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2020年3月23日月曜日

子ども脱被ばく裁判 山下俊一氏証人尋問への傍聴感想記 「にこにこ発言の罪は重い」


3月4日の子ども脱被ばく裁判で福島県放射線健康リスク管理アドバイザーの山下俊一氏(ニコニコしている人には放射能は来ません発言で有名な)が数々の嘘(専門家が間違うとも思えない間違い発言をしたと証言)を認めました。
被ばくによって傷つく遺伝子数を37兆分の1に過小評価していたことを認めるなど、本当に酷いもので参加者の山下氏に対する憤りは更に高まりました。
この裁判を傍聴した原発事故避難者や裁判の支援者の皆様からの感想をご覧下さい。



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第26回福島地裁での『子ども脱被ばく裁判』を傍聴して





 郡山市から当時12歳の次女と母子避難・松本徳子

私は2011年6月24日福島県郡山市の小中学生14名が郡山市を相手取り福島地裁郡山支部に仮処分申請した『ふくしま集団疎開裁判』の第二次提訴『子ども脱被ばく裁判』の原告の一人で有りました。
2016年2月29日第4回口頭弁論にて意見陳述を述べさせて頂きました。その後残念ながら、原告では無く成りましたが、今でもこの画期的な唯一子ども達の命を守る権利の裁判を応援している一人でも有ります。
原告でなくなってからは神奈川から福島へはなかなか
裁判の傍聴は遠退いていた私でしたが、第25回鈴木真一医師の証人尋問
第26回山下俊一医学者の証人尋問は何としても自分の眼で自分の耳で聞かなければと福島地裁に赴きました。

9年に及ぶ裁判で福島の子ども達いいえ、日本の子ども達の為にご自分達の生活よりも優先させ、御尽力して下さった弁護団の皆さま。
弁護団を支える脱被ばく実現ネットのスタッフの皆さま。又更にスタッフや原告の皆さんを各地で支えて下さっている支援の皆さまには心より感謝申し上げます。
私は2016年8月脱被ばく実現ネットの皆さまのご支援に寄りカナダのモントリオールでの世界社会フォーラムに参加させて頂き、
各国で活動されている市民団体の方々と交流しました。
そしてカナダ在住の日本人の方々や通訳をして下さった温かい方々との巡り合いは私の今の疲弊した避難生活に勇気を頂いております。
今回、山下俊一と言う
2011年3月福島第一原発事故後、(長崎大学の医学者)福島県放射線健康リスク管理アドバイザーとして福島に降り立った人間の証人尋問の傍聴では、
私の怒りは頂点に達してしまいました。

医学者として又チェルノブイリ原発事故後、
笹川医療協力プロジェクトに参加してその後健康調査及び甲状腺癌の子どもの診察に従事した人物が嘘の供述を平然とした顔で述べ、
『最後に福島県民に伝えたい事は何ですか?』の被告側の弁護人の問いに『覆水盆に返らずです』と放ったのでした‼️

私たちがこの9年間どんな思いで生きてきたか。
原発事故被害者、避難者は故郷を思い、悪魔の様な放射能被ばくとの闘いに翻弄されながらも必死で生きてきた、その県民に向かって唾を吐きかけたのです‼️

身の震えと今にも爆発しそうな怒りを堪える事が精一杯で本当に大声を吐きそうでした。

改めて、多額のお金と医学者と言う権力で子どもの命と人権を踏みにじる山下俊一と言う化物。
自分達の論文の為に人体実験をしているのだとしたら?
決して許されない事であり、許す事は出来ません‼️

2011年3月12日の福島第一原発事故後の福島での『ニコニコ笑っている人には放射線の害は来ません、クヨクヨしている人には放射線の害は来ます』と言い放った発言の罪は重大なのです。

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山下証人尋問から感じたこと

 3月4日の裁判における一連の行動に参加できたことは、学ぶところが多く幸いでした。ありがとうございました。
 私は柳原さんの書かれた文章に触発され、「チェルノブイリ法日本版の会」に参加し、調布でそれについて学ぶ会を立ち上げました。
 今回、報告会での皆さんのお話を聞き、あらためて「チェルノブイリ法日本版」の必要性を確認した次第です。
 山下俊一さんが証言の最後に「覆水盆に返らず」と発言されたと聞きました。彼がどういう意味で言ったのかはわかりませんが、この言葉は、これまで安全神話を掲げ、推進してきた側が、白旗を揚げたことに他なりません。原発事故を起こしてしまったら、元に戻すことはできない、絶対に取り返しはつかないと、言ったのですから。
 絶対に元に戻すことができない状況を作り出してしまった国、県、原発業界は、そういう状況に追い込んでしまった被害者に対し、最大限の保障をしなければならないということでしょう。被害者が受けてしまった健康被害、失ってしまった故郷は、どんなことをしても取り戻せないのです。
 9年を経過してもなお続く福島原発事故の過酷さを痛感しました。


                             調布市 三宅征子

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2020年3月4日子ども脱被ばく裁判第26回期日傍聴報告

                       冨塚 元夫


山下俊一証人は事故直後の福島県各地の講演会での重要発言の誤りを認めました。
しかし取り返しのつかない被害と被ばくを軽視する政治状況に変わりはありません。

 34日は子ども脱被ばく裁判第26回期日、約6年続いた子ども脱ひばく裁判最大の山場でした。福島県民と日本国民をだまして被曝をさせた、あのにっくき山下俊一の証人尋問が行われました。原告弁護団は心血を注いで準備して来ました。原告のお母さんお父さんは彼の発言のため家族が無用な被曝をさせられた上に、困難な避難生活を強いられました。さらに、その避難が必要のない、故郷を裏切った行為だと非難されて来ました。私達支援者にとっては、ふくしま集団疎開裁判から始まった、子供たちを放射能の心配のない場所で教育を受けさせる権利を認めさせる闘いの集大成です。

 12時裁判所前には前回の鈴木眞一証人尋問の時以上の傍聴希望者が集まりました。生業裁判、かながわ訴訟、関西訴訟、南相馬20ミリシーベルト撤回裁判、東電原発事故刑事裁判などいろんな裁判を闘ってきた人が挨拶しました。ひだんれん代表の武藤類子さんは、「原発事故告訴団は最初の告訴では東電幹部だけでなく、山下俊一も告訴したが起訴に至らず残念だった。しかし、子ども脱ひばく裁判で法廷に引きずり出した意味は大きい」と発言しました。私も同じ気持ちです。私は裁判所前集会では山下俊一有罪のプラカードを下げていました。
 疎開裁判の会の時には、人形劇の人形のように山下俊一を形作って、紙芝居のようなパフォーマンスをする演劇班がありました。2011年、2012年ころ文科省前で、「放射能はニコニコ笑っている人には来ないでくよくよしている人に来る、被曝量100ミリシーベルト以下では健康被害はありません、空間線量毎時100マイクロシーベルト以下は心配ありません、マスクはいりません、子供を外で遊ばせて問題ありません。」などの発言を批判して通行人に呼び掛けていました。
 前回より多い100人以上の傍聴希望者が抽選券をもらいました。前回は抽選に外れた私は当選しました。皆さんが私に傍聴してこい、と言うのでお言葉に甘えて入りました。山下俊一が、死を招く悪魔のウソをどう言い訳するのか聞きたいと思いました。結論から言うと、がっかりしました。早口、小声の言い逃れに終始しました。追い詰められて、しぶしぶ誤りを認めたり、記憶にないと言ったりしました。しかし彼の嘘発言の結果多くの市民(特に子供)が避難せずに被曝し、一生取り返しのつかない健康被害を受けた、その責任は全く感じていないようでした。

 被告(国、福島県)側弁護団がまず1時間ほどスライドを使って、尋問しました。山下がどういう経過で福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就任したか、就任後どういう方針で県と打ち合わせし、県民に講演したかなど確認したものでした。福島県からの長崎大学への再三の要請で就任した。放射線リスク管理の方法は、国際的コンセンサスに基づいて、正しい放射線の知識とリスクコミュニケーションを県民に教えるということのようです。実際は、クライシスコミュニケーションと名付ける緊急時の放射線量年間20-100ミリシーベルトを適用した、100ミリシーベルト以下では健康被害は出ないという「科学的根拠」の説明などを行いました。

 原告弁護団は井戸さんを先頭に、田辺さん、崔さん、古川さん、柳原さん、光前さんがこれまでの入念な準備を生かして、逃れられないように問い詰めました。

“放射能はニコニコ笑っている人には来ないでくよくよしている人に来る”
安心してもらうためのユーモアだったそうです。
“被曝量1年間で100ミリシーベルト以下ならば、がんのリスクは無い 
「積算被ばく量が100ミリシーベルト以下の健康被害の証明はされていない」としても、通算すればすぐに100ミリシーベルトを超えるではないか、この発言は毎年100ミリシーベルトに達しなければ、問題ないと理解されているが、どう思うか、という尋問に対し、「そう理解されたかもしれない」
と認めた。

“福島市、郡山市などで、空間線量が毎時10-20マイクロシーベルトだった時に、100マイクロシーベルト以下は心配ありません、マスクはいりません、子どもを外で遊ばせて問題ありません。洗濯物も外に干して問題ありません。
間違いだったとすぐ認めました。意図的ではなく、うっかり間違ったそうです。
1か月後に外部から指摘されて、訂正した。県のホームページでも訂正した。
しかし、県のホームページでは翌日の日付(322日)で訂正したことになっていたそうです。

“空間線量1ミリシーベルトの場合、1個の遺伝子を傷つけます
実際は細胞一つ当たり1個の遺伝子を傷つけるのであり、人間の体には37兆個の細胞があるので、37兆個の遺伝子が傷つく、つまり37兆分の1の過小評価ではないか
その通りですと認めた。

“水道水にヨウ素は入るが、短期間で減少する。セシウムはフィルターで除去されるから、入らない。 
厚労省のデータでも「セシウム200bq/l超えた場合は危険だから飲むな」などと言っているではないか、という尋問に対し間違いを認めた。県民に間違ったこと言ったことになる、と認めた。
“空間線量毎時20マイクロシーベルトでも屋内は10分の1に減少するから問題ない
木造が多い一般家庭では屋内でも屋外とほとんど変わらないではないか、という尋問に対し、そのようなこと言ったか記憶にないと答えた。
“3月15日雪の日、線量計がガーガー鳴って計測不可能だった日、県知事室で県民の安定ヨウ素剤服用は必要ないと、職員の質問に答えて言った”
「覚えていない、記憶にない」と答えた。
“3月27日長崎大学で、福島の放射線量は深刻なレベルだ、と福島県での発言と真逆の発言をした”という尋問に対し記憶にないと答えた。
“オフサイトセンターに行った。そこで、スピーディーの生のデータを見たのではないか。”
という尋問に対し、覚えていないと答えた。また「後で(20136月)スピーディーのデータを見て驚いた、フィルターがあるので、こんなに汚染されるとは思っていなかった」と答えた。

“チェルノブイリ原発事故と甲状腺がんの因果関係をIAEAも認めた。1986年事故以降に生まれた子供は以前に生まれた子供に比べて、甲状腺がん罹患率が大幅に減少したからだ。なぜ同じ疫学調査を福島でやらないのか”
という尋問に対し、疫学調査に耐えうるデータがないとか、福島の場合はスクリーニング効果という結論が出ているとか、100ミリシーベルト以上の被爆をした人が少ないとか、放射線の健康影響は難しいとか、いろいろとごまかしていました。

 報告集会での、原告さんたちの感想は、「山下は意図的にだました。本当に騙された。」
「親たちが騙された。山下の話を信じた母親と喧嘩した。本当に悔しい。避難したかったのにできなかった人が多い、避難して苦労した人も多い」
「義母が講演聞いた。心配いらない、本当に危ないならば国が動くはずと言われて何もできなかった。いまはまだ子供たちは元気だが、将来が心配だ」
「まだ不明な時に出まかせ言ったのは許せない、良心的な科学者はいないのかと思う」
などでした。
 山下は安全でなくても安心を与える役割を見事に果たしたわけです。彼に命じたのは国です。国は国際原子力マフィア(IAEAが中心)の核兵器維持のための核の平和利用方針に忠実に従ったものと思います。「上の命令に従っただけ」とナチス裁判で答えたアイヒマンに似ています。
以上

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 そらの真澄

 3月4日は 待ちに待った山下俊一氏の証人尋問日でした。
前回の鈴木眞一氏に引き続き、山下氏の出廷に漕ぎつけてくださった原告の皆様、
弁護士の皆様、その他ご尽力いただいた皆様、本当にお疲れ様でした。そして有難うございました。
 私は、傍聴出来なかったのですが 報告集会で聞いた山下氏は、その嘘八百の活躍の場ではない裁きの場で、表情は生気のない まるで能面の様、尋問に答える声は 消え入る様だったそうです。

事故後、県内の 心配する親たちを相手に講演した「ニコニコしている人に放射能は来ない」
「洗濯ものは外に干して大丈夫」「子供たちは外で遊んで問題ない」「水は安全」等々の言葉は、「リラックスして欲しかった」「自分の発言で結果的に『不快な思い』をさせたなら申し訳なかった」と 自己弁護に終始。そして とどのつまりの「覆水盆に帰らず」や「国民は国家に従え」の発言からも分かる通り、反省や謝罪の気持ちは 全く感じられません。

山下氏の言葉を信じ 避難をせず 変わりない日常生活を送ることを選択した親たちは
子どもを被ばくさせた、守れなかった という自責の念と、子どもたちの目の前の健康被害と未来への不安を抱えることになったのです。

チェルノブイリ事故報告書で 子供たちの甲状腺がんは放射能由来であること、将来に亘っても 検査し続けなければならないこと、あらゆる疾病の多発の可能性があることなどを述べていた山下氏の、日本の子供たちへの裏切りは 断罪されなければなりません。
 そして この国の原発推進政策が「命よりカネ」であり 未だに原発を「ベースロード電源」と位置づけていることに 強く抗議をし 被ばくした子どもたちへの責任の取り方を 
厳しく問うていかなければならないと思います。    
                          (了)


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子ども脱被ばく裁判を傍聴、支援活動に参加して
                        脱被ばく実現ネット 宮口高枝

 私が、子どもを守ろう、被ばく裁判のことを知ったのは、あの3.11事故後柳原弁護士が国会周辺で、必死に訴えていた話を聞いた時だった。
 私はその話を聞きながら、40年近く前の出来事、無二の親友、広島の原爆2世の綾さんが出産時の大量出血で逝ってしまった時の事をまざまざと思い出した。
 子どもたちが危ない、避難させようと必死になっている人々がいると勇気をもらい、何か役に立ちたい、繋がろうと思ったことがきっかけだった。
 放射能被害は晩発性、何十年後、または世代を超えて発病する危険度が高くなる。
 一刻も早く子どもたちを避難させなければいけない。私も支援の輪に加わろうと決心し、裁判傍聴や街頭アピール等に参加し、福島に通った回数は覚えていない。
 25回目の証人尋問で、鈴木眞一氏の証言を聞いた。小児甲状腺がん数は237人と証言するも、弁護団の追及に、福島医大以外で自分がかかわっている2か所の病院での小児甲状腺がん手術を認め、その手術人数は237人には含まれないことが公判で明らかになった。   
 このやり取りを聞いていて、チェルノブイリ事故後のロシア、ウクライナでの小児甲状腺がん数千人の患者数にはならないとは、誰も言えないと背筋が寒くなった。
 26回期日公判の傍聴券は外れたが、記者会見や振り返り集会で山下俊一氏の証人尋問の模様を伺い、山下俊一氏は確信的犯罪者との思いを強くした。
 国、福島県からの放射線健康リスク管理アドバイザーの依頼を受けて、福島県内を講演して回った彼は、「人々を安心させるため」として、放射能被ばくリスクのことは話さず、「マスクは必要ない。」「放射能はにこにこ笑っていれば怖くない」「洗濯物は外に干しても大丈夫」という講演をして、福島の方々を結果的にだましたのです。
 放射線健康リスク管理アドバイザーの仕事とは、人々を被ばくさせるために、安心感を与える仕事なのですかと問いたい。
 この仕事は放射線や放射能の危険性を分かりやすく説明し、無用な被ばくをさけ、被ばくリスクを負わない行動はどうあるべきか指導し、予防対策を授けることとだと思っていたが、インターネットで調べても回答は見当たらず。唯一あったのが、キぺデアの記述。
「被曝医療の分野で専門的知見を有する3名を放射線健康リスク管理アドバイザーに委嘱し、放射線による健康への影響について県民の理解を深めるとともに、正確な情報を広く提供いただいている」という部分だった。
 山下氏が事故直後に話した、「放射線はにこにこ笑っている人のところには来ない、マスクはしなくて大丈夫」などの内容は、確実に福島市民に影響し、高名な先生が言うのだから、安心して良い、放射能は安全と刷り込まれ、避難しなくても...と家族を説得する心を惑わせ、住み慣れた故郷を後にしたくない気持を増幅させたであろうことは容易に察せられる。
 市民には医師が言う言葉は絶対的な言葉として心に入る素地がある。そのことを悪用した。 医師という専門家の言葉は患者にとっては絶対のものとして心に入り込む。だから、避難しなくてもよいと信じ込んだ多くの市民たちは避難せず留まる決心をした。彼に騙された。
 避難した者たちを、故郷を捨てたと非難し、放射能の不安を口に出来ないよう、地域社会の空気を市民自らが作り上げ、福島県民を故郷から逃げないよう、避難を断念させるよう仕向け、「放射能はにこにこ笑っていれば怖くない~」と安心させる講演をして回った彼の罪は重い。
 人間の心理を見据え騙すためのテクニックとして、医療者の専門家の顔を利用した手口は、心理学を悪用した確信犯と考える。
 井戸弁護団長が証人尋問として質問した内容、山下氏が“空間線量1ミリシーベルトの場合、1個の遺伝子を傷つけます”としたが、実際は細胞一つ当たり1個の遺伝子を傷つけるのであり、人間の体には37兆個の細胞があるので、37兆個の遺伝子が傷つく、つまり37兆分の一の過小評価ではないか“との追及に対し「その通りです」と答えた。
 彼は、37兆分の1の過小評価の間違いを指摘されなければそのまま見過ごしたのではないかという、想像するのも恐ろしい。これは単純な原稿のミスで済む話ではない。医療の専門家として、人間の命を預かる医師として、許してはいけない部分だ。
 人間の感性をなくしてしまった医師は失格だ。
 専門家・医師としてのかれの話を聞いて安心した県民が存在したのだから、彼は確信犯。これを許せば、緊急時には合法的に人々をだましてもよいとお墨付きを与える事になる。
そんなことは絶対に許してはならず、弁護団の最終弁論に期待し、子どもたちの未来がかかるこの裁判に支援側としても集中したいと思う。
 
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作家の渡辺一枝さんが裁判傍聴され、傍聴記をご自身の一枝通信に書かれました。
許可を得ましたので、転記させていただきます。


◎子ども脱被ばく裁判第26回期日
                  渡辺 一枝

 3月4日、件名の裁判が福島地方裁判所で開廷されました。
この日は、「放射能の影響は、ニコニコ笑っている人には来ません」と言った山下俊一の証人尋問でした。
この日で証人尋問は終わります。
私は東京駅から「脱被ばく実現ネット」の仲間たちと一緒に行きました。
裁判は福島地裁で1時半開廷ですが、私たちは東京駅発856の新幹線に乗りました。裁判所に向かう前に福島駅頭で、この裁判に心を寄せてもらえるようにチラシを撒いてアピールをしようというわけです。
 チラシを撒き終えたら12001230、地裁前でのアピール集会に参加。
そのあと地裁の建物内で、傍聴券抽選に並びました。
私の番号はちょうど50番でしたが、何人並んだでしょうか。
前回の鈴木眞一氏の時(99)と同じくらい、あるいはもう少し多かったかと思います。
でも並んでいる時に裁判所職員が「今回は傍聴席60席(これまでは64席)用意しています」と言いましたから、記者席として4席設けられたのでしょう。
幸いなことに、50番は、抽選に当たりました、良かった!
●福島駅頭でチラシ撒き
 この日の電車も新幹線もとても空いていましたが、福島駅頭を行き交う人もとても少なく、コロナで外出を控えた人の多いことに、本当に驚きました。
新しいウィルス蔓延という状況に政府がきちんと対応していないことには憤りを覚えていますが、私はウィルスそのものへの怖さよりも、外出を控える人の多さやマスク・トイレットペーパーなどを買い漁る人が多いという、そんな空気の方が怖いです。
今、日本を覆っているこの空気が、本当に怖いです。
 通る人はまばらでしたがチラシを受け取ってくれる人の割合は拒む人よりも多く、私に割り当てられた分は、じきに配り終えて仲間の分を分けてもらって撒きました。
同年輩の女性は「あ、さっき別の人から頂きました。私も孫がいますから人ごとでないです。応援していますよ。私はアムネスティの活動をしています」と言い、また高齢の男性は自分から寄ってきて「何?」と聞くのでチラシを渡しながらこの裁判のことを話すと、「本当だよね。子どもたちの未来は守らにゃいかんよ」と。
高校生や若い人も、いつもよりはずっと受け取る率が高かったです。
●地裁前集会
 各地で原発関係の裁判を闘っている人たちが挨拶されました。
生業訴訟の根本仁さん、南相馬20ミリシーベルト基準撤回訴訟の佐藤智子さん、関西訴訟団の方々、ひだんれんの武藤類子さん、神奈川訴訟の村田弘さん、他の方たちで、どなたの言葉もしかと受け止め、胸に響きました。
 村田さんの発言の中に一点、とても気がかりを感じたことがありました。
それは高裁の日取りが数日後に確定していたのに、裁判所からの申し出で延期になったということです。
新型肺炎の流行を考慮してということらしいのですが、私にはこういう“空気”が、とても怖いです。
何か不安、あるいは賞賛すべき事柄の種をきっかけにして、その不安または賞賛に同調せざるを得ないような雰囲気が作られていくこと、いともたやすくそうした言説に人々が乗せられてしまうこと、そうした“空気”が、とても怖いです。

◎傍聴記
 医師の山下俊一氏は、福島原発の直後に長崎の原爆被爆2世の被爆医療専門家として、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就任して福島県に乗り込み、県内各地で講演をしました。
それは、「放射能の影響はニコニコ笑っている人には来ません」や「100ミリシーベルトまでは安全です」などなどです。
氏は現在も福島県立医大の副学長の地位にあります。
 この山下発言が多くの市民の暮らしを翻弄し、今もなお多くの人々を苦しめ続けていますし、その影響は現世代のみではなく、次世代、次々世代にも及ぶとても重大な問題をもつと思います。
❶「ニコニコしている人に放射能は来ない」発言
 前回の鈴木眞一氏の時と同様に、被告側弁護士から尋問が始められました。
被告側の証人だからなのですが、この日は被告の証言を引き出すのに書面ではなく映像で確認が使われました。
本来なら証人は席に座ったまま机上のパネルに映る画像などを見ながら答え、裁判官や双方の席に座る弁護団や原告、傍聴席は、左右の壁に映されるのを見て聞くのです。
なぜかこの日は証人席のパネルは働かず、「それでは左右どちらかのスクリーンを見てお答えください」と、県代理人の渡辺弁護士は言いました。
山下証人は右側の壁、被告側弁護団の後方の壁に掛けられたスクリーンを見ながら答えました。
 いつの証人尋問の時にも、はじめに裁判長は「質問は証人の右や左の席にいる代理人から発言されますが、証人は質問者の方ではなく正面を向いてお答えください」と言いますが、もちろんこの日もそう言いましたが、この日の状況からはその原則は守られませんでした。
だから証人は、原告側の席にいる弁護士や原告本人たちには、全く表情を見られることなくツラツラと証言したのでした。
 県代理人からの「放射線の影響は、実はニコニコ笑っている人には来ません」という「ニコニコ発言」の趣旨は?と聞かれて、山下は、「不安や緊張が非常に蔓延していたので不安を増長させないためで、科学的根拠を欠いた発言ではない」と答えたのでした。
原告代理人の井戸弁護士に「聞いていた人たちは非常に緊張した、極度に不安な状態だった時にこれを聞けば、くよくよしている自分たちには放射能の影響が来るのかと脅迫された、愚弄されたと受け取るのではないか?」と質問されて、山下は答えました。
「不快な思いをさせたのであれば申し訳ない」「誤解を招いたのであれば申し訳ない」
などと、一見しおらしく非を認めて謝罪したように見せかけましたが、真にそう考えたとは、到底思えませんでした。
❷「100ミリシーベルト安全」発言
 この発言に関して被告側からの質問に、山下は100ミリシーベルト以下は証明されていない」と答えたので、原告側から「証明されていないならリスクは否定できないのではないか」と問われると「はい、そう思います」と、自分の非を若干認めました。
井戸弁護士が「子どもにマスクは必要ない」と言ったり、外遊びをさせるように奨励したのは、故意に被ばくさせるためだったのか?と質問すると、「過剰に被ばくさせるのはよくないが、部屋に閉じ込めて制限させることよりも、外に出ても大丈夫だと話した」と、答えました.
 井戸弁護士が、1ミリシーベルトの放射線で遺伝子が1個傷つくということは、1つの細胞の1個が傷つくということだ。体内にある37兆個の細胞の一つ一つが傷つく。「1ミリシーベルトで遺伝子が1個傷つく」と証人が言うと、聞く方は1個だけが傷つくと考えてしまうが、実際には37兆個の細胞が傷つくことだ。
だからこの発言は、37兆分の1の過小評価を招いたことになりますよね?と質問すると、山下はあっさりと「はい」と認めました。
❸「セシウムは水道水に出ない」発言
 山下が「放射性セシウムはフィルターで除かれるから、水道水には出ない」と、講演で発言したことについて原告代理人の崔信義弁護士が、厚労省が地方公共団体や水道業者に、200ベクレルを超えたら給水を控えるように規制したが、それは水道水に放射性セシウムが出る可能性を示しているのではないか?フィルターで除去されるなら、そんな規制は出ないのではないか?」と質問すると、これについても山下は「ゼロでは無かった事実を認めれば、そうなります。間違いだったかもしれません」と、認めました。
また、不溶性の微粒子の存在について「知らない」と答えました。
④低線量被ばくについて
 原告代理人の田辺保雄弁護士が、アメリカのBEAR(放射線の生物学的影響委員会)レポートの100ミリシーベルト以下の低線量被ばくがガンリスクに影響するという研究があり、これをICRPは引用している。
証人は100ミリ以下の低線量被ばくがガンに影響するということに触れていないのは、意図的に省いたのか?と質問すると山下は、「単純に説明するために省いた。意図的に省いたのではない。端的に話したのだ」と答えました。
❹小児甲状腺ガン多発について
 山下は「多発ではない。スクリーニングによって、多数見つかったということだ。大人になって発症するガンがスクリーニングによって早く見つかったということだ」と答えるのですが、「多発」と「多数見つかった」の違い、多発は発症しているが見つかった段階なら発症していないということなのでしょうか?私には解らない答えでした。
❺安定ヨウ素剤配布について
 安定ヨウ素剤を服用させるかどうかについて部下から質問を受けた時に「スピーディを見て環境省が決めることで、お前が心配することではない」と発言していたことについて、原告代理人古川健三弁護士が質問すると「記憶にない」と答えました。
古川弁護士が、証人がオフサイトセンターに行った時(2011321日の福島テルサでの講演の前後)に、スピーディの情報を見たのではないか?と聞くと「そのつもりで行ったのではない。オフサイトセンターを見てくれと言われて、視察に行っただけだ」と答え、放射線健康リスクアドバイザーの立場なら当然気にして情報を得ようとするであろう事柄についてこう答えたのは、「記憶にない」発言が嘘であることを暴露したもののように、私には思えました。

 原告代理人からの尋問の後で、国側代理人からの追加尋問がありました。
●追加尋問
 吉野女史の質問、「あなたが一番伝えたかったことはなんですか?」に、山下は、こう答えたのです。
「長崎被爆者2世の自分が長崎被爆者やチェルノブイリ被災者に接した経験を活かすのは、運命的だと感じた。県民に一番伝えたかったのは、『覆水盆に返らず』ということでした」
傍聴席からは、怒りを押し殺したような、声にならない溜息・吐息が漏れました。
 3時間に及ばんとする証人尋問(被告側90分、原告側90)でしたが、山下証人は「自分の発言が誤解を招いたのであれば、申し訳ない」とか、「非常に緊張した不安感があふれた雰囲気の中で、パニックを起こさないように端的に明快に説明したが、舌足らずが誤解を招いたならお詫びする」とか「緊急時で詳細に説明する時間がなかった」とか、「不快な思いをさせた方には、申し訳なかった」とか、質問への返答はそんな謝罪の言葉をちりばめた山下でしたが、最後の「覆水盆に返らず」が、却って彼の謝罪さえもまた嘘であったことを露呈してしまったようでした。

◎報告会
 原告男性は、「彼の講演を聞きに行った人は、どうすれば危険を避けられるかを聞きに行ったのに、彼は危険はないと話した。聞いた人の多くは危険はないのだと安心して帰った。彼は科学者ではなく安全を語る政治家だと思った。彼に、どうけじめをつけさせるかだ」と言い、また原告の女性は、「私の母もニコニコを信じて、母との間に意見の食い違いから分断が生まれた。覆水盆に返らずと言ったが、本当に悔しい」と発言しました。
 山下俊一氏と高校時代に同級生だったという人を友人に持つ人の発言に、会場の参加者から苦笑が漏れました。
「私の友人の男性に山下さんと高校で同級生だった人がいます。彼が私に言いました。『山下俊一が証人だって?大変だねぇ。彼は高校時代嘘つきで有名で、あだ名が“だました”だったんだよ。嘘ばっかついてたんだ』と、教えてくれました」

●次回期日は7月28日、1330分からで、結審です。


 一枝通信 子ども脱被ばく裁判傍聴 報告追伸

 昨日送信の報告に、追記します。

①山下証人が正面の裁判官の方を向かず右方を向いての証言したのは、被告側からの主尋問の間のことです。
原告代理人からの反対尋問は、書面で確認しながらの尋問でしたから正面を向いての発言でした。
 前回の鈴木眞一証人の時もそうでしたが、今回の山下俊一証人も被告側代理人が主尋問、原告側代理雨人が反対尋問でした。
②質問内容はメモを書落としましたが、主尋問に証人が答えた中にあった発言に「平時のリスクコミュニケーションなら情報公開して共に考えるが、今回はリスクコミニュケーションではなく緊急時のクライシスコミニュケーションだ。緊張と不安を案じて、冷静に判断できるようにせめて明快な言葉で伝えるようにした」という内容の発言がありました。
でも、緊張と不安の中にいるからこそ、出まかせの気休めではなく本当のことを知りたいだろうし、伝えるべきだったと思う。
 以上追記します。                    一枝

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