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2013年1月24日木曜日

【報告】1.21福島やその周辺で起こっている健康被害の真相について松崎意見書(4)を提出

これまでに、主に、甲状腺検査結果について、
松崎意見書(2)
松崎意見書(3)
を作成された北海道の松崎道幸医師に、今回、健康被害に関する以下の最新情報について、意見書(4) を作成、裁判所に提出しました。

1、血液疾患と血液検査結果の公表のボイコット(->おしどりマコさんの「血液検査の現状報告」)
2、循環器疾患と取手市で小中学生の心電図異常の増加(->東京新聞の記事「73人が『要精密検査』 取手市内24校心臓検診
3、甲状腺に多数ののう胞(->検査を担当した医師の陳述書

PDFの全文は->こちら

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意見書 ()

松崎 道幸

(深川市立病院内科・医学博士)
2013年1月19日


目 次
第1.略歴
第2.福島県は一昨年行われた福島の子どもたちの血液検査をすぐに公表してください
第3.空間線量率が事故前の10倍近くになった取手市で、子どもの心電図異常が増えています
第4、放射線被ばくが甲状腺のう胞を増やしているおそれがあることを直視すべきです

第1.略歴
甲131号証の記載の通り。

第2.福島県は一昨年行われた福島の子どもたちの血液検査をすぐに公表してください
201112月までに福島の7割近くの子どもたちの血液検査が終了しているのに、その結果は公表されていません。大人のデータは昨年公表されているのです。
福島県内には、チェルノブイリのゴメリのような高度汚染地区に匹敵するセシウムによる土壌汚染のある地域も多いため、子どもたちへの健康影響がとても心配されます。
ちなみに、ゴメリ地区の子どもたちの血液疾患は、事故前に比べて、4年後に9倍、10年後に約20倍に増えました。


ゴメリ地方(ベラルーシ)の小児の疾病発病率(10万人当り)
調査年
1985
1990
1993
1994
1995
1996
1997
血液疾患
54.30
502.40
753.00
877.60
859.10
1,066.90
1,146.90
1985=1
1
9.3
13.9
16.2
15.8
19.6
21.1

出典:核戦争防止国際医師会議ドイツ支部:チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害(2012年 合同出版)86ページ


ゴメリ地方の子どもの血液疾患の増加度
核戦争防止国際医師会議ドイツ支部:チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害(2012年 合同出版)86ページの表7-3より作成。


以前、私の意見書(甲131)8頁以下でも述べたように、福島中通りに匹敵する放射能汚染地帯に居住するチェルノブイリの子どもたちでは、放射線被ばくによって起きたとみられる貧血、白血球数低下、血小板数低下等がはっきり現れていました。事故直後の福島の子どもたちの血液検査がどうなっていたのかを知ることは、被ばくの影響の大きさを知った上で、適切な対策の行われることを切望している住民の基本的権利です。


第3.空間線量率が事故前の10倍近くになった取手市で、子どもの心電図異常が増えています

放射性セシウムは心臓の筋肉細胞を傷つけますので、不整脈や心不全、様々な心電図異常をもたらすと考えられています。
原発事故前の茨城県の空間線量率は0.05マイクロシーベルト/時 前後でしたが、事故後取手市では、その数字が一桁大きな値となりました。毎年小学校と中学校の新一年生に行われる心電図検査で、詳しい検査が必要と判定された児童の率が、2011年の福島事故後23倍に増えていることがわかりました。

取手市において心電図検査で要管理者と判定された児童の比率(%)

QT延長症候群(疑いも含む)と判定された取手市の児童の人数
QT延長
(疑いも含む)
2008
2009
2010
2011
2012
初発
0
1
1
2
6
継続
1
0
0
0
2
上2点の出典:取手市立 小中学校 心臓検診結果集計(2013/1/1)(教育委員会より、県・国:政府統計HPより)一般公開用

 QT延長症候群:心臓の収縮後の再分極の遅延がおき、心室頻拍のリスクを増大させるまれな心臓疾患です。これらの症状は、動悸、失神や心室細動による突然死につながる可能性があります。)

ちなみに、福島県では、児童生徒の心電図異常の比率が、全国平均あるいは福島県の事故前のデータと比べて増えているとは読み取れません。しかし、異常」の詳しい内容と全県ではなく各市町村単位のデータが不明であるため、これだけでは放射線被ばくによる心臓の筋肉に対する傷害が本当に増えていないかどうかを断定することはできないと考えます。
福島県児童生徒の心電図異常率(%)の推移
検査年度
小学校
中学校
高等学校
H14
2.1
3.7
2.6
18
1.9
2.5
3.3
19
2.6
2.6
3.8
20
2.2
3.5
3.1
21
2.0
2.6
3.2
22
2.9
2.8
3.9
24
2.1
3.3
3.1
全国H24
2.3
3.3
3.0

出典:「福島県統計課編 平成24年度学校保健統計調査速報から抜粋


チェルノブイリ事故後、放射能汚染の著明なゴメリ地区の子どもたちに、心臓病などの循環器疾患が10倍以上増えたことを想起すべきです。

ゴメリ地方(ベラルーシ)の小児の循環器疾患(10万人当り)
調査年
1985
1990
1993
1994
1995
1996
1997
循環器疾患
32.30  
158.00
375.10
379.80
358.20
422.70
425.10
1985=1
1
4.9
11.6
11.8
11.1
13.1
13.2

ゴメリ地方の子どもの循環器疾患の増加度
核戦争防止国際医師会議ドイツ支部:チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害(2012年 合同出版)86ページの表7-3より作成。





































 福島の子どもたちにおいても、児童生徒の心電図の異常を詳しく分析して、注意深くモニタリングすることが必要なことはもちろん、これ以上の放射線被ばくを避けることのできる、移住疎開を含めた抜本的な対策を急ぐことが望まれます。
 
第4.放射線被ばくが甲状腺のう胞を増やしているおそれがあることを直視すべきです

滋賀県の滋賀勤労者保健会ぜぜ診療所が、昨年8月に福島県と東京都から避難してこられた29名の子どもの甲状腺検査を行ったところ、19名にのう胞が発見され、うち17名は甲状腺の左右の葉に多数ののう胞が見られ、さらに7名では、多数のコロイドのう胞が検出されたということです(甲208陳述書)。

松崎意見書(2)(甲190)で示したように、甲状腺のう胞は放射線被ばくによって増加することが明らかになっています(下図参照)。従って、甲状腺のう胞の数もまた放射線被ばくによって多数となる可能性があることは否定できません。


放射線被ばくの有無別甲状腺のう胞頻度
松崎意見書(23ページ目の表から作図

原発事故で過去に例を見ない態様の放射線被ばくを受けたこどもたちの検診をきめ細かく続けるとともに、これ以上の放射線被ばくを防ぐために、移住、保養等の対策を根本的に強めることが必要です。
以 上


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