被ばくによる健康被害について、日本政府はもっぱら国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告した基準をもとに安全基準を考えてきましたが、しかし、この基準は大変問題のあるものでした。
なぜなら、それは「内部被ばくの危険性」を殆ど考慮しておらず、「核・原子力開発のためにヒバクを強制する側が、それを強制される側に、ヒバクがやむをえないもので、我慢して受忍すべきものと思わせるために、科学的装いを凝らして作った社会的基準であり、原子力開発の推進策を政治的・経済的に支える行政的手段」(中川保雄「放射線被曝の歴史」)だからです。
しかし、このことを正面から指摘する科学者集団は長い間、存在しませんでした。1997年、ようやくそれが出現しました。欧州放射線リスク委員会(ECRR)です。その初代の議長は、1958年に世界で最初に低線量被曝問題(妊婦のX線撮影により小児ガン・白血病の増加)を発見した英国のアリス・スチュアートでした。
つまり、ECRRは、それまで国際的権威とされてきたICRPの基準に対して、その非科学性を最も徹底して追及してきた唯一の国際的な科学者団体でした。そのECRRの科学事務局長をつとめるクリス・バズビー博士が英国から来週17日(日)に来日が決定しました。
この来日を機会に、バズビー博士に、
(1)、昨今、放射線 「正しく恐れよう」と称して間違った安全神話を流布する学者先生たちがあとを断ちませんが、真に科学的にみたとき、被ばくの危険性はどう考えるべきか、
(2)、ICRPの基準は真に科学的な立場からみた場合、どう評価されるべきか。
(3)、ECRRの基準に従えば、今、福島原発事故によって住民は、今どのような被ばくの危険性にさらされているか。
など、現在最も緊急かつ切迫した課題について、講演の予定です。
日常的な毒や事故と異なり、「放射能は見えない、臭わない、味もしない、理想的な毒です」(アーネスト・スターングラス博士)。言い換えれば、私たちは放射能を市民の日常感覚で考えてはいけないのです。放射能は、日常感覚で考えたとき、取り返しのつかない間違いに陥る恐ろしい毒です。だから、この問題では、市民は自らの身を守るためには、科学の素人といえども、日常感覚を脇に置き、科学的認識に向かうしかありません。
ところが、日本には、ICRPを筆頭にして、科学者の背広を着たいかがわしい人々が市民の周りに数限りなく存在していて、「100ミリシーベルト以下なら安全」などという非科学的で有害な言説を放射線のごとく振りまいています。
そこで、放射線のみならず、放射線安全基準の言説でもすっかり汚染されている日本において、市民が日常感覚を脇において、真に適切な科学的認識に向かうために、ECRR科学事務局長のクリス・バズビー博士の講演が極めて有益なものであると確信します。
今回、英国からバズビー博士の来日にあたっては、皆様の支援を必要としています。どうか、寄付、カンパをよろしくお願いいたします。
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