告知

告知 ①官邸前抗議 12.19(木)14時30分~15時30分 ②最高裁前抗議集会・「子ども脱被ばく裁判」棄却決定に抗議 2025年1月7日(火)14時~15時

2020年8月20日木曜日

2020 8.19 脱被ばく実現ネット 官邸前抗議行動 

8月19日(水)19:15〜20:00 

NEW!! 動画をアップしました。撮影のMさん、ありがとうございます。

恒例の脱被ばく実現ネット主催 官邸前抗議行動をしました。






官邸前抗議にご参加下さった皆さま、

ツイッターで拡散にご協力下さった皆さま、

本当にありがとうございました。


夕焼けがとても美しい日でした。
総がかり行動に参加の方々、約15名ほどが官邸前にもご参加下さり、
私を含めて、女性5人、男性1人がマイクを握り
それぞれ自分の感じている事がらを丁寧に、
または怒りを込めてお話し下さいました。

ある方は、原発事故後疑問に思っていたが行動に参加しなかった。
しかし、コロナ禍の中でもう黙っていては危ないと感じ、
行動に参加することにしたと宣言するように話したり、
またある方は、「そちらで警備している方達は、何を感じて警備しているのですか!」 
感情を押し殺した声で、抗議しました。(官邸前には装甲車が3台ほどと、
警察官が20人弱警備)

脱被ばく実現ネットのチラシが無くなってきたので、
日本版チェルノブイリ法の呼びかけチラシを、
官邸前を足早に去っていく人々に配布し、
意外と受け取る方々もいて励みになりました。

今日はメンバーが録画撮りをしてくださいましたので
動画アップされましたら追加いたします。

子ども脱被ばく裁判に触れ井戸弁護団長のあいさつ文を
紹介しようと用意していったのですが、残念ながら読み上げる余裕がなく、
9月の行動時に紹介させていただきます。

参加の方々が手伝ってくださったり、
2人の方から2000円のカンパを頂戴しました!
ありがとうございます。

M.T.

2020年8月14日金曜日

第27回 子ども脱被ばく裁判 記者会見および報告集会動画

皆様、遅くなりましたが、

7月28に行われた子ども脱被ばく裁判の記者会見、報告集会の動画を

アップ致しました。撮影の松岡さん、ありがとうございます。

松岡さんは、今回も動画内容の書き出しもしてくださいました。

大変な作業をありがとうございます。

❶子ども脱被ばく裁判第27回公判・結審をおえて—— 記者会見1


・記者会見

 井戸弁護団長の「裁判を振り返って」

・記者からの質問

・原告の感想


井戸謙一弁護団長 「裁判を終えて」

この裁判を起こしたのは、平成26年(2014年)で、約6年経過しました。今日結審というはこびになりました。一人10万の損害賠償、慰謝料支払いを求めるという非常にささやかな裁判です。しかし全国沢山の方から注目され、すでに署名は全国津々浦々から集まりで8万6千集まり、全国の心ある人達から注目されている裁判なんだなと実感しながら、今日の期日に臨みました。

前回で証人尋問を終え、今日の結審までに、最終準備書面を原告弁護団全力を挙げて書きました。

最終準備書面76で、約400頁です。それに対し被告側は国が2通、県が1通、田村市、郡山市が1通だしてきました。国の最終準備書面2通に対して更に反論の準備書面77、60頁を、今日提出し、陳述して、審議が終わりました。判決言い渡しは来年3月1日、午後1時30分と指定されました。早ければ年内、遅くとも年明け早々かと思っていましたが、判決言い渡し期日が先になりました。これは、裁判所が軽々に判断できる議案ではない、十分時間をかけて判決を書きたいという現われと理解しています。

この事件は、請求金額額はささやかですが、低線量被ばく、内部被ばくという普遍的問題を主たるテーマしています。この問題は終わったことではなく、今も進行中の問題です。この内部被ばく、低線量被ばくを正面見据えないと、さらにいろいろな所で被害が進展し顕在化してくると思います。

 この裁判は3次にわたって提訴しましたが、いろいろな事情で取り下げられた方がいます。子どもが原告になっている行政訴訟、安全な環境で教育してほしいという裁判は、公立の小中学校に通う子が条件になっていますので、審議途中に中学を卒業してしまって、原告の資格を失くした子がいて、当初より原告数はかなり減りました。現在の原告の数ですが国賠訴訟が158人、子どもが原告になっている行政訴訟が14人になっています。こういう陣容で最終期日を迎えて終わったというところです。


記者からの質問


河北新報 6年という長い年月で、結審を迎えて改めて原告さんの思いを聞かせてほしい。


今野寿美雄団長 2014829日、福島地裁に第1次提訴し、ここアオウゼで、記者会見がありました。私はこの場に応援のつもりで駆け付けましたが、原告の要件に合うということで、第2次提訴の原告になりました。今日の結審には、初代の代表だった長谷川さんが駆け付けてくれましたが、8時までに静岡に戻らなくてはならないということで、裁判所から真っすぐ戻られました。

6年は長かったです。小1だった子は中1、中学生は成人してます。子どもはずっと被ばくを続けているわけで、もっと早く国が過ちを認めてほしかった。でもこの裁判をやることで、いろんなことが分かってきました。判決は31日です。早く原告団代表を解放されたいというのが正直な気持ちです。長い6年間でした。ありがとうございます。


原告男性 私も途中からの原告に加わりました。ただ、山下俊一さんとか、鈴木眞一さんとか、法廷に出て来るとは思わなかった人達が、法廷に来てしゃべるのを聞きました。被ばく問題を正面から問うている数少ない裁判の一つで、楽観はできないのですが、見届けたい。最後まで原告として裁判にかかわろうと思います。今日という日を多くの支援者の方々と一緒に迎えることができて感慨深いです。


原告女性A 私は2014829日提訴に日に原告として息子と共に参加しました。小2だった息子は中2になりました。長い月日だったなと思います。この場で再び記者会見の場にでて胸が一杯です。この裁判、皆さんに支えられて、子育て、仕事しながらに頑張ってこられたと思います。今野さんがいなかったら、ここまでこれなかったと思います。どんな結果になるとも、私は子どもを守るため、ピンクのこの杖をついて頑張っていきます。これからもよろしくお願いいたします。


原告女性B 雨の中、コロナ禍の中、福島市まで、こんなにお集まりくださって、ありがとうございます。皆様の子どもたちの被ばくを真剣に考えてくださっていること、毎回身に沁みて感じ、感謝の気持ちでいっぱいです。支援者の皆さま、弁護士の皆さま、同じく声をあげた原告の皆さまに、ありがとうという気持ちです。

今日、法廷で弁護団か最終申述書の要旨を伺い、科学的面からも福島の危険性をあぶりだしてくださいました。この裁判が進むにつれて、やはり福島は安全ではないのだ、子どもをここに置いておいてはいけないのだと思いましたが、今日の結審では、子どもは危ないし、私たち大人も安心できないのだなと改めて思いました。私は、こんな裁判をしているのか信じられなくて、国や県が一刻早く、子どもの健康を守る政策を出しては欲しいと思います。3月の判決、どんな結果になるかわかりませんが、希望を持ちたいと思います。


0アワプラネット・白石さん 弁護団の皆さまと原告の皆さまに質問があります。まず弁護団の皆さま、400頁にわたる最終準備書面、かなり苦心をされたかなと思います。先ほどからお聞きして、被ばくの問題を正面から取り上げた裁判であり、他の被ばく裁判と比べても、科学的な面でもその他の面でいろいろ論点があったと思います。ここ1年、尋問で忙しかったとは思いますが、ここで新たなことを解明したりとか、また今日の最終準備書面でも、今迄触れられていなかったこと論点を織り込んだとそうですが、この福島原発事故という日本で過去最大な原発事故で、皆さんが最終縦鼻書面を書き上げる中で着眼した新たな論点、ここが読みどころとなんだというところ、又国の反論でも、ここはと思う新たな点がありましたら、教えて欲しいです。


井戸弁護団長 審議の過程では、追及できなくて、最終準備書面を準備する段階で、こういうことだったのだとわかってきた点が多々あり、最終準備書面には織り込んだつもりです。

私が関与した部分では、2点申し上げたい。一つは、憲法や教育基本法から今日は論じましたが、こどもの健康を守るという点では、日本の法律はよくできています。学校保健安全法があって、それに基づく、学校環境衛生基準があって、学校の大気有害物質に関して厳しいルール規制がされています。現場には教育委員会から、年2回くらい調査に来て、基準を越えていると厳しく指導されるのだそうです。その基準と言うのは、環境省が定めている環境基準にのっとっているのですね。環境基準と同じ数値が学校環境衛生基準にも定められている。その基準物質の中に放射性物質が含まれていない。なぜ含まれていないのかといえば、恐らくは、放射性物質が環境中に放出されるなんてことを予想していなかったからだと思いますが、そもそも環境基本法の中に放射性物質はふくまていなかった。これも同じ理屈で環境下に放射性物質が広がるなんて想定していなかった。放射性物質については、原子力法の範囲内で規制はしていたけれど、一般の環境の中で規制はしていなかった。しかし、福島原発の事故を踏まえて、環境基本法に放射性物質も組み込まれた、除外規定だったのが規制の対象になった。だったら、放射性物質についても環境基準を決めなくてはならない、行政は他の有害物質と同じように、放射性物質についてもこの基準を作らなければいけない。環境基準というのは行政の目標です。行政はこの目標のもとに基準を作る必要がある。しかし、行政はいまだに放射性物質の環境基準を作ろうとしない。放射性物質の基準が作られていないから、放射性物質にたいする学校環境衛生基準もつくられていない。本来あるべきものがないのですから、その趣旨に基づいて、放射性物質についての環境基準、あるいは、放射性物質にたいする学校環境衛生基準環境衛生を行政としては想定して、子どもたちを守らなくてならないわけです。

次に、放射性物質にたいし、あるべき学校環境衛生基準はどういうものだろうかと考えました。そもそも環境基準の考え方なのですが、しきい値のない有害物質に対しては、「10のマイナス5乗」のレベルなんです。生涯その有害物質にさらされて、「10万人に1人の健康に影響がでる」というレベルで規制が定められています。

豊洲の土壌汚染の問題で、環境基準の10100倍のベンゼンが出るというので、大問題になった。あれは、ベンゼンが含まれている地下水を毎日1ℓ~2ℓ、生涯、70年間毎日飲んで、10万人に一人に健康影響がでるというレベルなんです。そういうレベルで環境基準が決められている。厳しいかと思うかもしれませんが、これは国際基準なのです。日本だけではなくて、WHOも他の諸外国も同じ基準です。だったら、放射性物質の環境基準も、生涯70年間曝されて、10万人に一人に健康被害を起こすといったレベルで決めなくてはならないはずです。

それを考えるに当たって、ICRP1ミリSV1年間被ばくすれば、1万人に0.5人のガン死のリスクがあるといっています。では、そのレベルで、10万人に1人のガン死の被ばく量はどれだけかというと、生涯線量にすると200μSVなのです。生涯線量200μSVあびると、10万人一人ガン死になるリスクがある。これを1年間の被ばく量にすると、わずか、2.μSVなのです。ですから、放射性物質に対しあるべき学校環境衛生基準は、年2.9μSVでなくてはならないというのが論理的帰結になります。でも日本の今の状況の中では、そんなこと言っても絵空事といわれるでしょう。追加線量が2.μSV以下なんて言う所は、日本全国ないでしょう。ですから、この裁判でも子どもたちを29μSVのところでなんてことは求めていませんが、本来はそうなんだ、そしてそれを実現できなくしたのは、福島原発事故で放射性物質がまき散らされたことであり、核実験の影響もあるでしょう。




  https://youtu.be/ZONHscx_zeA


❷記者会見2 


 https://youtu.be/ibmpfgbfR4Y 

・記者からの質問 

・井戸弁護士ーー最終準備書面で新たに指摘した二つの論点

・原告が山下氏に言いたいこと


井戸弁護団長 ですけれども、本来はそういうレベルで子どもの健康を守っていかなくてはならないものだということをこの行政訴訟の大きな根拠にしました。

もうひとつは安定ヨウ素剤の投与線量です。福島原発事故以前小児甲状腺等価線量100m㏜と決められていました。予測線量ですね。今ヨウソ剤を飲ませないと、1歳児の子どもがこの環境で生活していて、甲状腺への100mSvが予測されるときには、飲ませなくてはならないと決められていた。しかし国際基準は、もっと低かったのですね。1999年にWHOは、大人は100でいいけれど、子どもは50にしろというガイドラインをだしていました。世界的にこれに従ってくれというガイドラインをだしていたのですね。国際的にはそれに従って下げる動きが強まっていました。ベルギーは10mSvにさげました。それから、アメリカ、ドイツ、オーストラリア50に下げました。日本でもこれは検討しなければいけないというので、原子力安全委員会のなかに、原子力施設防災専門部会というものがあるのですが、その中にヨウ素剤検討部会を立ち上げました。その座長が山下俊一氏でした。2001年から2002年の間、100を切り下げるかと言う議論を検討部会でしているんです。結果的には切り下げないでひきつづき100でいいんだという結論を出しました。原子力安全委員会はそれを採用して、防災指針の中に、100と書き込んで、それがそのまま福島事故まで通用していたのです。

日本の考え方というのは、諸外国は子どもは50に下げたけれど、大人は100のままなんですね。日本は大人も子どもも100なんです。その時どんな議論をしているかと読むと、山下氏は大人も子どももわけるべきではないと強調している。分けると現場が大混乱をする。だから分けるべきでははない。山下氏が何と言っているかというと、大人も子どもを分けないで統一数値にするなら、弱い立場の子どもの基準をに大人も合わせるべきだというのです。それはもっともなことだと思うんですが、WHOの考え方と山下委員会の考え方のどこが違うのかというと、さらに詳細に見ていくととんでもないことに気が付きました。

ベネフィットとリスクの問題です。ヨウ素剤を飲むことで甲状腺がんを回避できるというメリット、利益とヨウ素剤を飲むことで副作用が出るというデメリットです。このバランスをとるという考え方なんです。メリットはWHOも山下委員会も同じデータを用いています。違いはリスクなんですね。WHOが採用したリスクは1000万分の1です。チェルノブイリ事故のあとポーランドでは1千万人の子に安定ヨウ素剤を飲ませた。それで、副作用は出なかった。小児甲状腺がんも一人も出なかった。これは国際的に非常に称賛されていて、山下俊一氏もいろんなところで、ポーランドではこうだったのだと宣伝しています。だから、WHOは副作用を1000万分の1と考えた。しかし、山下委員会が採用した数字は1万分の6です。この数字がどこから来たかというと、ポーランドで大人が服用して軽度から中度の副作用のリスクが1万分の6だというのです。山下委員会はその数字を持って来て、リスクとのバランスで100ミリSvでいいという結論を出しているのです。一般論では子どもの基準を当てはめるといいながら、内実のところ大人の基準を子どもに当てはめたのです。それで100を維持したんです。福島事故がおこり、事故後50に切り下げられましたが、この検討会で、子どもの線量を50に切り下げなかったのは違法だ指摘しました。科学的専門理論判断ですから、行政に裁量の幅はあるでしょうが、その幅を越えて許されない、100を50に切り下げないその根拠とした論理もインチキであることを指摘しました。


柳原弁護士 昨年秋から、毎月証人尋問がありまして、最後の3月4日の山下証人尋問まで、過労死寸前。その上最終準備書面は71日までということで、とても不可能と思っていましたら、急遽コロナの風が吹きまして、みんな全く仕事がなくなり、この最終準備書面作成に没頭するほかなかった。3月末井戸さんのところで合宿をやりましたが、新幹線はガラガラで、私たちのために列車を用意してくれたみたいで、合宿の内容も深まりました。井戸さんは、最後の最後、火事場の馬鹿力、尻に火が付いた状態で、今の問題を考え詰めて、ぐんぐん論理を深めていきました。この最終準備書面で今まで全く論議に上がってこなかった論点02つも出され、裁判官は真っ青、これは裁判のやり直し、結審の前に、裁判を続けなくてはと言い出すのではないかと思われました。光前さんもまた火事場の馬鹿力を発揮しました。この3人の裁判官は2月に福島・中通りの損害賠償裁判の判決を出しましたが、その判決文を舐めるように分析して、これは、201112月のワーキンググループが出した低線量被ばくの報告書をほとんどコピペして判決を書いているのだ。これを潰さないと我々の裁判でも全く同じものがでてきて、ばっさりやられると、光前さんから緊急事態宣言が出て、我々は、最終準備書面では、このワーキンググループの報告書の問題点を徹底的に明らかにしていくことを課題にして取り組みました。統計の問題、リスク評価の問題、報告書はたばこや飲酒と放射能のリスクを比べているのですが、リスクの比較の仕方そのものがおかしい。2004年に狂牛病の時、狂牛病の肉を食べて死ぬリスクと交通事故や煙草で死ぬリスクと比較する議論が出たのですが、それは比較自体が、おかしいんだと根本から批判を展開した先生がいて、その教えを乞うて、この放射能のリスクと飲酒、喫煙のリスクの比較の仕方の問題点を述べ、裁判所の出すかもしれない論点を一つ一つ潰していきました。

71日の締め切りで書面を出した時に、更に反論したいことがあったら、7月20日までに提出するように裁判所からいわれ、井戸さんは、郷地さん、河野さんの証人訊問について、国がめちゃくちゃなケチをつけている、これは、黙っているわけにはいかないとして、反論しました。また、スピーディについても、国はめちゃくちゃ詳しく書いてきたので、それ対して、古川さんに反論を書いてもらいましたが、それのための準備で本当に精も根も尽き果てました。国は我々の出した400頁の最終準備書面に反論を一切してきていません。


NHK記者 来年3月に判決ですが、この裁判が他の各地で行われている裁判にどの様な存在になるかについて聞かせてください。


井戸弁護団長 低線量被ばく、内部被ばくが争点になっている裁判はこれだけではないですが、この問題について、本格的に取り組んだ裁判の一つだったと思います。特に不溶性微粒子の問題について先駆的な役割を果たせたと思っています。実際、被ばく問題を取り上げている弁護団から、我々の書いた準備書面、証拠を送ってほしいと要請をいくつか受けすでに送っています。被ばくをテーマにした裁判に影響を与えているという自負は持っています。


今野原告団長 全国各地で避難者訴訟が起きています。避難の根拠、何故避難したかというと不溶性の放射性微粒子の存在、これが確固たる証拠で、これが明らかになって、やはり福島は危険だと分かった。だから避難しているんだ。避難の根拠であり、避難の権利の根拠です。これを子ども裁判が明らかにしたと思います。


NHK記者 原告の方がどのような思いで裁判に臨んでこられたかについて


今野原告団長 顔も出せない、法廷にも来られない原告が沢山います。なぜかというと、原告は小さい子をかかえた子育て世代です。共働きです、仕事を休めません、県外に避難した人達もなかなか裁判に駆け付けられません。避難先で皆さん、それぞれ大変な問題を抱えているんです。でも、みんな思いは一つ、子どもを守りたいそれに尽きると思います。出てこられる我々が声を上げ続けなくてはいけないなと思います。


記者 前回の、前々回の山下さん、鈴木さんに対して改めて言いたいことがありましたら、原告の皆さんお願いします。


今野原告団長 嘘つき!の一言です。鈴木さんは、まだ正直な方かと思うけれど、山下氏の発言は許せない。その為にどんなに多くの人が無用の被ばくをしたか許せません。


原告男性 私は山下さんの講演は聞いていないのですが、強調したいのは、「専門家」という人が国側に寄り添った発言をいろいろしますよね。そのことによって、違法な行政処分が、決して合法になるわけではない。科学者が言っているんだから、いいんじゃないかとみんな思いがちだけれど、そこははっきりと、正しくないことは正しくないと言っていかなくては駄目なんではないか。この裁判はそこに焦点を当てて、指摘してきたと思います。山下さん個人に言いたいこと、いっぱいあって止まらくなるので止めておきます。


原告女性A

 山下さんに対しては怒りしかない。今でも顔を思い出すと怒りがこみ上げてきます。本当のことを後々になって言われても、子どもの気持ちになったら、切ないです。当時元気だった子どもが、今健康を害している、親も健康を害しながら、この裁判をたたかってきました。先日、他県に避難した方と会いました。



❸記者会見3


 https://youtu.be/m7MEehJyl10

⭐️

記者会見続き

・原告の山下氏に言いたいこと

原告女性A 避難してもいろいろ誹謗中傷があってつらかった。でも、福島に残って、被ばくに対して声をあげている人たちの存在が自分にとって励ましであり、皆さんのことを応援しているといわれました。これからも、子どもを守るために声を上げ続けようと思います。


原告女性B 山下さんにしろ、鈴木さんにしろ、どんな方よく知りません。後ろに黒幕がいて、その指示に基づいて行動しているだけなのかもしれませんが、ともかく良心に基づいて、恥ずかしくない言動をしてほしいです。」

❹報告集会①・・寄せられたメッセージ

 https://youtu.be/P4cwQo21oFQ


報告集会

・京都原告団から子ども脱被ばく裁判へビデオメッセージ  

・おしとりマコさん・ケンさんからのメッセージ  

・崔弁護士のリモート挨拶  

・古川弁護士  スピーディの問題

田辺弁護士  170名の京都訴訟原告団は、大阪高裁で今戦っています。京都訴訟は、子ども脱被ばく裁判の丁度裏側、子ども脱被ばく裁判の原告さんは、避難したくてもいろいろの事情で福島に留まった人たちが、子どもに安全を与えたいと戦う裁判で、京都訴訟の原告さんは何とか避難はしたのだけれど、子どもたちの生活を支えることができないくらい困っていることで裁判で戦っている。そこでのキイワードは、「自主避難」です。なぜ「自主避難」は守られないのか。避難は、自主的でも何でもない、止むに止まれず、子どもを守りたいと一心で避難したのに、なんで好き勝手に逃げたと言われなくてならないのかという問題です。福島に残っている人たちは、福島はもう安全なのに、なんで、安全な場所で教育をなんていうんだと言われ苦しんでいる。170人の原告さんは、自分たちが避難したことを国、東電に認めてもらいたいということで裁判で闘っています。争点は一緒です。低線量被ばく、不溶性セシウムによる内部被ばくの問題、なんで福島で被害を受けた人々が、これらのリスクを甘んじて受け続けなくてはならないのかという真っ当な疑問、怒りです。

しかし残念ながらわたしたちが望む救済はなかなか認められません。私たちは国の加害責任を認めさせようとしています。これにより国に救済を求めていく梃子させるということです。京都の訴訟は平成303月判決があり、国の責任を認めました。しかし昨年の夏あたりから、おかしくなって、名古屋、山形では国の責任は排斥されている状況です。大阪高裁はまだまだ続きそうです。コロナのこともあって、少し審議は途絶えておりますが、10月に審議が予定されています。応援よろしくお願いします。


・京都原告団から子ども脱被ばく裁判へのビデオメッセージ

・おしどりマコさんケンさんからのメッセージ


崔弁護士 リモート参加

今日は行きたかったのですが、家族とも話し合い、こういう形で参加させていただきます。

この裁判に加わって、3年、4年でしょうか、あっという間に過ぎた、早かったなと思いっています。弁護団はみなさん個性的でそれぞれの個性が生かされて、ここまで来られたなと考え深いです。

弁護士のできることってわずかなことなんですね、支援者の人達に尻を叩かれながら、励まされながら弁護士はやるしかない、また原告の皆さんのその時その時の裁判へ傾ける力を反映しながら、ながら弁護士はやっていけるですね。

私は、主に内部被ばくについてやってきました。100ミリSv問題、20ミリSv問題ですね、裁判をやりながらわかってきたことが次々あって、自分ではそれをまとめたつもりですが、十分にうまくまとめられたかなと思います。結果を見て皆さんと評価したいと思います。


古川弁護士 私は、途中、第2次提訴辺りから加わりました。きっかけは私がかかわっている放射能測定所で、柳原弁護士を呼んで勉強会がありました。その後、食事会があり、そこで食事をしたのが運のつき、お手伝いをするようになりました。

私はスピーディ問題を担当してきました。スピーディ問題は浪江町の話が端的に示していると思います。馬場町長さんは亡くなりましたが、国会事故調で発言している記録ですとか、秘密保護法の公聴会を福島県でやった時の発言ですね、この時は、今は福島弁護士会会長になられた槇弁護士も呼ばれていて、スピーディのことに触れていました。スピーディの情報をちゃんと公開されていれば、放射能プルームが流れていった津島に避難しなかった取り返しがつかない事実です。

最終準備書面で、私は原告さんの陳述書から、体調の変化をひろっていきました。のう胞が出来たとか30人近くの方が身体の異変を書かれている。陳述書は50ほどで、半分以上の人が訴えています。中でも、311直後の記述に「外で、腕まくりして仕事をしていたら、肌が赤くなった」「口の中に変な味がした」「口内炎のような症状が起きた」とかありました。これは広島長崎の被ばく者の人から聞いた初期被ばく症状です。鼻血問題も改めて証拠追加で出しています。鼻血も沢山の人が指摘している。一方ではあんなものと言われましたが、でもそれは権力者に都合の悪いことだから、火消しみたい騒がれたのだと思います。3月どんな判決がでるかわかりませんが、最後まで闘っていこうと思います。


田辺弁護士 この裁判に集まってくださってありがとうございます。崔弁護士も言っていましたが、弁護士はほっておくと頑張りませんから、また原告さんも本当にシンドイんですよね。



❺報告集会➁・・・弁護団の思い


 https://youtu.be/fb5hKijEHU4


報告集会2

  ・田辺弁護士  国際人権条約から被ばく問題   ・柳原弁護士 一寸先は闇   ・光前弁護団長 間違ったことを糺せない習性   ・柳原弁護士 山下俊一氏はハーグ国際法廷被告人席へ   ・井戸弁護団長 美味しんぼ・鼻血問題のショック 田辺弁護士 理解ある支援者が一緒に歩んでくれるということが、我々を奮い立たせて来るんだと思います。長いこと支えて下さってありがとうございました。そして今後もよろしくお願いいたします。  この裁判は科学論争であり、法律論争でもあります。法律について言えば、井戸先生が学校教育について緻密に分析して下さいました。 僕は、権利とはなにかという大づかみな問題に興味がありまして、国際人権条約に基づいて、被ばくしない権利を論じたのは、これが粗削りかもしれませんが、これが初めてかもしれないと思っています。言いたいことは、海外から日本の20ミリSv政策ってものすごく批判を浴びているんです。1度だけではなく3度も4度もいろんなところで、いろんな場所で批判されているのです。何故なんだという所を弁護士も裁判官もまともに拾い上げてこなかったんですよ。なんでなんだろうと考えると、国際人権条約なんて、国内での権利を主張する根拠になんかならないのだという思い込みがあるんですね。でも、周りから、おかしい、違うと言われていることを裁判官には、ちゃんときちんと考えてほしいと思っています。 国際社会から、健康に対する権利が侵害されていると批判されているのです。健康であることの権利ではないんです。20ミリSvにしてしまうと健康を害するからいけないなんて一言も言わないのです。健康に対する権利が侵害されると批判されているんです。それは、社会権規約に基づいています。社会権規約と聞いた途端、法律家は引いてしまうんです。社会権規約そのままでは、権利の根拠にならないよと法律家は勉強しているんです。それは政府の努力目標で条約という形でお互いに認め合っただけ、おまじないのようなものだと思っている。条約の解釈は各国にあるとされていますが、人権条約機関というものがあって、各国が人権条約を守っているかどうか審査する機関があって、オフィシャルな意見を公表しています。そこで社会権規約についても、基本はそういうものだけれど,いったんできたものを後退させるとか、社会的規約に基づいて一旦実現された制度が、不平等な扱いをされている、差別的な扱いをされている場合は国内の司法はきちんと審査をしていけないよと解釈して公表しているんです。国際条約の解釈が各国にあるからと言って、そこを無視していいのだろうかという指摘は国際法の専門家からでています。そのことを今回勇気をもってまとめてみました。日本人が社会的規約だからと国際社会からの批判に目をつむり、思考停止して権利を無視している状態、これでいいのかと踏み込んでみました。裁判官がどのように判断するのか注目しようと思っています。 もう一つは、科学論争。内部被ばくの問題耐、低線量量被ばくの問題はいろいろな議論ある事はご存知でしょう。長崎広島の被ばく者を対象にしたLSSという調査があるのですが、そういうものでも、低線量被ばくの問題はデータとして見えにくいんだといわれつづけてきました。しかし、2010年代になってから、状況が変わってきました。今回河野先生が、CTの問題で、2本、イギリスとオーストラリアでの研究を指摘してくれました。いずれも10万人単位で、数年間にわたって子どもたちを調査して、CTを余分に受けると余分にガン、白血病にかかる子ども増えるんだというデータが出ています。たくさんのデータを集めることでかすかなリスクでもはっきり見えてきた、そのことがランセットという権威ある雑誌に掲載されました。僕としてはこれで決着がついていると思います。でも悲しいか、この世界ではそれで済まない。この世界は魑魅魍魎が住んでいて、放射線の影響に関して、学者はものすごく慎重なんですよ。ちょとでもリスクがあると述べたら、あっちこっちから石が飛んでくる怖い世界のようです。崎山先生がおっしゃっていました。今回もそのことで国の側から仕掛けられています。腹立たしいのは、浜田さんという方がいるんです。国はその方の論文を引き出してきて、河野先生が指摘してくれた論文を、あそこがいけない、ここがいけないと、いろいろ貶めているんですね。浜田さんはどういう方かと言うと、電力中央研究所の研究者です。電力中央研究所とは、電力会社がお金を出し合った研究所です。いわば電力会社付きの論文メーカーが書いているものです。日本保健物理学会に掲載された論文だそうです。津波の調査について土木学会と政府のやっている地震調査研究推進本部の2本の調査報告がでたのをみなさんも聞いていると思います。学会というのは怖いところで、原発とか、放射能関係の学会となると、必ず原子力ムラの方、事業者の方が入り、純粋にアカデミアではないのです。運営費なんかも電力会社のお金がつっこまれていると聞いています。浜田論文がのった日本保健物理学会もそのような学会だと思います。なんで、ランセットなどの超一流の雑誌に載った論文を否定できるのか、僕はその感覚が分からないのですが。河野先生が証言で、学者が言えば、何でもかんでも同じ価値があるものではない。ちゃんとエビデンスがあって値打があるんだということをわかりやすく指摘されているのですね。 柳原弁護士 今日の僕の感想は、一寸先は闇というものです。実は2011年6月に福島集団疎開という裁判を郡山支部でやって、2013年4月仙台高裁で敗訴しました。事実認定は99%認めてもらえたのですね。福島の子どもたちは危ない、放射線被ばくの危険がある、避難するしかないのではないか等々。だけど、だったら、自分で避難したらいいでしょう。妨害しません、郡山には責任はないというものでした。法律論で負けたんですね。その時、もう頂上は近いのだからと第2次の準備を始めたのですが、原告が集まらなかった。1年半かかって、福島地裁に提訴したのが2014年8月29日でした。そうしたら、裁判長が、門前払いだと言い出し、審議するまでにすったもんだして約2年かかりました。何とかクリアしてここまで来たのです。去年の今頃、鈴木眞一氏を呼ぼうとして、ダメもとで出したら、裁判長が「呼びましょう」となった。それも想定外でした。田辺さん、井戸さんの話を聞いていると、難しい科学論争に入るのも厭わないし、ややこしい法律的論争に入るもの厭わない、つまり、真実の問題にも、正義の問題にもぶつかっていく、とても無謀な弁護団だったなあと思います。 光前弁護団長 この事件をやって来て、何が一番の問題だったかというと、やっぱり、原発事故後、どれだけ放射能が放出したかをきちんと測らなかったことです。だから子どもも大人もどれだけ内部被ばくをしたのかということも分からない、推定推定でやるしかない。それが最大のネックなんだと思うんです。鈴木医師の発言を順々に追っていくと、福島県民健康調査を始めた時、こんなに子ども達に甲状腺がんが発症するなんて予想していなかったようです。彼が書いたものの中にもこの検査は福島県民に安心を与えるためといっている。チェリノブイリの様な子どもの甲状腺がんなんて発症しないことを証明するためだと言っている。ところがあにはからんや、検査を進めるにつれて、どんどんが悪性の子の数が増えていってしまった。この事故について、最初から大したものではないことにするんだとして、被爆量を検査しなかった。第一歩から間違っている、その間違ったことを糺さないということが、この国の政府の在り方で、その象徴が、あの安倍首相の小さなマスクだと思うんです。すごいなあと思うんですが、あのマスク、小さくて足りないですよね、ほかの人言わないのかなあと思うんですが、自分が間違ったと思えば、「もうしわけない、間違っていました」と言って大きなマスクすればいいのに、あれで、病気にでもなったらどうするんだろうと思うんですが、修正しないんですよね。それで、どんどんどんどん深みにはまっていく、国民との意識の大きなズレが 生じているのでしょう。コロナの問題も放射能の問題と同じで、最後は誰かが裁判に訴えて争うということになるんだろうなと思います。 もう一つ、この裁判で印象的なことは、山下さんを法廷に呼んだということです。最初の裁判長の金沢さんが、私たちに「山下さんを呼ぶんでしょう」と言ってくれた。我々も「呼びます」と答えたんですが、我々の常識では、これ決して正しいとはいえないのですが、山下さんは、この事故とは直接関係ないから、呼ぶのは難しいかなという気持ちもありました。しかし裁判所には、山下さんを呼ぶということは頭にあったようなのです。裁判長が、遠藤さんに代わっても、その流れは変わらなかった。それで、実現したのですが、ただ、山下さんを呼ぶことで「ガス抜き」になってはマズイなという気持ちもあった。ああいう人を法廷に呼んで、いろいろ懲らしめて、原告の気持ちを解放といった趣旨で呼ぶこともあるんですね。それで終わったら大変なことになる、まずいなと思って、山下さんの尋問には、かなり神経質になったのですが、今回山下さんの発言は、違法なんだということを法律的にもクリアできたなと思っています。山下さんとの法廷でのやり取りを通して、事故のあと政府の対応がおかしいかったのではないか、山下さんはそのことの象徴的な人物ですから、この裁判を通して、そのことを明らかにできたとではないかと思っています。この問題はコロナの問題と相似形なので、山下さん的な人が出てくるかと思ったのですが、今のところ出てきていないので、政府がどのように情報公開して、私たちはどのように対処したらいよいのかという問題を考えていきたいです。 柳原弁護士 私は、山下俊一氏について、彼の座る場所は、ハーグの国際刑事法廷被告席だと、文科省、官邸前で、叫んできました。山下氏の罪状、責任追及は、この裁判でおしまいではない。またもう一人の俊一、田中俊一氏で、彼の責任もこのままにはしないということで、二人の俊一は私にとって、座右の人物で、取りつかれてしまっています。」 井戸弁護団長 私は2011年3月末に裁判官を退職し、その直前に福島原発事故がおこりましたから、今後、原発訴訟にかかわるとはあるかなという意識はありましたが、まさか被爆の問題をやるとは思っていませんでした。 被ばくに関して、最初にこれはヒドイと思ったのは、20ミリSv問題でした。それ以上に、もっとショックを受けたのは美味しんぼ問題でした。鼻血はデマだという問題、いかに事実を捻じ曲げようとする力が働いているか、いかに闇の世界が向こうに広がっているかということを感じました


❻報告集会➂・・・終わりの挨拶


 https://youtu.be/UwNlBTWkCGs 

報告集会3

 ・井戸弁護団長 弁護士の役割について

 ・水戸子ども脱被ばく裁判共同代表挨拶 広島長崎の被爆と福島の被爆

 ・今野原告団長挨拶 子どもを守るのが大人の責任 

井戸弁護団長 いかに闇の世界井戸弁護団長が向こうに広がっているかということを感じました。被ばくも問題は本当に真剣に取り組まなくてはならない問題だと思いました。福島子ども集団疎開裁判をやって、引き続き子ども脱被ばく裁判をやりました。この裁判、十分な成果があったとは思っていません。この裁判を通して、いろんな情報を提供しているくれる方がいました、私たちがそれらを十分生かすことができなかった、私たちにもっと能力があれば、それらを取り込んで立証できたのではないかと思います。そうはいっても一つの形はみせたのかな、橋頭保はできたかな、あとは、裁判官がどう判断するかです。

この裁判かかかわって感じたことは、とくに不溶性微粒子の問題で、沢山の専門家の人たち、科学者とかお医者さん、沢山の人のお話を聞きました。河野先生、郷地先生は、開き直って積極的で話してくれますが、多くの現役の科学者は、地道に研究をされていて、本当に自分の研究したピンポイントは説明してくれますが、その周りのことには関与したくない、そのことについて反響が大きいからと話そうとはしてくれません。それは科学者の在り方としていいのですが、そういう科学者の方たちと接触して、私たち弁護士は科学者の方たち、それぞれががつかんだの真実をつないでいて、社会的にわかりやすい一つのストリーにまとめ上げて、社会に訴えていく、それが弁護士の仕事なんではないかと思うようになりました。

この裁判どの様なかたちになるとしても、最後までかかわっていこうと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。


子ども脱被ばく裁判共同代表・水戸喜世の中子さんの挨拶

私は311の原発事故があって、それから毎年広島に通うようになりました。被爆のことを私たち、こんなに軽んじてきたと気づき、被爆の原点の広島をもっと学ばなくてはと思ったのです。広島に通うようになって、原爆ぶらぶら病、白血病だけではなく、いろいろな病気にみなさん悩まされてきたんだということがわかりました。たとえば川のそばで、ビラを撒いていると、「こうだったんですよ」と語ってくれます。被爆の恐ろしさを私たち、関西に住む人間でも、無視して生きてきたんだとまざまざと思い至りました。それから福島の被ばくと重ねて考えるようになり、私たち、大人は原発に賛成してきたんだから、少しぐらい何かあっても仕方ないかと思いますが、子どもだけは守らなくてはならないと思いました。子ども疎開裁判にも関心を持ち、いろいろ教えていただきながら学んできました。でも、この裁判最初は門前払いされようとしたんですね。

井戸さんは、年間の線量は0.3ミリSVというのですね。えっ1ミリ㏜ではないと思うのですが、ヨーロッパでは、内部被ばくと外部被ばくを合わせているから、外部被ばくは0.3㏜なんだというんです。裁判所に安全な場所はどこかといわれて、地図の上に土壌のセシウム濃度を落とし、明らかにしていった、膨大な労力で、針の穴を潜り抜けるような努力をして、やっと、訴状にのせることができたんです。私はそれで、私たちの裁判は半分勝ったと思いました。だって、事実を知っているのは私たちなんですから。事実より強いものはないと思います。

もしこの裁判をやらなかったら、何もかも闇に葬られてしまうところだった。子どもたちは、まだ一体何が起こって、どういうことなのか把握しきれてはいません。でも将来、広島、長崎の二世たちのように、福島原発事故について、子どもたち自身が問題にする時がやってきます。そのとき私たち、大人は微力かもしれないけど、ここまでは明らかにしたよということを示すことができたのではないかと思います。まだ本当にわかっていないことはたくさんあると思います。この続きを子ども世代に引き継いでもらえるよう、頑張っていこうと思います。

コロナで言えば、2月末、突然を全国一律で休校にしてしまった。それに対して、20114月福島のお母さんたちは20ミリSV問題で「学校を開校しないで」といいました。でも、無理やり学校は新学期をスタートさせた。放射能なんて何でもないということを示すためだった。今回はコロナ対策をやっているということを見せるためだった。どっちも子どものことなど考えていない。自分らの都合で子どもをダシに使っているんですね。ナノサイズの不溶性微粒子、私はなかなか想像できませんでした。でも今現在、同じくナノサイズコロナウイルスにどう構えなくてはならないか、専門家というたちの言説を疑うこと、政府が緊急時に持ち出すクライシスコミュニケーション、私たちは、緊急事態の時、政府に騙されないようすることを裁判を通して私たちは学びました。

今日久しぶりにしぶりに裁判を傍聴して、本当に素晴らしかったです。弁護士さんたち、本当にわかりやすく説得力のある陳述でした。感動しました。ここに、最終準備書面要旨があります。今日の弁護士さんの陳述をまとめたものです。来年31にの判決の日までに、これを宝の持ち腐れにしないで、小さな集会でもいいから、みんなに広め、生かしていきましょう。


片岡輝美共同代表 裁判の軌跡として、これから、冊子を2冊出版します。一つは意見陳述集2です。前半は、水戸さんがインタビューしてくれた子どもたちの声を掲載し、後半は、法廷で陳述した原告の陳述内容です。もう1冊は、今日の弁護団が出した最終準備書面です。要旨ではなく全文です。皆さん是非、購入ください。


会場からの発言 質問です。今現在福島で生きている子どもたちの問題です。空気中に不溶性の放射性微粒子が浮遊している中で、毎日福島の子どもたちは暮らして育っています。赤ん坊も生まれ育っているのです。こういう環境の中の福島の子どもたちをどうやって守ったらいいのでしょうか。子ども脱被ばく裁判が終わったら、終わりにはならないです。福島で生きる子どもたちが浮遊性のセシウム微粒子を吸わないくてもいい方策につないでいくことはできないのでしょうか。


片岡代表 ありがとうございます。問題提起として、もちろん裁判がすべて問題が解決するというわけではありません。今の発言はあまりにも大きな問題で、今は誰も簡単に答えられないと思います。でも、皆さんもこの問題は頭の中にあって、皆さんが考えなくてはならないテーマです。皆さん、考えていきましょう。


今野原告団団長 涙がでそうです。皆さんがいたから、ここまで来られた、ありがとうございます。。みんながんばっていきましょう。子どもを守るために。私たちができることをやっていくことが大人たちの責任です。本当に子どもたちを守りたい、その一心ですね。裁判に寄せ書きの色紙が届けられました。避難者の方も2人、書いてくれているそうです。尼崎と明石に避難された方だそうです。IWJさんが全国に配信してくれました。今の時代に合った報告集会になったと思います。31日の判決までに8か月あります。それまでに関西と東京で、裁判判決に向けて報告集会が予定されています。その節はお近くの方はぜひご参加ください。コロナも終息して、31日勝利の美酒の祝杯をあげたいと思います。皆さんよろしくお願いいたします。

2020年8月9日日曜日

2020年8月8日 脱被ばく実現ネット 新宿アルタ前街頭行動

耐えがたい暑さの中での街頭行動でしたが、メンバーやゲストスピーカーのNさん、Tさんが原発事故後の国の政策は、放射能被害を拡大させるばかりであり、被害者への人権侵害は犯罪レベルであることを舌鋒鋭く道行く人々に訴えました。

メンバーのTさんは「黒い雨訴訟」で原告が勝利したことを受け、ヒロシマの悲劇に言及しました。昭和天皇が天皇制維持のために、ポツダム宣言を受け入れず、原爆とソ連参戦によって百万人の尊い命が喪われたーーー日本人すべてが再認識すべき昭和史の真実を渾身の力で訴えました。


今日の街頭行動は映像でyoutubeで広く拡散したかったです。残念な気持ちで一杯です。









2020年8月4日火曜日

子ども脱被ばく裁判 第5弾 裁判動画視聴感想 

関東から関西に避難した下澤さんからIWJの裁判の学習会、報告会を見た感想をいただきました。下澤さん、ありがとうございます。

728日、子ども脱被ばく裁判第27回(結審)が、福島市にて、行われました。
地裁での法廷と並行して、学習会が開かれました。
学習会の内容はとても興味深いもので、ぜひ聞きたいと思っていたところに、IWJによるツイキャス配信があったのを知り、
学習会、報告集会ともに、すべて聴かせていただきました!
学習会のプログラムは以下です。
学習会「内部被ばくの危険性〜最新情報を語る」
講演1「大気中を漂う放射性物質」河野益近氏
講演2「ちくりん舎の活動から見えて来た放射能ばらまきの実態」青木一政 
裁判での重要な争点になった不溶解性微粒子の問題、私には、我がこと、そのものでした。
6年前、私たちは、まさに、「空気」から逃げてきたからです。放射能汚染のある土地を離れると、どんどん元気になるのに、戻ると再びぐったりとする我が子。
一体何を吸っていたのか。
多くの人が吸い続けているそれは、私たちの体にとって脅威ではないのか。
ずっとずっと、頭を離れない問い、です。
「放射性物質と言うのは、事故が起きたときだけ大気中を漂っているのではない。ばらまかれて、地面に沈着しそれが再び舞い上がり(再浮遊)空気中に漂い続けているそれは、呼吸により取り込む可能性がある。時間とともに減るだろうが、その危険性は今も、常にある。
河野さんが1番最初に話されたのはこの、結論でした。
そして、測定されたこれらの放射性物質は、微粒子の形で存在し、その9割以上が不溶性、なのだそうです。
吸い込み、肺に直接入ると、それは出て行くことがありません。
この、日本で起きた原発事故の後の被曝の問題の、重大な事実が、ここにあると思います。けれど多くの人は知りません。
吸い込めば、確実に内部被曝をするということ。土壌汚染があるという事は、そういうこと。311の時、東日本にいた人、またその後住んだことのある人は、例外なく。
何が起きるのか、は、誰も知らない。
河野さんが
「それが分かるのは30年後?か。多分ほとんどの人が大丈夫なんだろう、しかし、確率的に、確実に、犠牲となる人がいる」
という言い方をされていたけれど、私は違うと思う。
それは、明日の、まさに正確な意味での明日の自分の健康の問題だと、健康被害にあった私は思う。我が身と我が子の血液検査を続けてきた私は、首都圏の人たちの血液の状態を知る私は、ホルモンの異常を知る私は、そう、思うのです。
そしてそれは確率の問題ではないと。当たらなければ健康、大丈夫、という問題ではないと強く感じるのです。
さて、この現実、この脅威を前に、この国がやっている事はなんでしょう?
それは、放射性物質の「ザ・ばらまき」です。
2部で、ちくりん舎の青木さんは、そのばらまきの1つである、焼却の問題、特に、飯舘村で始まろうとしている木質バイオマス発電の問題について、をメインに話されていました。
「今まで、除染廃棄物が、仮説焼却炉で燃やされてきた。これは問題。しかし、今から始まること、それは福島の森林、除染されずそのまま残っているもの、それを切って燃やす、ということです。
驚きます。
最後にご紹介する青木さんの資料にありますが、飯舘村が福島県中から集めて、1300トン燃やすと宣言しているそれは、バーク(木の皮)と呼ばれる、非常に高濃度に汚染されているものです。
平均して40005000ベクレル/kg
最大で60,000 ベクレル/kg
というようなもの、なんだそうです。
「飯舘村、だけではなく全国で大きなバイオマス発電所が立っている。そういうところへどんどん流れていく可能性がある。
放射能は、そこへ置いておくしか、減衰するのを待つしかないものなのだ。
しかし、燃やすことでばらまき、微小粒子として周囲に再拡散させる、しかも燃え残りの濃くなったものを一般ゴミで流す、そしてまた焼却、または再利用していく。
なぜ?どうして?こんなことを?
誰でも思う。
それはね。
儲かるからなんです。
このことには、いろいろな省庁が絡んでいるそうです。
まず、ここにお金が降りるんです。
福島再生加速化交付金、ていうの。こんなのあるんですね。
復興省は、人の生活や健康でなく、産業振興を、「復興」または再生、と呼ぶのです。だから、ここに予算をつけるんですね。
住民合意など知ったことでない、事業者任せの経産省。
除染廃棄物をいかに減らすか、が史上命題、隔離、保管ではなく、いかに薄めてばらまくか、に邁進する環境省。
福島県林業の関係者、焼却炉メーカー、ゼネコンメーカー、産廃業者。
その他、多数の事業者、これらのものをいかに儲けさせるか、で、動くのです。
バイオマス?再エネ、環境保護、なんて建前。
目先の利益が第一優先なのです。
人間の健康は二の次なのです。
木質バイオマス発電で、燃料、設備、環境、廃棄物等の放射能規制は基本的にゼロだそうです。つまり上限がないのです。
利益は全てに優先する‼️
儲かるから回す、燃やす、ばらまく。
お金がかからないから、流す(海に)
すごいです、さすが新自由主義の国ですね、て、とち狂ってますね。
今回のコロナとおんなじですね、いつまでも続くアベノマスクだって、GoToキャンペーンだって、そういうこと。
この国は、たがが外れてしまっているんです。
私はそう思います。
以上、今起きていることを知りたくて、少しでも共有したくて、書き出してみました。
詳しくは、どうぞ、はじめにリンクしたIWJの動画を見てみてください。(1番上の長い動画です)
ちくりん舎青木さんの報告資料、リンク貼りが上手くいかないのでコメント欄に貼りました。ぜひ参考にされてみてください!
投稿とともにあげた画像は、これを一部紹介したものです。

子ども脱被ばく裁判 第4弾 一枝通信より

作家の渡辺一枝さんから裁判の報告を送っていただきました。
一枝さん、ありがとうございます。

*****

一枝通信 「子ども脱被ばく裁判」結審 報告

 6月の福島行の報告が①のみで、まだ続きの②がお届けできずにいますが、728日に福島地裁で開かれた「子ども脱被ばく裁判」第27回口頭弁論の傍聴報告を先にします。
コロナの影響で傍聴席も制限されていましたが、幸い法廷内で傍聴することができました。私は傍聴抽選に外れたのですが、友人が譲って下さったのです。深謝!

◎子ども脱被ばく裁判 結審
●この裁判は
 原発事故後、福島で子育てをする親たちは、「子どもたちに被ばくの心配のない環境で教育を受ける権利が保障されていることの確認」(子ども人権裁判)をそれぞれが居住する自治体に求めるとともに、事故後、県外に避難した人たちとも力をあわせて、国と福島県に対して「原発事故後、子どもたちに被ばくを避ける措置を怠り、無用な被ばくをさせた責任」(親子裁判)を追求するために、2014829日福島地裁に行政訴訟および国家賠償請求事件として提訴し、この2件を併せて「子ども脱被ばく裁判」として闘ってきました。
 この日が結審で、原告代表の今野寿美雄さんの最終意見陳述と原告代理人弁護士らが最終意見を陳述しました。
今野さんは、たった3分という短い制約時間の中で原告の思いをきっちりと述べ、傍聴席で聴きながら、原告の子どもたち、そのお父さんお母さんが過ごしてきたあの日からを想いました。

●最終意見陳述 原告代表:今野寿美雄
 原告を代表して、最終の意見を述べさせていただきます。
 6年の長きに渡り審議が続いてきましたが、この裁判を通して不溶性の放射性微粒子の存在及びこの物質による内部被ばくの危険性が解ってきました。これは、当裁判や他の訴訟においても原告側の主張を裏付ける確固たる証拠であり、非常に重要なポイントだと思います。また、事故時から現在に至るまでの行政の間違った対応や「ニコニコ安全論」等により、無用な被ばくを受けることになりました。更に、福島県民だけが年間20ミリシーベルトの被ばくを受忍させられています。到底許されるものではありません。

 9年以上が過ぎた今でも、多くの親達が子ども達の健康に不安を抱いています。子どもを心配することは親として当然の行為です。
 9年以上が過ぎたからと言って、原発事故は終わったわけではありません。今尚、大量の汚染水を産み出し、放射性物質を大気へ海へと放出を続けています。原発事故は、今も続いていることを忘れてはいけません。原子力緊急事態宣言発令中です。 
 県民健康調査検討委員会では、今年3月末の集計で公表された小児甲状腺がんの患者
の数が、確定及び疑いのある者を合わせて240名になっています。また、この数に含まれない患者の存在も当裁判を通して明らかになりました。患者本人及び親、家族達の痛切な思いが察しられます。甲状腺検査でB判定と診断された子ども達が多数います。
子どもを被ばくから護れなかった親達の無念の声があがっています。
 子ども達は、子ども達で子ども達を護ることはできません。子どもたちを護ることができるのは、私達大人達しかいないのです。子どもを護ることは、私達大人の責任です。
それは私達に課せられた義務です。
 被告及び被告代理人の方々に申し上げます。皆さまにも子どもや孫達がいると思います。私達人間はそんなに賢くないと思うので、また同じような間違いを起こすと思います。ですから、皆さまは今回の事故について、国や行政の過ちを小さく見せようとするのでなく。将来を見据えた反省を、私達原告と共に被告の立場を越えて、親として大人として子どもたちを護っていく為に、どうしたら良いかを考えて行動していかなければなりません。それが、大人達の責任であり。義務であると思っています。

 子どもは未来からの贈り物です。かけがえのない宝物です。子どもの健やかなる成長が親の願いです。子ども達には、安全で安心な環境で教育を受ける権利があります。行政はこの権利を護らなければなりません。
 私達原告は、子ども達を護りたい一心で立ち上がりました。当法廷に出席できない親子の声を預かり、原告を代表しまして最後の意見陳述をさせていただき、ありがとうございました。裁判官の皆さまにおかれましては、原告の思いを受け止めていただき、子ども達に安全安心な環境と未来を提供できるような判決を出していただくことを切にお願いいたします。ご静聴、ありがとうございました。以上です。

原告ら最終準備書面要旨 原告代理人弁護士
 原告代理人の弁護士はこの日に向けて400ページにもなんなんとする準備書面を裁判所に提出していました。
その準備書面で述べられた内容を、法廷で述べる時間はわずか30分しかありません。
弁護団の各弁護士は述べる部分をそれぞれ担当して、その要旨を非常に簡潔に陳述されました。
以下に記しますが、私の聞き間違いや理解に誤りがあるかもしれません。
この日に読み上げられた弁護団の総力を挙げた最終準備書面要旨は、「子ども脱被ばく裁判 弁護団のページ」にアップされていますので、ご覧頂きたく思います。
上に記した今野さんの最終意見陳述と、この最終準備書面要旨はいずれブックレットにして発行される予定です。
また既に『子ども脱被ばく裁判 意見陳述集1』がママレポ・ブックレットとして「子ども脱被ばく裁判の会」から発行されていますが、『意見陳述集2』も発行される予定です。
発行された折にはまたおしらせしますので、是非お手に取って下さるようお願いします。

●井戸謙一弁護団長
 子ども達には安全な環境で教育を受ける権利があり、「教育基本法」「学校保健安全法」
で、子ども達の安全を義務付けて、その基準として「学校環境衛生基準」がある。
この「学校環境衛生基準」では様々な環境汚染物質についての規制があるが、放射性物質についての基準がない。
原子力基本法の中では放射性物質についての規制はあったが、通常の生活環境下に放射性物質が放出されることなど想定してなかったから、一般的な環境下の「環境基本法」では、放射性物質は規制の対象にはなっていなかった。
しかし、福島原発事故後に環境基本法の中に放射性物質も規制物質として組み込まれたので、その環境基準を決めなければならないのに、未だに基準は作られていない。
行政は放射性物質について学校環境衛生基準を想定し、子ども達を護らなければならないはずだった。
 放射性物質は健康影響に対する閾値がないが、閾値がない物質の生涯リスクレベルは「10のマイナス5乗」という考え方が定められている。
これは生涯その物質に晒された場合の健康リスクが、10万人に1人ということで、国際基準でありWHOも諸外国も同じだ。
 これをICRPの考えに従って放射性物質に適用すると、1mSvの被ばくでがん死のリスクが0,005%増加するから、10万人に1人となる生涯線量は、200μSvとなり、寿命を70年とすれば年間2,9μSvだ。 
学校設置者は、子ども達に対し2,9μSvを基準に安全確保をしなければならない。
●古川健三弁護士
 原告らが主張するのは、情報を公開して住民の避難と防護を図るべきだったということだ。
継続的に爆発が起き、ベントによる放射性物質の放出も行われた状況下では、住民の被ばくを最小限に抑えるために情報公開は必須だった。
 原発事故当時SPEEDIの有用性は高く評価され、信頼性は具体的に検証されていた。
被告国は、315日からの風向きの変化を例に挙げてSPEEDIは信頼性に乏しく情報公開は混乱を招くと主張するが、しかし日本気象学会は、風向きの変化も考慮して避難のタイミングを知らせるべきだったと提言している。
 情報公開すべきだったことは、浪江町の悲劇を見れば明らかだ。
浪江町はSPEEDIの情報を知らされないまま、放射能が非常に高い津島地区に3日間も避難していた。
情報の隠蔽が、原告らに無用な被ばくをもたらした。
●井戸謙一弁護士
 原発事故前には、小児甲状腺等価線量100mSvで安定ヨウ素剤投与と定められていたが、1999年にWHOは、成人では100mSvを維持するが18歳未満は10mSvと、ガイドラインを切り下げて策定した。
ベルギーはこれに従って10mSvに、アメリカ、ドイツ、オーストラリアは50mSvに切り下げ、イギリス、フランスもそれに続いた。
 日本では「原子力安全委員会」が「原子力施設等防災専門部会」に「ヨウ素剤検討会」を設置し、座長に山下俊一氏が就いた。
その「ヨウ素剤検討会」では、小児と成人を分けるべきではないと結論した。
 WHOも山下氏もヨウ素剤副服用で甲状腺がんを回避できるベネフィットについてはほぼ同じ数値を採用したが、服用による副作用のリスクに対して大きく異なった。
WHOはチェルノブイリ事故後のポーランドで1000万人の子供がヨウ素剤を服用して副作用が生じなかったことから、1000万分の1を採用した。
これに対して山下氏は、ポーランドで生じた成人のリスク数値「1万分の6」を採用したが、これはWHO6000倍に当たる。
山下氏は、成人の基準を子供に当てはめて、100mSvをヨウ素剤服用の基準とした。
●田辺保雄弁護士
 被告らが学校を再開したことにより、子ども達は無用な被ばくを余儀なくされた。
 県は文科省による学校再開基準の設定を待たずに、避難指示・屋内退避支持区域以外は始業日を48日と通知し、学校が再開されることとなった。
また315日は県下でも空間線量の急上昇が認められたにもかかわらず、中通り及び会津では316日に、浜通りでは22日に県立高校の合格発表を屋外で行った。
 また国が419日通知によって、校舎・校庭等の利用について年20mSvまでの被ばくを容認したのも違法である。
文科省は47日に原子力安全委員会に学校再開の基準について助言を求めたが、原子力安全委員会は判断は文科省が示すべきであり、公衆の被ばく線量限度は年1mSvであると回答した。
 2日後の49日、文科省から419日通知の叩き台を示された原子力安全委員会は、内部被曝についての情報が不足している中で何らかの安全係数をかけるべきとのコメントを出した、
しかし文科省はこのコメントを無視し、内部被ばくの影響は少ないとして空間線量だけで判断をして、原子力安全委員会から「差し支えない」の回答を引き出した。
文科省は49日に419日通知の叩き台を示した後、19日までの10日間何の叩き台も示さず、原子力安全委員会に対してお墨付きを求めただけといえる。
 被告らが避難指示区域を除き、子ども達を避難させなかったことは違法である。
315日から県内の空間線量は跳ね上がったのだから、被告国及び県は、子ども達を速やかに避難させるべきだった。
●柳原敏夫弁護士
 山下俊一氏の発言内容の違法について述べる。
 佐藤雄平県知事は山下氏を放射線管理アドバイザーとして迎え、県の現状は危険ではないとの啓蒙と宣伝を依頼した。
山下氏は県の意向に沿って、クライシスコミュニケーションの名の下、放射線の健康被害に関する科学的知見に著しく反した放射能安全論を振りまき、原告ら県民に無法な被ばくをさせた。
また、県民の被害感情を理解しない軽率な発言をしばしば繰り返し、原発被害者の尊厳や心情を著しく傷つけた。
県はこれらの言動を放任したばかりか、5月には県民健康調査委員会の座長に据え、正しい救済を求める県民の感情を逆撫でした。
 山下氏の科学的知見に著しく反した放射能安全論に対し、被告県は「山下氏の講演全体を見れば、その内容が国際的に合意されている科学的知見に基づき放射線防護にかかる基準に沿ったものなのに、原告らは山下氏の発言の一部分のみを捉えて反論する」と言うが、聞き手の一般市民が山下発言をどう聞き、受け取ったかが問題である。
山下氏の個々の発言の中に一つでも「不合理な発言」を聞けば、そこから放射線健康リスクについて「不合理な結論」を引き出し、「すっかり安心」して、それまで抱いていた放射線に対する警戒心を解いてしまう恐れがあったことが問題なのだ。
 山下発言は、県民一人一人が被ばく問題について適切な判断をするために、県民に放射線に対する正しい知識を伝えるという放射線健康リスク管理アドバイザーの本来の目的から著しく逸脱し、科学的知見を無視した安全論を振りまき、福島県民とりわけ子ども達に無用な被ばくを強いたもので、その違法性は重大である。
●井戸弁護士
 内部被ばくは、身体が均等に被ばくする外部被曝とは全く異なる危険がある。
被告国は、被ばく線量が同じであれば外部被ばくも内部被ばくも健康リスクは同じだと主張するが、それは明らかに間違いだ。
内部被ばくの中でも最も深刻なのが、不溶性微粒子による内部被ばくである。
 福島原発事故前は、原発から放出される放射性セシウムは水溶性で、体内に入れば血液や体液に溶けて、数十日の半減期で体外に排出されると考えられており、ICRPの放射性セシウムの預託実効線量も、その前提で作られていた。
 ところが原発事故で放出された放射性セシウムの3割から4割が、不溶性微粒子であることが判った。
また、水溶性の放射性セシウムは土壌に付着すると土壌粒子に取り込まれて、不溶性になってしまうことが確認された。
その結果、現在の福島県内の土壌中の放射性セシウムは、98%以上が不溶性である。
 不溶性微粒子及びセシウムを取り込んだ土壌粒子は、風、自動車の通行、土建作業、山火事によって空気中に再浮遊する。
福島で生活していれば、呼吸とともにこれらを体内に取り込む危険性が高い。
 数ミクロン以下の粒子は肺まで侵入する危険性が高く、肺に付着した不溶性の粒子は
容易に排出されず、生物的半減期は数十年に及ぶだろうという研究報告もある。
 セシウム含有不溶性放射性微粒子は、従来の内部被ばくリスクモデルを適用できず、リスクは未知数である。
福島原発事故発生初期に、子ども達に福島の大気を吸わせ多量の被ばくをさせてしまった親達の不安は図り知れない。
現在でも福島県内外で生活する子ども達にセシウム含有不溶性放射性微粒子のリスクは知らされておらず、子ども達は無防備に生活している。
このことは安全な環境下での教育を求める行政訴訟にも関連する問題である。
コロナではマスクをしない人が自粛警察によって攻撃されるが、福島ではマスクをすると、風評被害を煽ると攻撃されたのである。
●柳原敏夫弁護士
 原告らの不安には根拠がある。
福島県民健康調査の二次検査で「経過観察」とされた子どもから、その後甲状腺がんが発見されても、被告県はその症例数を公表せず隠蔽している。
経過観察中に発症した症例数を明らかにしないのは、隠したい事情があるかと思わせるものである。
 山下俊一氏は原発事故前に「ポーランドは安定ヨウ素剤を素早く飲ませたので、小児甲状腺がんはゼロ」と言った。
日本でもポーランドの教訓を生かして事故直後に素早く安定ヨウ素剤を飲ませていれば、小児甲状腺がんの発症はゼロになった可能性がある。
しかし現実には6年間の累計で公表されているだけでも、272人に達した。
100万人に1人」と言っていたのに、100万人に119人だ。
 チェルノブイリ事故当時も、小児甲状腺がん多発の発症原因について「スクリーニングの効果」「原発事故が原因にしては潜伏期間が短すぎる」などと異論が出されたものの、最終的にチェルノブイリ原発事故の「被ばくの影響」と認められた。
チェルノブイリの経験に真摯に学べば、小児甲状腺がん多発の原因を、原発事故の被ばくの影響と考えて対策を立てるべきであり、チェルノブイリの教訓を無視するのは、非科学的であり、非論理的である。
チェルノブイリで認められた「小児甲状腺がんは被ばくの影響による」ことを最有力の仮説とする前提で、事故後に安定ヨウ素剤を服用させ、その後も無用な被ばくを避けるためのあらゆる措置を講ずるべきだった。
●光前幸一弁護団長
*行政訴訟
 憲法26条は、子ども達が安全に教育を受ける権利を持つことを宣言している。
 現在の教育制度は、放射線以外の危険物に対しては極めて厳格な安全規制を課しているが、放射線被ばくについては規制がないまま放置されている。
 リスクの評価・管理は様々な観点から検討されねばならないが、放射能については軍事力・経済力という観点が重視され、放射線被ばくリスクは軽んじられる。
本件で求められているリスク評価は、子ども達が均しく安全な教育を受ける権利との関係を問うている。
 裁判所には、子ども達が安全な環境で教育を受ける権利という観点からのリスク評価によって、憲法や教育基本法が定める子どもの学習権を保証する上であるべき姿を示し、日本の司法が健在であることを示していただきたい。
*国家賠償請求
 この請求は、被告国や福島県の住民への危険情報提供のあり方、危急時における為政者と為政者に身の安全を託している市民とのリスクコミュニケーションのあり方を問うものである。
民主国家においては、被害住民は身の安全の全てを為政者に託し依存しているわけではなく、為政者も都合の良い情報だけを提供し市民を思うままにコントロールできる関係にあるわけではない。
ところが被告国や県は、原発の安全性に対する執着から正常な情報を被害住民に提供せず安心情報をばら撒き、無用な被ばくを回避する機会を失わせた。
この特権的で無責任な秘密体質は、無反省なまま今も、あらゆる場面で隠微に継続している。
 原告らは単に被害の賠償を求めているのではない。
民主国家における被害住民として、危急時でも適正な情報を受け、主体的に被害の回避を図る権利、被害者としての尊厳の確認を求めているのであり、それは毎回の弁論期日
で、原告が涙をこらえながら一様に訴えていたことである。
 低線量の放射線被ばく被害は未解明な部分が多く、それだけに不安は募り、子どもに無用な被ばくをさせたことに対する保護者の自責の念は強い。
裁判所はこの点に十分配慮され、被告国や県の過失判断、原告らの損害認定をされることを切に期待する。
●判決日時
 原告代理人弁護団の陳述が終わって、裁判長から判決の日時が告げられました。
「子ども脱被ばく裁判」の判決は、2021年3月1日に言い渡されます。
手帳にしっかりと記し、裁判所を後にしました。

●閉廷後
 裁判と並行してアオウゼを会場にして学習会、「内部被曝の危険性〜最新情報を語る」が開かれていました。
河野益近氏の「大気中を漂う放射性物質」、青木一政氏の「ちくりん舎の活動から見えてきた放射能ばらまきの実態」の講演でした。
 学習会後、裁判に関しての記者会見と報告会が開かれました。
裁判で原告の今野さんや弁護士の先生方の発言にあったように、この裁判で「不溶性の放射性微粒子」の存在が明らかにされたことは、とても大きな意義を持っています。
この裁判で明らかになったこの点は、他の裁判にも大きな影響を与えます。
 判決が3月1日。
これは私見ですが、意味深い日程だと思えます。
年度内のギリギリの3月であり、1日はBikini Day です。
1954年ビキニ環礁で第五福竜丸が死の灰を浴びた日を記念して設けられた原水爆禁止
運動の日です。
もしかしたら裁判長は、今後の自身の進退がかかる年度末ギリギリの、しかも記念すべきこの日に判決を下すというのは、相当の覚悟を持ってのことではないかと思うのです。
予断は禁物だとは思いながらも、期する思いがあります。         一枝