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2017年2月17日金曜日

山下氏を招いて放射能安全キャンペーンを始めた時、国や県への期待は打ち砕かれた。子ども脱被ばく裁判で中手聖一氏

 裁判前の講演と裁判での口頭弁論をされた原告の中手聖一さん

2月15日(水)福島地裁において第9回子ども脱被ばく裁判口頭弁論が行われました。
当ネットのボランティアは今回も朝から福島駅前にて、裁判告知のチラシや甲状腺がん患者が増えている等の載ったチラシを配布しました。
 福島ではいつもチラシの受け取りが良いのですが、この日はとくに受け取りがよく、30分くらいの間に200枚以上のチラシ配布ができたそうです。
 
 裁判前には福島市で原発事故にあい、文科省が20ミリシーベルト基準を出した時に福島県の皆様と共にいち早く抗議の声をあげた中手聖一さんの講演がありました。
 中手さんは午後からの裁判でも原告として口頭弁論をされました。


福島駅前でチラシ配布





今回も沢山の署名を提出しました。累計4万を超えたそうです。
皆様ありがとうございます。

中手さんの応援に駆けつけてくれました。


寒い中、ありがとうございます。

以下は参加者からの報告です。

★★★

2月15日、子ども脱被ばく裁判・第9回口頭弁論が、福島地裁で開かれました。

「今回の争点は、損害論といわれるもので、国、県は、原告一人一人がどの程度被ばくしたのか、線量を言いなさい、被ばくの線量によりどんな損害か明らかになると主張する。我々は、線量は必要ない。被ばくすればなんらかの被害が起こる、被ばくさせられたという事実が問題なのだと主張。
・スピーディのデータを隠し無用の被ばくをさせられたとの追及に、国はデータを伝達することに法的義務はないと居直る。また、放射性物質がどれだけ放出されたか不明確だから正確な数字が出せないとか、風向きが刻々変わるので、かえって住民はパニックを起こすとも弁明。我々は、在日米軍にスピーディのデータを報告している事実、担当の部署がスピーディ隠しの責任をなすり合っている事実を追及。
・国は東電が各原告に損害賠償金をどれだけ払ったか調査委託を裁判所に要求した。我々は、この裁判とは関係ないので必要ないと主張。裁判長は保留にした。
・原子力緊急事態宣言が公示され、6年近く経過した今も福島第一原発は解除されていない、実施区域、概要、対象者は現在どうなっているのかを質問したが、国は答えない、再度回答を要求した」
と井戸弁護団長は説明しました。
 
 原告の意見陳述は中手聖一さんでした。原稿なしで、被告の代理人達に向って、静かに淡々とご自分の思いを語りました。又裁判前の市民会館での集会でも中手さんが講演しました。
「3月末で自主避難者への住宅保障が打ち切られます。国や県の言い分は、いつまで甘えているのか、生活再建を促す、自立させるというのでしょう。確かに、国や県の言い通りにしていたら泣きをみると準備していた人たちは、避難から移住、定住のステップに移り、家賃が有料になっても生活できる人もいる(東京、大阪の大都市では困難)。だけれど、自主避難の6割は母子避難、働きたくても働けない、幼い子どもがいるとか、母親自身が体調を崩し働けない人たちにとっては、住宅補償がなくなったら、避難は続けられない、帰還するしかない。そもそも東電が原発事故をおこしたから避難したのです。避難とは、住まいを失い、仕事を失うことです。国、県は自主避難なのだから自己責任、自助努力せよと迫ります。被害者に対して最低限必要な保障をしようとしない。それがこの国の現実です。
 原発過酷事故が起こった時、自分の中には国や県が何とかしてくれるのではないかというひそかな期待がありました。それが打ち砕かれたのは、3月、県が山下俊一氏を招聘して放射能安全キャンペーンを始めた時。4月、高木文科大臣の「子ども20ミリSV」通知でした。
 自分達の世代では解決できない不始末を起こしてしまった大人世代の一員として、子ども世代への責任を少しでも果たしたい。福島では、放射能の不安を口に出来ない目には見えない同調圧力があるのでしょう。だけど、負けないで声をあげ行動してほしい、私も行動します。もう一つは子育のこと。ちゃんと自分の意見をもって発言し行動できる子どもを育てなくてはと強く思います。私は30年近く、障害者運動に関って暮らしてきました。障害者自身が、自分たちも同じ人間だ、差別されるのはおかしいと粘り強く抗議し社会を変えてきました。原発避難民たちが、被害者なのに保障されない現実、当事者である被害者が声をあげて行動していくほかないと思います」
心にしみるお話でした。

 最後、弁護士さんを交えて、参加者のざっくばらんな意見交換会で、「平常時は年間1ミリSVだけれど、今は原子力非常事態宣言下だから、被ばく限度が20ミリSVでも仕方ない。だけれど、福島は除染し安全だから帰還しようと一方で言いながら、非常事態宣言時の20ミリSVで帰れ、そこで暮らせとは、トンデモない矛盾じゃないか」ホントにその通りだ。
「福島原発事故に基づいて救済する法律、特別法ができないと、裁判に勝つのも難しいのではないか」ナルホドナ。
「自分は、甲状腺がんを発症して手術もした。今後、再発の恐れが20%~50%あり、再発したら未分化癌を発症し進行が速いと医師に言われている。私は、福島のいろんなところへ出かけて行って、自分の体験を話している。病状や不安、自分の気持ちを率直に話すと、実は自分も・・とか、親戚が・・と悩みを語り始める。福島では、モノが言えないとタブー視してるけれど、自分が裸になってぶつかれば、答えてくれる、私は大人の甲状腺がん患者など健康被害当事者がつながって、当事者の運動を作っていかなくてはならないと思う」熱い力強い発言。
 最後に井戸弁護団長がら、「弁護士のページに、我々が裁判所に提出した準備書面を載せているが、みなさんから被告の準備書面も見たいとの要望があり、載せていきたい」との告知がありました。
 朝9時20分から福島駅頭でチラシ撒きの時は、風もなく暖かかったです。受け取りもよくて、30分で200枚以上撒けました。裁判所へ移動のお昼過ぎ、福島盆地を囲む雪山から冷たい風が下りてきて、急に冷え込んできました。とても充実した一日でした。

松岡加代子



★★

2月15日第9回子ども脱被ばく裁判口頭弁論を傍聴しました。

 福島地裁で行われている裁判は、被告(国、福島県地方自治体)による「子ども人権裁判」を「親子裁判」と切り離して棄却(門前払い)する策動をはねのけて、第7回口頭弁論から実質審理に入りました。
(子ども脱被ばく裁判は、「子ども人権裁判」と「親子裁判」の二つで構成されており、子ども人権裁判は、放射能汚染のない年間1mSv以下の環境で教育させよという福島県内市町村に対する要求、親子裁判は原発事故の際適切な回避策を取らずに無用の被爆をさせた国・県の責任を追及する裁判)

 被告自治体らの主張は、原告が低線量被曝の危険性の根拠とする次のような事実(日本の法律が、一般公衆の被ばく限度を年1ミリシーベルトと定めていること、日本の法律が放射性セシウムによる表面濃度4万ベクレル/㎡を超える環境を放射線管理区域として厳しい規制をかけていること、累積5ミリシーベルトの被ばくで白血病の労災認定がなされた事例があること、原爆症の認定基準では、1ミリシーベルト以上の被ばくをしたと考えられる人で、一定の類型の疾病に罹患した人は、原爆症と認定されること等)に対して、これらの事実は、低線量被曝による健康被害とは関係がないと主張するのみで、それ以上の具体的な主張をしていないので、これに対する具体的な理由を述べるように前回の公判で求めました。しかし、被告は回答せず、原告に対し個人の被ばく線量を出せという要求をしてきました。「各市町村では皆普段通りに生活しており、避難の必要ない」などという根拠のない主張をしました。内部被ばくは個人線量計(ガラスバッジ)では測定できず、要求自体が非科学的です。原告側弁護団はそのような要求は不合理としてはねのけました。
 原告弁護団はまた、被告・国・福島県がスピーディーの情報を活用せずに多くの人に無用な被ばくをさせたことは、国の防災指針・県の防災計画に従わず、情報隠匿であり違法だったと主張しました。

 この日は中手聖一さんが原告として意見陳述を行いました。
 中手さんは1961年いわき市生まれ、福島市在住中に東日本大震災で被災。2012年6月、30年以上務めた障がい者団体を退職し札幌市に移住。2013年3月、障がい者向け訪問介護を行う「うつくしま介助サービス」を、避難者仲間たちと立ち上げる。現在その代表社員。
 原発事故子ども・被災者支援法市民会議代表世話人、避難住宅問題連絡会「避難の権利」を求める全国避難者の会共同代表、こだまプロジェクトのメンバー。

 彼は原発事故以前に広瀬隆さんの講演を聞いた経験があり、事故後すぐ子どもと奥さんを西日本に避難させました。事故後まもなく文科省が年間20mSv以下だから授業再開せよという方針を出したときには、多くの仲間たちとともに文科省に行って抗議行動をしました。かれのリーダーシップを私たちは覚えています。この日参加した原告の一人Sさんもその時の中手さんの主張・行動によって、放射能から子供を守ろうという決心に至ったと言いました。またこの日の裁判には二人の障がい者のかたが参加し、かれの陳述を傍聴しました。この裁判は実質審理が始まったばかりです。
 次回第10回は5月24日です。多くの方の膨張をお願いします。

冨塚元夫

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