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本年1月21日に、福島の子どもらの衣類と頭髪の汚染調査を行い、その結果を東電マニュアルに書かれた放射線防護の基準を対応させて、そこから見えてきたものを報告した吉田報告書(甲205)を提出しましたが、その続編ともいうべき、
本年4月1日から測定方法を変更した途端に空間線量の値が半分に減った郡山市合同庁舎で測定した結果と3.11以前の放射線防護に対応させたらどうなるか、についての報告書(2)を、判決の前日、提出しました。
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報 告 書 (2)
――郡山市合同庁舎モニタリングポストについて――
2013年4月19日
福島県南相馬市‥‥
吉田 邦博
目 次
1、略歴
2、郡山市合同庁舎モニタリングポストについて
3、さいごに
1、略歴
既に提出した私の報告書(甲205)に述べた通りです。
2、郡山市合同庁舎モニタリングポストについて
(1)、はじめに
福島県は、2013年4月1日から、福島市、郡山市など県内7箇所の空間線量率の測定方法を、従来の「可搬型」のモニタリングポストから「固定型」のモニタリングポストに切り替え、測定場所も移動しました(別紙1の「固定型モニタリングポストへの移行に伴う空間線量率の測定値の変化について」参照)。
その結果、郡山市の合同庁舎では、3月31日に0.51~0.52μSv/hだったのが、翌日4月1日には0.27μSv/hとほぼ半減しました(別紙1の表)。
しかも、これは4月1日だけのことではありません。それ以降4月18日までのデータも別紙3(県内7方部 環境放射能測定結果(暫定値)(第1516報))の通り、0.25~0.29μSv/hの値を推移しています。
3月31日を境になぜこのような測定値の大幅な低下が生じたのでしょうか。誰もが不思議に思うこの疑問について、福島県は「固定型モニタリングポストへの移行に伴う空間線量率の測定値の変化について」(別紙1)で「変動の主な理由」という見出しで、次のように説明しています。
「○変動の主な理由県北、県中、県南、相双で使用していた可搬型モニタリングポストでは、測定器としてサーベイメータを利用し、測定していました。(単位:マイクロシーベルト/時間)今般、長期的に測定するために切り替えた固定型モニタリングポストでは、全国的に使用されている単位(マイクログレイ/時間:空気吸収線量率)で測定しているため、全体的に測定値が低めに表示されています。(会津及び南会津においては、既に空気吸収線量率を測定しています。)特に、県中(注:郡山合同庁舎)と相双については、施設の維持管理や利用者の支障とならない恒久的な設置場所を選定して移動した結果、従来よりも測定値が低下しました。」
しかし、この文書中でも「単位μGy/h≒μSv/h」と表示しています。つまり、マイクロシーベルトによって示された値をマイクログレイで表記しても値は変わりません。したがって、4月1日からマイクログレイで表記するようになったからといって、前日までの測定値に比べ大幅に低下した理由にはなりません。
また、「設置場所を移動した結果」測定値が低下したというのは、前日までの測定値に比べ大幅に低下したことを説明する理由になるかもしれませんが、しかし、それまでの測定値の半分の値しか出ないような場所を測定場所としてなぜ選んだのか、測定場所として果して適切なのか、それを説明することができません。そのためには、それ以外の場所を測定し、その測定値と対比することが必要です。
私は、4月10日、郡山合同庁舎で、3月31日までの測定地点(下図の青色の長方形)と4月1日からの測定地点(下図のMP)の周辺の10ポイントを測定しました(別紙2の地図参照)。
(2)、郡山合同庁舎での測定
(ⅰ)測定日時:4月10日(水)12:00~14:30
(ⅱ)測定機器:POLIMASTER・PM1710A、Thermo/RADEYE B20-ER
(ⅲ)測定地点:郡山合同庁舎の敷地内で以下のA~Jの10地点、敷地外の周辺で4地点です。
A~Eは、4月1日からのモニタリングポスト設置場所周辺。
Fは、上記測定地点から8m離れた場所。
G~Iは、3月31日までの測定地点周辺。
(Ⅳ)測定方法:空間線量率は地上1mの高さ
(Ⅴ)測定結果:
①.敷地内は以下の表の通りです。
表面汚染密度の単位はBq/m2 、空間線量率の単位はμSv/h
(3)、郡山合同庁舎の汚染状況
郡山合同庁舎の敷地内の10ポイントの空間線量の値(高さ1m)は0.27~0.74μSv/h、平均して0.51μSv/hです。現在のモニタリングポストの数値(0.25~0.29μSv/h)と対比したとき、両者の差異を誤差として済ますことは不可能です。
では、現在のモニタリングポストでなぜ、このような低い値が測定されるのでしょうか。モニタリングポストの周辺であるAとB(いずれもアスファルト)の空間線量の値が際立って低いことから、昨年10月6日の東京新聞でも報道された通り(甲168号証)、モニタリングポストの周辺の除染を徹底した可能性が高いと言わざるを得ません。
その結果、除染されていない場所(コンクリートのH地点)、或いは除染したけれどうまく行かなかった場所(コンクリートのC地点、土のD地点)はモニタリングポストの値の2~3倍の値となっています。
では、本来、このような値の場所ではどのような防護措置が取られるべきでしょうか。それを明らかにするのが「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」とこの法律に基づいて東京電力が福島原発事故以前に作成した放射線管理仕様書(別紙4)やマニュアル「放射線作業と遵守事項」(甲215.2001年に一部改訂。以下、本マニュアルといいます)です。
本マニュアルでは、放射能汚染程度に応じて以下の様々な管理区域に分け(9頁)、各管理区域ごとに、作業員を内部被曝させないために高性能なマスクをさせるなど、放射線被曝から徹底的に防御するように指導しています(16頁~)。
上記表によれば、表面汚染密度が4~40Bq/cm2(4万~40万Bq/m2)のときC区域になります。
郡山市合同庁舎の汚染レベルを表面汚染密度で見たとき、A~Jのうち4万Bq/m2 を超える地点C、H、J(いずれもコンクリートの場所)がC区域に該当します。
別紙4の放射線管理仕様書によると、このC区域では別表4と別表5に示された装備が必要となります(本マニュアル29頁の以下の写真参照)。一方で、皮膚や頭髪、衣類に付着した放射線物質を外に持ち出さないようにするためと、長い時間を過ごすと余計な被曝をするために完全な防備となっています。他方で、原発の建屋内では風は吹かないため汚染物質が舞い上がることは少ないのですが、にもかかわらず多少の内部被曝でもその危険から身を守るために、以下の写真のようなマスクをさせています。そして、これらの装備をつけなければ、この区域に入ることすら許されません。また被曝労働者として教育を受けた者しか入出を許されておらず、未成年者は入出を禁止されている場所です。
つまり、郡山市合同庁舎のコンクリートの場所(地点C、H、J)とは、本来、「これらの装備をつけなければ、この区域に入ることすら許されません。また被曝労働者として教育を受けた者しか入出を許されておらず、未成年者は入出を禁止されている場所」なのです。
しかし、現実には上記のような防護措置は全く取られていません。未成年の立ち入り禁止もありません。
しかも、ここは郡山市合同庁舎という公共の建物で、通常、念入りに除染が実施されている場所です(除染の予定を記した別紙3の末尾、3番目の※参照、)。そのような場所ですらこれが放射能汚染の現実です。いわんやそれ以外の場所ではもっと汚染は深刻です。事実、郡山市合同庁舎の敷地から一歩外に出ると、周辺の空間線量は0.45~0.97μSv/hです。敷地内(0.27~0.74μSv/h)より20~60%高くなっています。
我々福島の人々には日本の法律が適用されないのでしょうか。我々は人では無いのでしょうか。この国の状況を見ているとそんな気分にさえなります。
3、さいごに
同じようなチェルノブイリ原子力発電所事故を起こしたソ連では、住民を避難又は、移住を選択させ、その生活を守ることを支援しました。何故先進国でありながら、このような共産圏以下の政策を取っているのか全くもって理解し難いです。そのような状況の中、せめて子どもたちだけでも、安心して暮らせる環境に行かせたいと願う親たちの声。最近の調査でも、非常に運動量が減り、肥満や、健康障害が心配されてきています。「放射線の影響はありません」という発表を政府がしても、誰も信じることが出来ないのです。信じることが出来ない理由としては、先にも触れた、チェルノブイリ事故で子供たちに起きている健康問題が大きくあります。これを無視している状況での信頼回復はあり得ません。
極めて重大な人権侵害があり、国連も人権問題としても動いている中、司法が子どもたちの訴えを認めないようなことがあってはなりません。この国の崩壊を意味します。世界的には少ない放射線量でも人体に影響があることは認められていますし、放射線による影響を過小評価し後に影響が出たとなれば、ほんとうの意味での日本の終わりとなります。
私は、日本がこのようなひどい国であった事を恥じております。その責任は私にもあります。その罰が私にだけであるなら、いくらでも受けたいとも思います。しかし、現実に何も関係のない子どもたちにその罪を追わせるような判決だけはしないで頂きたい。実際には大人たちにも影響が出てきています。葬儀屋に長く務めている南相馬市の方が、「何十年この仕事をしているが、今まで心筋梗塞で亡くなった人がこんなに多かった事はない」と話しています。そして、福島県内で高校生3名が亡くなり、除染作業員も3名亡くなっています。
先月3月の初めに郡山の中学2年の女子が急性白血病で亡くなりました。発症してから亡くなるまで3ヶ月だったと聞いております。甲状腺疾病、その他様々な発病の話が聞こえてきています。時間は少なくなって来ているように思えてなりません。固形がんとなるには5年以上の歳月が必要となりますが、すでに2年経過しています。白血病などは2年でも十分ありえる状況となりました。私達大人が胸を張って出来るだけの努力をしたと、子どもたちに言えるような判断を期待しています。どうか後世に残る判決を御英断下さいませ。日本を守るために。
以 上
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