を深めていくことが今後の主たる課題になると思われます。
引き続き、ご支援をお願いいたします。

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