一昨日、第一次疎開裁判で何度も意見書を書いていただいた医師の松崎道幸さんから、、これからスタートする第二次裁判=子ども脱被ばく裁判に対するメッセージを寄せていただきました。
*******************************
第二次疎開裁判スタートに対する抱負
松崎道幸(道北勤医協 旭川北医院院長)
2014年8月17日
松崎道幸(道北勤医協 旭川北医院院長)
2014年8月17日
福島第一原発事故による放射線被ばくがどのような健康被害がもたらされるかについては、政府が様々なことを言っていますが、私は、日本政府が4つの大きな誤りをおかしていると考えています。
日本政府の4つの誤り
1. 放射線被ばくで病気になるリスクを一ケタ近く小さく見積もっている(放射線被ばくの健康影響の過小評価)
2. 被災地域の放射線被ばく量をきわめて小さく見積もっている(放射線被ばく量の過小評価)
3. 小児甲状腺がんを被ばくと関係ないと断定している
4. がんだけでなく様々な病気が増えるおそれがあることを無視している(チェルノブイリの教訓の無視)
|
第一の誤りは、どれだけ放射線を浴びるとどれだけがんの危険が増えるかという、いちばん基本的な前提が大きく間違っていることです。放射線被ばくの健康影響についての最も信頼できる研究(最近の医療被ばくデータ)によると、放射線被ばくによってがんとなる危険は、政府やICRPの主張よりも一ケタ近く大きいことがわかっています。
第二の誤りは、「モニタリングポスト」や「個人線量計」で測った数字を使って、福島の人々がさらされている放射線被ばく量はとても少ないと言い続けていることです。政府は、この二つの誤りを正さずに、毎年20mSv被ばくする地域でも「生活可能である」として、病院の「放射線管理区域」の20倍も線量の高い場所への帰還を進めようとしています。
第三の誤りは、すでに福島の100名近くの子どもさんに甲状腺がんが発見されていますが、それを原発事故による放射線被ばくと関係ないと断定していることです。今回の甲状腺がんの原因については、被ばくと関係があるとするデータと、ないとするデータが出されていますが、発見された小児甲状腺がんの男女比は、放射線被ばく型(男女比が1対1に近い。これに対して「自然発生」小児甲状腺がんでは、男女比が1対5前後)であると考えられますから、注意深く検診を続けることが大切と考えます。
第四の誤りは、被ばく量と被ばくの健康影響の両方をとても少なく見積もった対応を前提にして、福島の住民には明らかな健康被害は起きていないし、これからも起きないだろうと断定していることです。このような誤った認識に基づいて今回の原発事故の健康被害を正しく予測できるはずがありません。
ちなみに、日本政府の発表した人口動態統計をもとに解析すると、線量の高い4県(茨城・福島・宮城・岩手)の自然死産率は、福島事故の9ヶ月後から有意に12.9%増加している事がわかりました。それ以外の日本の地域でこのような増加は見られていません。(2014年2月6日発行のドイツの放射線防護専門誌「放射線テレックス(Strahlentelex)」650-651号に掲載された論文による)
チェルノブイリ事故後、ベラルーシでは、小児腫瘍罹患率が100倍に増えました。いくら貧困や衛生状態の悪化が発生しても、それだけで数年後に平常時の10~100倍もの小児腫瘍が発生することはありません。小児腫瘍の増加がチェルノブイリ事故に伴う放射線被ばくによってもたらされたことを強く示唆しています。
このことは、福島事故にどのような意味を持つでしょうか。福島の子どもたちの放射線被ばく量がチェルノブイリの10分の1であると仮定しても、福島の子どもたちの小児腫瘍が被ばく前の10倍に増える可能性があると考えなければなりません。放射線被ばくはがんだけでなく、脳卒中、心臓病をはじめとした全身の様々な病気を増やしますから、現在、福島などで事故前の10倍以上の空間線量の地域に住んでおられる地域の方々には、がんだけでなく、心臓病・脳卒中・呼吸器疾患など全身の様々な病気が増える心配が大いにあります。
これ以上の放射線被ばくによる被害を防ぐためには、第二次疎開裁判に勝ち抜くことが絶対に必要です。そのためには、福島原発事故における日本政府の4つの誤りを多くの人々に知らせてゆくことが重要だと考えます。
以 上
0 件のコメント:
コメントを投稿