1、 バズビー博士支援基金発足の経過
本年9月9日に私たちは最終準備書面を裁判所に提出しました。その中で指摘した重要な主張の1つが、以下の通り、ストロンチウム90等による内部被ばくの危険性でした。
6月6日、原子力安全・保安院公表のデータ(13頁表5)によって、福島原発から大量のストロンチウムとプルトニウムの放出が判明した。
しかし、ストロンチウム等の汚染状況について、4月12日、文部科学省が福島県で3月に採取した土壌と葉物野菜からストロンチウム90等を検出したと発表したきり、それ以後(海や原子力発電所敷地内は除いて)福島県内について検出の情報はない。しかし、これは明らかにおかしい。通常、セシウムが検出される時その一定割合でストロンチウムが検出されるが、福島県でその後もセシウムは検出されているのにストロンチウムだけ検出されない筈はないからである。真実は、その後、福島県内で、きちんとストロンチウムの検査を実施していない可能性が高い。
その結果、福島県内の土壌と野菜にはストロンチウム90等で汚染されている可能性が極めて高く、3月11日以後も「地産地消」を変更せずに学校給食を実施した郡山市をはじめ福島県内の子供たちは、学校給食でストロンチウムで汚染されている野菜を食べ、摂取したストロンチウムによる内部被ばくの危険にさらされている可能性が高い。(最終準備書面15~18頁)
この問題を解明するためには、早急に福島県内におけるストロンチウム90等の汚染状況を検査により確認する必要があります。しかし、日本政府は終始一貫、この検査をやろうとしません。というのは、3月17日に国が示した暫定規制値では、「ヨウ素」、「セシウム」、「ウラン」並びに、「プルトニウム及び超ウラン元素」が規制の対象で、「ストロンチウム」は対象外とされているからです。しかし、主要な放射性物質による内部被ばくの危険度は、プルトニウム239>ストロンチウム90>セシウム137>ヨウ素131の順であることは放射線生物学の常識です。にもかかわらず、日本政府は、ヨウ素とセシウムしか検査・公表していないのです。
他方、本年7月に「ふくしま集団疎開裁判」支援のために緊急来日した欧州放射線リスク委員会(ECRR)の科学事務局長クリス・バズビー博士は、つとに、ストロンチウム、ウラン、プルトニウム等の放射性物質の検査の必要性を強調され、採取した自動車のエアフィルター、土壌、水のサンプルをイギリスに持ち帰りました。しかし、検査には多額の費用(約50万円)がかかるため、バズビー博士から検査費用の支援の要請がありました。
そこで、本年8月29日、バズビー博士の友人であり、本疎開裁判の協力者の一人でもある森田玄さんが、この検査費用の捻出のために窓口となる場を立ち上げました。これがバズビー博士支援基金です。この基金に集められた募金はそっくり、バズビー博士らが1992年に設立した環境NGO「グリーン・オーディット」 の口座に送金されています。
2、バズビー博士支援基金の現状
バズビー博士支援基金には、その後順調に、検査費用のための募金が集まり、森田さんの報告によれば9月20日現在で266,500円で、これらは「グリーン・オーディット」の口座に送金され、バズビー博士も確認済みです。
言うまでもなく、検査を実施した結果は、分かり次第、バズビー博士から報告を受けることになっています。
私たちも、疎開裁判の中で、福島県内におけるストロンチウム90等の汚染状況を証明したいと思い、いま、その検査結果を待ち望んでいるところです。
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