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2012年5月8日火曜日

【速報】1年1ヶ月後に初めて明るみにされた郡山市内小学校のホットスポットの一端

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 神戸大学大学院教授の山内知也さん(放射線計測学)からコメントをいただきました(→6、専門家の見解
※ UPI通信社がこの問題を世界に報道しました。→World News
  5月8日16時にアップした本速報に次の誤記がありましたので、訂正します(5日21時現在。下記の表は訂正済みのものです)。
3、測定値が~6μSv/時
番号 小学校名    提出日           測定場所     測定値
10 安積第三小学校 2/22 体育館裏(誤)→側溝(正)
11 永盛小学校    2/22                 同上
12 柴宮小学校    2/22                 同上 
44 桜小学校      2/22 雨水等の排水口      2.986(誤) →3.978(正)

福島県内の小中学校など教育施設でのホットスポットの測定は3.11以来の緊急の課題であり、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」などは昨年6月以来その実施を要求してきましたが、ずっと無視されてきました。福島県内の市町村で小中学校等のホットスポットの測定結果が公開された話はまだ聞いたことがありません。
  しかし、郡山市では教育委員会が、本年1月23日より、ひそかに市内の小中学校でホットスポットの測定を週1回のペースで実施していました。今回、一市民が情報開示手続によって、この事実を突き止めました。
情報開示請求により初めて明らかにされたホットスポットの情報は、看過できない重大なもので、 
連休最終日の5月6日、以下の3団体の代表と疎開裁判の弁護団は、この問題について、緊急の記者会見を開きました。
・ ふくしま集団疎開裁判の会(代表 井上利男)
安全・安心・アクションIN郡山(代表 野口時子)
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク(代表 佐藤幸子)

  以下が開示資料。
郡山市教育委員会が市内各小中学校にホットスポットの測定を依頼した文書(本年1月23日)

4月4日付けの開示請求に対する開示決定通知書(本年4月18日)

開示文書(1月25日分、2月22日分、直近〔4月4日分〕)

教育委員会から一方的に提供された文書(4月17日分)

以下、開示資料の解説です。
1、測定器では測定できなかった測定不能(毎時9.999マイクロシーベルト以上)
これに該当する小学校は以下の5校。この地点は年間に換算すると、87.6ミリシーベルトです。

 2、測定値が6~9.999マイクロシーベルト/時
これに該当する小学校は以下です。この地点は年間に換算すると、52.56~87.6ミリシーベルトです。

3、測定値が(3にほぼ近いものも含む)~6マイクロシーベルト/時
これに該当する小学校は以下です。この地点は年間に換算すると、26.28~52.56ミリシーベルトです。

 4、問題点
①.教育委員会の測定方法の指示の仕方
本年1月23日、教育委員会が市内各小中学校にホットスポットの測定を依頼した文書によれば、次のようになっています。
 「下記の場所で、線量が高いと思われる箇所を各校で1箇所選定し、放射線量を調査票により報告願います。
  ① 中庭
② 雨水箏の排水口
③ 側溝
④ 体育館裏
⑤ プールののり面
⑥ 生け垣
⑦ 樹木等の密集地帯
⑧ その他(上記以外で線量が高いと思われる場所) 」

ホットスポットは1mちがうだけでも値が大きく違ってくることはよく知られた事実です。しかし、今回の測定は、各学校の判断で、「線量が高いと思われる箇所を各校で1箇所選定し」ろと指示するだけで、それ以上、具体的な指示は何もありません。各学校はどうやって、「線量が高いと思われる箇所」を見つけ出すのでしょうか。実際も、測定値は各回で次のようなバラツキが発生しています。
 大島小学校で、同じ体育館の裏でも、値が、
    0.827(1/25)    6.311(2/22)
 と8倍も開きがあることは、本年2月に仙台高等裁判所に提出した神戸大学の山内知也教授の意見書5頁で、
2月19日のX小の体育館裏で、西側の中央(番号31)と西側の端(番号32)とでは、
 0.59(番号31)  6.24(番号32)
と10倍以上も開きがあることからも示されています。
また、今回の郡山市の測定ではX小の体育館裏の3回の測定値は、
0.9~1.4
であり、山内教授が見つけたホットスポットの測定に失敗しています。
この意味で、今回、高い線量が見つかった地点は、現実のホットスポットの一端にすぎないもので、まだ知られざるホットスポットが学校敷地内に数多く存在する可能性があります。

②. 測定不能となった地点の再測定の不実施
このような極めて高い線量(年に換算して87.6ミリシーベルト)の場所については、測定範囲の広い新たな測定器で再測定を行う必要がありますが、1月25日以後も、単に「測定不能」としか記載していないことから、再測定を行った痕跡は見当たりません。

③.屋外活動制限解除(3月23日発表)との関係
教育委員会は、本年3月23日に、「体育などの屋外活動は1日1時間以内、部活動は1日2時間以内とした」屋外活動制限を新学期から解除すると発表しました。
このときの解除の理由として、校庭の空間線量が平均して0.2マイクロシーベルト/時以下に低減したことを挙げています。
しかし、このとき、教育委員会は、既に2ヶ月間、市内の小中学校のホットスポットの測定を実施していて、極めて不十分ではあれ、年に換算して87.6ミリシーベルト以上の測定不能の小学校だけでも5校ある結果に象徴されるように、大変危険な現状を把握していたにもかかわらず、ホットスポット問題の対策を何ひとつ講じないまま、なぜ屋外活動制限解除に踏み切ることができたのか、その理由が分かりません。
現実の子どもたちは、決して、「平均して、 0.2マイクロシーベルト/時以下」の被ばくするわけではありません。知らない間にホットスポットに近づいていたら、知らない間に大量に被ばくします。
ホットスポット問題が解決しない限り、少なくとも屋外活動制限解除は即刻、撤回すべきです。

5、疎開裁判に与える影響
昨年12月、福島地裁郡山支部は、避難を求める申立を却下しましたが、その理由の1つとして、郡山市が、
「校庭の表土除去や,児童生徒の屋外活動の制限など,債権者らを含む児童生徒が債務者の設置する小中学校等において受ける放射線量の低減化に向けた措置をとっていること及び債務者におけるこれらの措置は一定の効果をあげていることは,上記認定事実のとおりである。」(20頁)
ことを挙げました。
しかし、今回のホットスポットの情報は、校庭の表土除去だけでは「放射線量の低減化に向けた措置」が機能せず、学校内のホットスポット問題は何ひとつ解決しておらず、学校の敷地内は依然、極めて危険な状態にあること、にもかかわらず新学期から「児童生徒の屋外活動の制限」を撤廃したことは、申立を却下する理由の柱が2つ失われたことを意味します。この大変重大な事態を、今後、仙台高裁に主張・立証する予定です。

6、専門家の見解
神戸大学大学院教授の山内知也さん(放射線計測学)のコメントです。
(山内教授は、本年2月、郡山市の2つの小学校の校庭で152箇所を測定し、測定結果と考察を意見書として作成、仙台高等裁判所に提出しました)

―――最初に全般的なことをお尋ねします。今回、郡山市内の小学校のホットスポットの測定に関する開示文書をご覧になって、まずどのような思いましたか。

除染をどのように理解するかですが、私は事故前の状態に戻すことだと考えています。そうであれば、ホットスポットがある以上は除染は完了していません。
ホットスポットがあるということは降雨等の自然の働きでセシウムが濃くなるポイントがそこにあるということであって、そのまま放置していると、さらに汚染が高くなるところである(厳密には、ところもある)と考えるべきです。

―――そのようなホットスポットに対しては、どうしたらよいのでしょうか。

まず、それぞれのポイント(測定場所)の値が高くなっている理由をさぐることが必要です。その理由を明らかにした上で、ホットスポットにならないようにする対策をとるべきだと思います。
また、除染しないのであればこの間の測定は無駄になると考えます。除染と避難の関係については、私の意見書に詳しく書きましたが、避難が出来るのであればするべきであって、線量が下がるのをまって戻ることもできると、線量が下がるまでの間の避難だというように考えることもできると思います。

―――次に個別のことについてお尋ねします。今回のホットスポットの測定で、雨水等の排水口や側溝がずいぶん高い値になっています。これについてどう思われますか。

私は本年2月に郡山市の2つの小学校の校庭を測定し、意見書に次のように書きました。
「雨水升や側溝の汚染レベルが高いままになっているところを見ると、校舎の屋上や体育館の屋根には今も相当な量のセシウムがあると見られる。」(意見書14頁)

この指摘が郡山市内の小学校全般に妥当するものであることが今回の測定で明らかとなりました。
雨樋や側溝の線量が高いのは上流からセシウムが流れて来たからであり、その上流、つまり校舎の屋根や屋上の汚染を調査する必要があります。その上で、屋根や屋上の除染対策をとる必要があります。
これは、グランドの土を入れ替えたことをもって「除染した」としていう考えが間違いであることを示しています。

―――さらに、今回のホットスポットの測定で、毎回、測定値が随分変動するケースがあります。例えば46番の大島小学校では、体育館裏の測定値が0.827、6.311、4.978と毎回、大きく変動します。これはなぜなのでしょうか。

私の意見書にも書きましたが(12頁)、郡山市にとどまらず、東日本と関東に広がった高い空間線量率を伴う汚染の実態は放射性のセシウムであって、その密度分布によって空間線量率は増減します。したがって、例え数メートルであっても、場合によっては数センチであっても、測定する場所が変われば空間線量率は変化します。

―――そうすると、1箇所だけ測定して、その値がホットスポットの値であるとはとうてい言えないですね。

その通りです。

―――そうすると、教育委員会が今年1月に各小中学校に出したホットスポット測定依頼の文書では、「下記の場所(注:中庭、側溝、体育館裏など8箇所)で、線量が高いと思われる箇所を各校で1箇所選定し」測定しなさいとなっていますが、これではホットスポットの測定として不十分ではないでしょうか。

この文面では不十分だと思います。周辺をくまなく測定して最も高いポイントを複数選び出して記録し、対応策に役立てる、というようなものでなければと思いました。
実際に、私も今年2月に郡山市の小学校を測定したとき、体育館裏で11箇所測定し、0.27~6.24マイクロシーベルト/時(高さ2cm)とスポットによって23倍以上ものバラツキが出ました(意見書5頁)。

―――それと、市民が今年4月4日にホットスポットのデータの開示請求をしたあと、教育委員会は、突然、地表から50または100cmでもホットスポットの測定をやるようになりました(4月17日の測定データ)。その意図がどこにあるのか教育委員会は明らかにしていませんが、その測定結果をみますと、地表1cmより50または100cmのほうが値が高い場所が意外とたくさんあったことです。これは何を意味するのでしょうか。

私の意見書にも書きましたが(13~14頁)、ガンマ線は100 m以上も離れたところから飛んできます。したがって、本来、ある場所の空間線量率を下げるには、数百メートル半径の一体を除染しなければなりません。汚染土壌が除去されたグランドでも、地表1cmよりも50または100cmの線量率のほうがより高くなるのは、地面に近づくほど、幾何学的な関係にしたがって、離れたところから飛んできたガンマ線が入射しにくくなるからです。
今回、ホットスポットの測定値が地表1cmよりも50または100cmのほうが高くなっている場所はこのような理由によるものと考えられます。

―――逆に言うと、そのような場所は、ホットスポットから出るガンマ線だけで値が決まらず、離れたところから飛んでくるガンマ線によって値が決まるということですか。

そうです。意見書にも書きましたが(14頁)、そのような場所は、周辺からのガンマ線がその位置での線量率を規定しており、ホットスポットの汚染が線量率を高くしている第一義的な原因ではなくなっていると見られるます。学校周辺の除染が進んでいないことが問題なのです。

―――この問題に対する対策は学校内部だけでは解決しませんね。

その通りです。学校を含めた広い範囲でセシウムを除去しない限り、空間線量率は下がりません。すなわち除染になりません。

―――以上をまとめると、今後、やるべき除染はどうなりますか。

少なくとも、一方で、グラウンドの土の入れ替えのみならず、校舎の屋根や屋上の汚染も調査し、除染する必要があり、他方で、学校周辺の地域の汚染も調査し、除染する必要があります。
そして、これらを真剣に取り組むためには、汚染土壌等の仮置き場がどうしても必要となりますが、それが確保できないことがいま大問題となっています。これについて、郡山市のような都市部については、次のような方策しかないことを私は意見書で述べました。

「(4-4)除染の効果を出すために必要な方策
福島県内の都市部での除染が進まない原因のひとつは、汚染土壌の仮置き場がないことである。国は自治体・郡山市に除染をさせるという。郡山市は自治会に仮置き場を選定するように要請するが、家が密集している限り見つかる道理がない。農地を提供しようという人が居たとしても、その周辺の地主が了解するとは限らない。そうなると公的な空間ということになるが、町中の公園では自ずと限界がある。
計測に際して、郡山市内をいろいろと案内してもらったが、地域の人口にほぼ比例した相当量の汚染土壌を仮置く場所として可能性があるのは、小学校や中学校のグランドである。
この1年とか2年の間、小中学校の教室を線量率の低いところに移して、その間にグランドを仮置き場として利用して、地域の徹底した除染に取り組むというのが現実的な除染の方法であると考える。今のままでは、除染は遅々としていつまでも進まない。いつまでもセシウムがあちこちに残っているような学校の中で学び、屋根にセシウムがこびりついた家で寝食し、気持よく大地に触れたり、駆け回ることのできないような街中で、子供たちは生活をしなければならない。除染と避難・疎開は対立しない。ともに被ばく線量を下げるために、人とセシウムとの間に距離を設けるというものであり、相補ってはじめて効果が出る方策である。本当の意味での除染を行うには、元の郡山市を取り戻すには、子供たちを線量率の低いところに一旦移して、数年をかけて徹底して除染作業を継続することが不可欠である。」(意見書15頁)


7、参考情報
週刊東洋経済の特集記事
郡山市が小中学校内の「ホットスポット」除染に連休明けから着手。運動会開催前には終わらず(1)
郡山市が小中学校内の「ホットスポット」除染に連休明けから着手。運動会開催前には終わらず(2)

新聞記事など
毎日新聞
東日本大震災:郡山集団疎開申請支援団体、放射線量値の証拠提出へ 仙台高裁抗告審で /福島
 日本経済新聞
郡山の小学校などホットスポット 毎時20マイクロシーベルトも
 東京新聞
郡山の学校に「ホットスポット」 情報公開で判明
ベスト&ワースト
【速報】情報隠ぺい?福島県郡山市の学校内ホットスポットが情報公開請求で判明!最大毎時20.4マイクロシーベルト!

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