皆様
12月14日(土)、恒例の新宿アルタ前街頭宣伝を行いました。
寒い中、ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
今回の街頭宣伝には先日最高裁から上告を棄却された「子ども脱被ばく裁判」弁護団の柳原弁護士も参加され、怒りをこめて、「最高裁は子どもたちに謝罪すべきだ」と発言されました。(全文掲載)
★新宿アルタ前 街頭宣伝★
~「東海第二原発いらない一斉行動」第14弾に参加~
日時:12月14日(土)14:00~15:00
主催:脱被ばく実現ネット
「老朽被災原発」東海第二原発動かすな!
日本原電の防潮堤欠陥工事隠蔽を許すな
事故が起これば首都圏は壊滅
避難は不可能
危険すぎる東海第二原発は即廃炉に!
能登半島地震の教訓受け取れ!
フクイチ事故は進行中!
放射能汚染水の海洋放出やめよ!
日本政府は被ばくを強要するな!被害者を切り捨てるな!
子どもを被ばくから守ろう!
“子ども脱被ばく裁判”“311子ども甲状腺がん裁判”にご支援を
*子ども脱被ばく裁判弁護団 柳原敏夫弁護士の発言
2024年12月14日
最高裁は子どもたちに謝罪すべきだ
柳原敏夫(子ども脱被ばく裁判の弁護団)
最高裁判所は、先月11月29日、いわゆる「子ども脱被ばく裁判」の上告の申立に対し、これを退ける決定を出しました。
子ども脱被ばく裁判は、福島原発事故当時福島県内で居住していた親子が原告になって、被告国及び被告福島県に対し、被告らが福島原発事故直後に、子どもたちを被ばくから防護するためのまともな対策を取らなかったこと、すなわちSPEEDI等の被ばくに関する情報を隠蔽したこと、子どもたちに安定ヨウ素剤を服用させなかったこと、一般公衆の被ばく限度として定められている年1mSvの20倍である年20mSvを基準として学校を再開し、そして子どもたちを集団疎開させなかったこと、長崎大学の山下俊一氏を使って根拠のない安全宣伝を繰り返したこと等の違法な行為によって、福島県の親と子どもたちは、自分たちが放射能の被ばくをどの程度まで受け入れ、或いは受け入れないのかについての自分で決定するという自己決定権を奪われ、その結果、子どもたちは、本来なら避けることができた無用な被ばくを強いられた、その責任を問う、2014年8月、福島地方裁判所に提訴された訴訟です。
13年前の福島原発事故当時、被災地の多くの人たちは被ばく問題についてほとんど知識がありませんでした。ベクレルもシーベルトもわからず、被ばくの危険性も分からず、自分たちの生活環境がどの程度汚染されているかの情報もありませんでした。その中で、子どもたちの命、健康を福島原発事故から守るためには、被ばくについての正確な情報、被ばくの危険性についての偏らない知識が不可欠でした。しかし、この本当に必要な、本当に切実な情報は国と福島県によって隠蔽され、偏った安全宣伝が繰り返されたのです。これによって、子どもたちに無用な被ばくをさせてしまったと悔やんでいる多くの人たちがおり、その後、甲状腺がんに罹患した若者を含め、体調不良に悩む人々は少なくありません。このことに対する国や福島県の責任を明らかにしない限り、福島原発事故によって無用な被ばくによって苦しんでいる人たちの救済が果たされないばかりか、将来の原発事故の際にもまた同じ悲劇が繰り返されることになる、そのような切実な思いで提起された訴訟でした。
提訴の翌年2015年2月、裁判をどのように審理するかを協議する第1回目の進行協議の会議が行なわれ、国や福島県の大勢の代理人によりすし詰めとなった会議場に参加した原告の井戸謙一弁護団長は次のように報告をしました。
「圧倒的な数の被告代理人らをみて、被告らが、この裁判には絶対に負けるわけにはいかないと考えていることを感じました。他方、裁判所は、この裁判が社会的にも強い関心を持たれる重要な裁判であること、科学論争が予想され、難しい裁判になるとの認識を言葉の端々で示されました。
長期低線量被曝、内部被ばくの危険性を無視して、これによって健康被害が生じてもうやむやにしてしまうという政策は、そのまま原発再稼働、核兵器所有に結びついています。その政策のために、ふくしまの子どもたちが犠牲にされているのです。長期低線量被曝、内部被ばくの危険性を正面から問う裁判は、日本全国を見渡しても、この裁判しかありません。負けるわけにはいかないとの被告代理人らの姿勢、重大な裁判であるとの裁判所の認識に触れ、改めて、この裁判の重要性を感じるとともに、原告こそ負けるわけにはいかないのだと思いを強くしました。」
すなわち、この裁判こそ311の福島原発事故後の日本社会をどう建て直すのかという再建の道筋を左右する、最も重要な人権裁判であると。この思いを胸に、原告らは10年間、被告の責任を明らかにしてきました。これに対し、2021年3月1日の福島地裁判決、そして2023年12月18日仙台高裁判決は私たちの主張をことごとく退けました。しかし、そこにはきちんとした理由付けが何もありませんでした。そこで、原告らは、最高裁に上告し、今年3月、私たちがこの10年間取り組んできた主張と証拠を詳細に主張する上告理由書を提出し、最高裁に、高裁判決と上告理由書の一体どちらの理由が正当であるのか、その判断を最高裁に仰ぎました。
ところが、最高裁は、それから1年もしないうちに早々と、今回の決定で、原告らの主張は認められないとだけ述べて、内容には全く踏み込まず、4行と2行の判決文で、文字通り三行半で原告らの申立てを退けました。最高裁はこれまで、重要な人権の裁判については、その結論が市民の主張を退ける時でも、最低限、その退ける理由は自ら具体的な判断を示して来ました。有名な1967年の朝日訴訟最高裁判決。これは原告の朝日茂さんの死亡により訴訟は終了したと原告の訴えを退けましたが、しかし、それに続いて、「念のため」と断って、25頁にもわたって、最高裁の考えを示しました。昨年6月17日の福島原発事故に対する国の責任を否定した最高裁判決すらもその理由を明らかにしました。
なぜか。それは「理由を示す」こと、それが司法が他の立法や行政とちがうところだからです。なんで今の国家に、立法や行政のほかにわざわざ司法があるのか。それは国が結論を下すときに必ずその結論の証明をすることが求められるからです。司法というのは、理由を示してなんぼの世界なんです。その司法が理由を示さなかったらどうなるのか。司法の自殺です。司法自身が人権侵害のゴミ屋敷です。
今申し上げたように、子ども脱被ばく裁判は福島原発事故後の日本社会の再建の道筋を左右する、最も重要な人権裁判です。しかし、このような重要な裁判に対し、最高裁は「理由を示してなんぼの世界」という存在意義を自ら否定して、具体的な判断を一言も示さなかったのです。
これを子どもが聞いたらどう思うでしょうか。子ども脱被ばく裁判の主役は子どもだからです。したがって、最高裁は子どもにも分かる言葉で、自分が下した判決の理由を示す必要がありました。しかし、たった4行や2行の言葉で、原告の子どもたちが数万行を使って求めていた問題に対する応答が出来るでしょうか。できるはずがありません。最高裁は、このことだけでも、子ども脱被ばく裁判の原告の子どもたちに謝るべきです。そればかりか、子ども脱被ばく裁判の原告の子どもたちは福島原発事故で被ばくした全ての子どもたちを代表して提訴した人たちです。だから、最高裁は、自分の三行半の判決に対し、福島原発事故で被ばくした全ての子どもたちに向かって謝るべきです。それをしない限り、みずから司法の自殺行為に出た最高裁は永遠に立ち直れないと思うのです。
そして、これは子どもたちの問題だけではありません。今回の判決によって最高裁は人権侵害のゴミ屋敷の中で自死してしまいました。そのために大変な被害を被ったのは福島原発事故の沢山の被害者ばかりではなく、裁判所を「人権の最後の砦」とみなしてつきあってきた私たちひとりひとりの市民です。
今回の判決が教えることは、私たち市民は私たちの人権がゴミ屋敷の中に打ち捨てられているとき、これを救済する大切な砦を失ったということです。
最高裁の上には裁判所はありません。しかし、最高裁の上には主権者である私たち市民がそびえているのです。市民が、日本社会を人権侵害のゴミ屋敷にして平然としている最高裁に「それはおかしい」という声を上げること、それによって、人権侵害のゴミ屋敷社会から復興できるのです。それは一気には実現できないでしょう。だが、あきらめずに一歩一歩前に進む中で、必ず実現できます。今日はその最初の一歩の呼びかけをさせて頂きました。共に頑張りましょう。
以上
【アピール】
ご通行中のみなさん、私たちは子どもを被ばくから守ろう、と活動している市民グループ、 脱被ばく実現ネットです。
みなさんこの首都圏に東海第二原発という原発があるのをご存じでしょうか。東海第二原発はここから110km余りの茨城県東海村にある原発です。この原発は13年前の東日本大震災のときに運転が止まり、それ以来動いていません。しかしこの原発を持っている日本原電という会社は、再稼働に必要な工事を進め、再び動かそうとしています。
福島原発事故があった2011年3月11日、この東海第二原発にも津波が押し寄せ、 原子炉を津波から守る防護壁の高さ(6.11m)まであと71cmの高さ (5.4m)の津波が来ました。その時、非常時に使う発電装置1台が使えなくなり、大事故になる一歩手前でした。そして今、この東海第二原発では原子炉を津波から守る防潮堤の工事に重大な欠陥があることが明らかになりました。それは防潮堤の鉄筋コンクリートの一部で、コンクリートがしっかり打ち込まれていない、鉄筋が変形している、基礎が地下の岩盤部分まで届いていない、というものです。この欠陥工事は、去年10月に工事関係者の内部告発によってはじめて明るみ出ましたが、日本原電は3月の段階で施工不良がわかっていたのに7か月間も隠蔽していたのです。日本原電は福井県の敦賀原発2号機も持っていますが、その審査の際に地質データを改ざんし、原発の下に活断層がないように見せようとしたとんでもない会社です。日本原電は今年9月に安全対策工事を完了する予定でしたが、今回の欠陥工事がわかったために、工事期間を2年余り延長し2026年12月に完了する予定で工事を進めると言っています。しかしいくら工期を延長したところで、東海第二原発が安全になるわけではないのです。
東海第二原発は運転開始から45年も経っており、燃えやすいケーブルが大量に使われていて火災を起こす危険があります。そして日本は地震頻発国です。世界で起こるマグニチュード6以上の地震の2割弱が日本周辺で起きています。1月の能登半島地震を見てもわかるように、原発事故を引き起こす大地震がいつ再び起こるかもしれません。大事故が起きれば放射性物質が大量にばらまかれます。福島では事故から13年経った今も放射能汚染が残り、東京23区の半分に当たる土地が帰宅困難区域になっています。東海第二原発で事故が起きれば、東京を含む首都圏一帯が、人が住めない場所になってしまうかもしれないのです。私たちはこのような危険性をもつ東海第二原発を決して動かしてはなりません。みなさん、ぜひ「東海第二原発動かすな」の声を高め、この原発の再稼働をやめさせ、廃炉にしていきましょう。詳しいビラをお配りしていますので、ぜひお手に取ってお読みください。署名用紙も用意していますので、ぜひ署名にもご協力ください。
13年前の福島原発事故を経験した日本政府や電力会社がすべきことは、二度と事故を起こして国民に損害を与えることがないように、まずは原発をやめ、原発に頼らない電力供給システムをつくることだったのではないでしょうか。地球の反対側にあるドイツはそのように決断し、脱原発を実現しました。私たち市民が声を上げれば原発は止められます。原発を止め、私たちの社会を安心して暮らし続けられる場所にしていきましょう。(U)