6月24日に提訴された「ふくしま集団疎開裁判」は7月5日に第1回の裁判がありました。その日までの数日間に、日本のみならず世界中から3000名の署名が集められ、裁判所に提出しました。
この日の裁判で、裁判所は世界で初めての疎開裁判を「門前払い」とせず、「本格的な審理」に入る姿勢を明らかにしました。
これは、福島県の子供たちがいま置かれている「被ばく」という極めて危険な現実に真正面から取り組もうとしたもので(今、どこにそんなまともな為政者がいるだろうか)、それは「真実から目を背けない」という裁判の原点に帰ったものです。それを可能にしたのはまずは裁判官の良心と勇気ですが、同時に裁判官の背中から後押した、ごく短期間に世界中から寄せられた3000名もの署名者たちの「つぶやき」でした。
今から50年以上前、のちに冤罪事件の代表例とされた八海事件、松川事件で「真実を明らかにせよ」という世論の大きな声が沸きあがったとき、時の最高裁長官田中耕太郎は「世間の雑音に耳を貸すな」と訓示を足れました。しかしこの言葉には語られざる後半部分がありました。「政府、最高裁、財界の本音には耳を澄ませ」と。
元々、裁判官は日常的に「政府、最高裁、財界の本音に耳を澄ま」すよう強いられています。例えば、原発差止裁判も、稀な例外を除いて、みな「政府、最高裁、財界の本音」を反映したものばかりでした。だから、本来であれば、「世間の雑音」が世におこって、それが裁判所に届けられて、かろうじて、正常な「様々な声の多様性」が確保されるのです。そして、多くの裁判官は、そうした「世間の雑音」を接したとき、初めて心安んじて、自分の良心に従った判断に従うことができるのです。
この集団疎開裁判も同様です。「本格的な審理」を進める中で、裁判官の良心と勇気は今後、様々な圧力を受けることでしょう。そのような困難な状況の中で、裁判官の良心と勇気を支えるのは、「真実から目を背け」ては、己の生命・健康を守ることができない福島県など多くの地域で被ばくした人たちです。そして「真実から目を背けない」ことの大切さを身を持って知っている世界中の市民の人たちです。
皆さん、裁判官が最後まで自己の良心と勇気を保って判決(決定)を書けるように、その日まで、世界中の皆さんの裁判を支援する「つぶやき」を裁判所に発信して行こうではありませんか。どうぞ、引き続き、皆さんの署名をお願い申し上げます。
(文責 柳原 敏夫)
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