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福島県民健康管理調査における血液検査のやり方と結果について、私たちは、ふくしまの子どもたちの被ばくによる健康被害の最も重要な問題として、従来からずっと指摘してきました。
この問題を首尾一貫して取り上げてきたのが、おしどりマコさんです。彼女のサイトでもずっと取り上げられてきましたが(福島:検討委員会「血液検査の現状報告」)、このたび、2月13日の検討委員会の会見で、福島県は初めて血液検査の結果を公表しました。この重要な公表結果について、おしどりマコさんから問題点を分析・指摘してもらう以下の報告書を作成してもらい、 仙台高裁に、重要書面として提出しました。
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報告書
福島第一原発事故後の健康調査を取材から
血液検査に関する問題点について。
おしどりマコ
2013年2月19日
福島第一原発事故後の健康調査を取材から
血液検査に関する問題点について。
おしどりマコ
2013年2月19日
目 次
第一、略歴
第二、福島県民健康管理調査における基本調査と詳細調査について。
第三、白血球の分画を上乗せして血液検査の目的について。
第四、第10回福島県民健康管理調査検討委員会における、血液検査の結果について。
第五、被ばくと血液検査について。
第六、電離放射線障害防止規則における電離健康診断の血液検査について。
第七、原発事故後の健康調査への疑問点
第一、略歴
第二、福島県民健康管理調査における基本調査と詳細調査について。
第三、白血球の分画を上乗せして血液検査の目的について。
第四、第10回福島県民健康管理調査検討委員会における、血液検査の結果について。
第五、被ばくと血液検査について。
第六、電離放射線障害防止規則における電離健康診断の血液検査について。
第七、原発事故後の健康調査への疑問点
第一、略歴
平成6年4月、国立鳥取大学医学部生命科学科入学
平成9年3月、同上、中退
自由報道協会理事
吉本クリエイティブ・エージェンシー所属
吉本クリエイティブ・エージェンシー所属
第二、福島県民健康管理調査における基本調査と詳細調査について。
福島第一原発事故後の住民の健康管理として、福島県は福島県立医科大を主体にした健康管理調査を行っています。その目的は、「東日本大震災やその後の東京電力福島第一原子力発電所事故により、多くの県民が健康に不安を抱えている状況を踏まえ、長期にわたり県民のみなさまの健康を見守り、将来にわたる健康増進につなぐこと」とうたっています(福島県のホームページ)。
この目的を達成するために、2つの調査、基本調査と詳細調査を行うとしています。
基本調査とは、住民が3月11日からの行動記録をつけ、そこから4ヶ月間の被ばく線量を推定評価するものです。
詳細調査とは、①.18歳以下の県民への甲状腺エコー検査、②.血液検査を含んだ健康診査、③.こころのケア調査、④.妊婦へのこころのケア調査の4つの調査からなっています。
詳細調査とは、①.18歳以下の県民への甲状腺エコー検査、②.血液検査を含んだ健康診査、③.こころのケア調査、④.妊婦へのこころのケア調査の4つの調査からなっています。
第三、白血球の分画を上乗せして血液検査の目的について
詳細調査のうち、健康診査について着目します。
健康診査の対象者と内容は、検討委員会の発表[1]によれば、下記のとおりです。
健康診査の対象者と内容は、検討委員会の発表[1]によれば、下記のとおりです。
「対象者:避難区域等の住民 および 基本調査(※)の結果必要と認められた方
内容:一般検診項目+白血球分画[2]等」
内容:一般検診項目+白血球分画[2]等」
基本調査とは、行動記録をつけたものを評価し、外部被ばく線量の推計値を出す調査です。従って、「基本調査の結果必要と認められた方」とは外部被ばく線量の推計値を出した結果、必要と認められた方という意味です。
この健康診査の内容は特定健診(生活習慣病をチェックする健診)に血液検査の項目として、白血球の分画を上乗せする、という発表でした。
「白血病分画等の項目を上乗せした健康調査の対象
・原発事故による放射線により、白血病発症リスク増大が考えられるもの
(今回の事故による被ばく線量について情報が乏しい段階での検討)」
・原発事故による放射線により、白血病発症リスク増大が考えられるもの
(今回の事故による被ばく線量について情報が乏しい段階での検討)」
すなわち、原発事故による放射線の被ばくにより、白血病を発症する可能性が増大するので、それを判断するために白血球分画の検査をするのです。ちょうど、原発事故による放射線の被ばくにより、甲状腺がんを発症する可能性が増大するので、甲状腺検査を実施するのと同様です。
第四、第10回福島県民健康管理調査検討委員会における、血液検査の結果について。
この健康診査は、平成24年1月から実施されました。
ところが、小児甲状腺エコー検査のほうは平成24年1月から随時、検査の結果が公表されたのに、白血球分画の検査の結果はなかなか発表されませんでした。私は検討委員会に結果を公表するように何度も要求しましたが、それでも発表されませんでした。平成24年7月には情報開示請求も行いましたが、「該当する資料が無い」として、不開示でした。
平成25年2月の第10回検討委員会にて、平成23年度分の健康診査の結果がようやく発表されました(資料3-3 平成23年度 県民健康管理調査「健康診査」結果報告書(素案)[4])。
15歳以下が17、951人(対象者27、690人の64.8%)
16歳以上は56、607人(対象者182、499人の31.0%)、
重複して受診した者が15歳以下で17人、16歳以上で208人いたため、
実質の総受信者数は74、333人(対象者210、189人の35.4%)でした。
白血球の分画などのヒストグラム(度数分布図)が発表されましたが、別紙②の白血球、別紙③の好中球、別紙④のリンパ球のヒストグラムにおいて、小児科学の世界標準とされるネルソン小児科学の基準値に基づくと、ほぼ30%の子どもたちが基準値以下だと読み取れます[5]。
福島県の発表によると、考察の中で「白血球数減少、好中球減少、リンパ球数減少の割合に、年齢区分や性による大きな偏りがなかった」というものだけでした(資料3-3の35頁「まとめ」)。
私が「年齢区分や性による区分ではなく、被ばく線量による区分や地域においても偏りが無かったかどうか、基本調査(行動記録による被ばく線量推定調査)との考察をなぜ発表しないのか」と質問すると、「結果を発表するかどうか専門委員会で検討する」という回答でした。
私が「年齢区分や性による区分ではなく、被ばく線量による区分や地域においても偏りが無かったかどうか、基本調査(行動記録による被ばく線量推定調査)との考察をなぜ発表しないのか」と質問すると、「結果を発表するかどうか専門委員会で検討する」という回答でした。
第五、被ばくと血液検査について
なぜ、私が「被ばく線量による区分や地域との関係で、リンパ球などの減少の隔たりがなかったどうか」にこだわるかと言いますと、それは、通常、人体の中で最も放射線感受性が高いのがリンパ球とされているからです、つまりリンパ球の数が減少するという反応を表すからです(以下の文献を参照)。そもそも福島県もそのことは最初から分かっていて、白血球分画の検査を実施する理由は、原発事故による放射線の被ばくにより、白血病を発症する可能性が増大するからだと述べています(別紙①)。そうであれば、被ばく線量と検査結果との関係を検討している筈です。その検討結果を公表しないのはおかしいと思います。
「リンパ球は、哺乳類細胞の中で最も放射線感受性の高い細胞の1つだと考えられている。」
「リンパ球数は被ばく後早期に減少するため、初期の線量評価には有効である」
(放射線基礎医学 第11版 菅原努、丹羽太貫)
「血液中の血球の変化は、低い線量の放射線にも敏感に反応する。前駆症状があらわれない被ばくでも、リンパ球は有意に減少する。」
(放射線生物学 改訂2版 日本放射線技術学会監修 江原洋介 木村博)
「被ばくによって白血球が減少するが白血球の種類によって変化の時間的経過が異なる。リンパ球は放射線感受性が最も高く、早く減少するが回復も早い。好中球の減少は、リンパ球より遅れてあらわれ、回復もリンパ球より遅い。」
(「個人被ばく線量測定と健康診断」2002年8月放射線技師会サマーセミナー発表 藤田保健衛生大学衛生学部 診療放射線技術学科 鈴木昇一)
(「個人被ばく線量測定と健康診断」2002年8月放射線技師会サマーセミナー発表 藤田保健衛生大学衛生学部 診療放射線技術学科 鈴木昇一)
第六、電離放射線障害防止規則における電離健康診断の血液検査について。
電離放射線障害防止規則は2001年3月27日に一部が改正されました(平成13年厚生労働省令第42号)が、この改正に関する厚生労働省労働基準局長の通知[6](平成13年3月30日)によれば、
電離放射線障害防止規則は2001年3月27日に一部が改正されました(平成13年厚生労働省令第42号)が、この改正に関する厚生労働省労働基準局長の通知[6](平成13年3月30日)によれば、
「今回の改正は、放射線審議会の「ICRP1990年勧告(Pub.60)の国内制度等への取入れについて(意見具申)」及びその他の国際基準の取入れに対応するためのものである。」
であり、改正の要点の9番目に、
「9 放射線業務従事者の健康診断の検査項目の追加及びその省略方法等について改正したこと。(電離則第56条関係)」
となっています。つまり、2001年4月1日から、放射線作業従事者に対する定期的な健康診断の血液検査の中に「異型リンパ球[7]」の項目が追加されました(別紙⑤の1と別紙⑤の2。様式第一号)。これはICRP(国際放射線防護委員会)の1990年勧告の下記の部分を取り入れたものです。
「職業的基本サービス」
第二は、線量限度をかなり超過して被曝した人、潜在的に危険な状態に巻き込まれたかもしれない人の場合は、例外的な状況でのみ臨床検査や治療を必要とするだろうが、事故の潜在的な大きさによっては、必要なら、医師は短期間の予告で、例えば、リンパ球の染色体異常の検査のような適切な検査と治療の準備ができるようにすべきである。(261)
第二は、線量限度をかなり超過して被曝した人、潜在的に危険な状態に巻き込まれたかもしれない人の場合は、例外的な状況でのみ臨床検査や治療を必要とするだろうが、事故の潜在的な大きさによっては、必要なら、医師は短期間の予告で、例えば、リンパ球の染色体異常の検査のような適切な検査と治療の準備ができるようにすべきである。(261)
もっとも、異型リンパ球の検査とリンパ球の染色体異常の検査は別です。しかし、直接、染色体異常を検査するのではなく、染色体異常を持つ可能性のある異系リンパ球(大部分は、単に感染等で活性化されたリンパ球ですが、一部には被ばくによる染色体異常をもつ細胞も含まれます)をスクリーニング項目に入れたのではないかと推測されます。
このように、電離放射線障害防止規則では、「リンパ球は、哺乳類細胞の中で最も放射線感受性の高い細胞の1つ」放射線基礎医学 第11版 菅原努、丹羽太貫)であることを踏まえて、放射線作業従事者に対し、被ばく線量によるリンパ球の形態の異常について血液検査を実施しています。この考え方によれば、リンパ球の数の減少についても、被ばく線量によるものかどうか検査を実施することが重要となります。
第七、原発事故後の健康調査への疑問点
福島第一原発事故後の被ばく線量が高かったと推定される住民への白血球分画の検査において、明らかに白血球数減少、好中球数減少、リンパ球数減少がみられています。にも関わらず、「年齢区分や性別による偏りはない」と評価するだけでは不十分です。
もし「被ばくによる健康への影響は無い」とするなら、線量区分や地域においても偏りが無いことを発表すべきです。記者会見で、私はこの点について何度も指摘しましたが「発表は専門委員会で検討する、現段階で発表の予定は無い」の一点張りでした。
もし「被ばくによる健康への影響は無い」とするなら、線量区分や地域においても偏りが無いことを発表すべきです。記者会見で、私はこの点について何度も指摘しましたが「発表は専門委員会で検討する、現段階で発表の予定は無い」の一点張りでした。
しかも、これは白血球分画の検査だけの問題ではありません。甲状腺検査でも同様です。福島県は、小児甲状腺がんの発生が「被ばくによる影響は無い」とするなら、線量区分や地域においても偏りが無いことを発表すべきです。私は、県民健康管理調査で甲状腺がんと診断され手術をした小児を個人的に知っていますが、線量が低いところではありませんでした。警戒区域から道一本はさんだようなところで、ずっと生活していたご家族です。私は、検討委員会に対して、甲状腺エコー検査の結果と線量区分・地域の相関関係を公表してほしいと要望しましたが「現段階で公表の予定はない、検討する」という回答のみです。さらに、「甲状腺エコー検査で悪性もしくは悪性の疑いと診断された10人の子どもの被ばく線量を把握しているんですか、公表はされないのですか」と質問すると「把握はしているが公表はしない」という回答でした。
また、私は、「甲状腺エコー検査の結果や血液検査の結果、問題があるとされた方々(B判定やA2判定、血液検査で白血球数、リンパ球数、好中球数などが基準値外とされた方々)を地域別に公表してほしい」と要望しました。理由は、福島県内は汚染地域と非汚染地域が混在しており、県全体の結果ではなく、地域別の結果が重要だからです。事故直後に高濃度の放射性プルームが通った地域、現在でも放射性物質が沈着している地域と非汚染地域とを比較して、健康調査の結果に偏りが無ければ、確かに被ばくの影響は無いという結果が出るかもしれません。しかし、健康調査の結果を地域別で出さず、県全体の結果では被ばくの影響が無いかどうか評価できません。
これに対し、検討委員会は、「地域別で公表するのは『プライバシーに関わる』のでできない」という回答でした。そこで、「では、基本調査からの被ばく線量別で公表してほしい、それならばプライバシーは関係ないので」と要望しました。しかし、これに対しても、検討委員会の回答は「公表する予定はない」というものでした。
もともと県民健康管理調査は原発事故により多くの県民が健康に不安を抱えている状況に対応するために、被ばく線量を推定する基本調査と健康状態を把握する詳細調査という2本柱が実施されたものであるのに、その調査結果について、それぞれバラバラに発表されるだけで、線量評価と健康調査の相関関係の考察が全く発表されないというのは、県民健康管理調査の目的に照らしても大いに疑問を抱かざるを得ません。
リンパ球、白血球、好中球が被ばくにより減少することは常識であり、調査の結果、被ばく線量が高い住民に減少がみられているにも関わらず、年齢や性別での偏りでしか評価しないのは、意図的なものを感じずにはおれません。
以 上
[1] http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/kenkousinsa.pdf
[2]白血球は、通常、好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球の5種類から構成されていて、正常な状態のときはそれぞれの占める割合が一定範囲内に保たれていますが、何らかの異常が発生するとその比率に変化が現れます。異常のタイプに応じてそれに対抗する或る成分が増加したり減少したりするためです。白血球分画の検査はその増減を調べるものです。
[3] http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/shiryou2.pdf
[4] http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/250213siryou3.pdf
[5] もっとも、ネルソンの基準値は年齢別に記述されているのに対し、福島県の発表は「0~6歳」「7歳~15歳」の括りなのでそのまま比較はできませんが、ネルソンの基準値を「0~6歳」「7歳~15歳」で平均値を出して比較したものです。
[6] 労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について
[7] 正常なリンパ球に比べて形態に異常を認められる場合、その異常の原因が腫瘍性によるものを異常リンパ球と呼ぶのに対し、外敵からの刺激(ウイルス感染、毒物、放射線など)に反応して形態が変化したものを異型リンパ球と呼びます。
別紙②の白血球のヒストグラム
別紙③の好中球のヒストグラム
別紙④のリンパ球のヒストグラム
別紙⑤-2 様式第一号 電離放射線健康診断個人票
グラフでは好中球減少症基準の1500個以下が何百人もいるようにみえますが、本当でしょうか?
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