日本政府は、当初から東電福島第一原発の過酷事故を矮小化し、可能な限り隠蔽しようとする意図の下で日々の記者会見を行なったため、福島県民はもとより(下図)、広範な地域の人びとが、知らぬ間に事故直後から外部被曝と内部被曝を余儀なくされました。
すなわち、福島県内では、正しい情報を何ら知らされぬまま、福島第一原発から30 km以遠の地域でも、子どもたちは事故後2週間足らずの間に、法的な一般公衆の年間被曝限度(1mSv)の100倍以上もの内部被曝を甲状腺に受けることになったのです。
しかも、福島県内だけでなく、茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京などの都県でも、原発内であれば原発作業従事者が全面マスクと防護服をまとわなければ近づけない高線量地域に、多数の人びとが無防備なまま住み続けざるを得ない状態に追いやられており(下図)、特に放射線感受性の高い子どもたちに悪影響が出始めています(準備書面参照)。
「ふくしま集団疎開裁判」は、このような背景を受けて、福島地裁郡山支部で始められたのです。「ふくしま」の子どもたちが、一日も早く安全な場所で教育を受けられるようにとの願いを込めて……。
ところが、福島地裁郡山支部も仙台高裁も、時間ばかりを費やすだけで、子どもたちの命と暮らしを思いやる心がまったく感じられないままに、いよいよ年度内には高裁決定が下されようとしています。
折しも、「原発再稼働」を福島の地で平然と主張する首相を戴く内閣が動き出し、情勢はいっそう厳しい局面を迎えています。
もう、黙ってはいられません。デモでもせずにいられません。
***************************************
以下のとおり、2011年3月11日~3月16日の間の枝野幸男官房長官(当時)の記者会見を一瞥すれば、日本政府の「大本営発表」的な欺瞞に満ちた隠蔽体質が見て取れます。
***************************************
◆2011年3月11日午後(夜)19時03分発令の原子力緊急事態宣言について:「現在のところ、放射性物質による施設の外部への影響は確認されておりません。したがって、対象区域内の居住者、滞在者は現時点では直ちに特別な行動を起こす必要はありません。」
◇デモ、デモ。本当は、16時36分、福島第一原発に原子力災害対策特別措置法第15条1項2号の規定に該当する事象(緊急事態)の発生を、東電が国に通報しており、本来、大量の放射能が放出・拡散する前に「直ちに特別な行動を起こす必要」があったのです。
官房長官の記者会見を聞いた私は、「大本営発表」の再来と感じ、直ちに「登校拒否児」同然になってしまい、以後80日間、家に引き籠ることになりました。
◆3月11日午後(夜):「21時23分、原子力災害対策特別措置法の規定に基づきまして、福島県地域、大熊町、双葉町に対し、住民の避難の指示をいたしました。福島の原子力発電所の件で、3 km以内の皆さんに避難の指示、3
kmから10 kmの皆さんに屋内での退避、という指示をいたしました。……これは念のための指示でございます、避難指示でございます。放射能は現在、炉の外には漏れておりません。今の時点では環境に危険は発生しておりません。安心して……、安全な場所まで移動する時間は十分にあります。ご近所にも声を掛け合って、慌てず冷静に行動をして下さい。」
3月12日午前(早朝):「福島第一原子力発電所における事故に関しては、非常用炉心冷却装置による注水が不能な状態が続いておりますが、放射性物質の放出はありません。」
◇デモ、デモ。本当は、「3月11日21時50分ごろには、1号機原子炉建屋の放射線レベルが上昇し、立入禁止が敷かれていた」(国会事故調
報告書)のです。官房長官の記者会見「放射能は現在、炉の外には漏れておりません。」等は、『真っ赤なウソ』でした。
◆3月12日午前(早朝)2度目:「原子炉格納容器の圧力が高まっている恐れがあることから、原子炉格納容器の健全性を確保するため、内部の圧力を放出する措置を講ずる必要がある」が、このベントを行なっても、「放射能物質が大気に放出される……量は微量と見られており、海側に吹いている風向きも考慮すると、……住民の皆様の安全は十分に確保されており、落ち着いて対処いただきた」く、「モニタリングカーの測定によると、現時点で、放射性物質の施設外への漏えいは確認をされておりません。」「不確実な情報に惑わされることなく、確実な情報に従って行動するようお願いをいたします。」
同日午前3度目:「1号機の原子炉格納容器の圧力が高まっているおそれもあることから、本日、5時44分に総理から新たに、半径10 km圏内の住民に、10 km圏外に避難するよう指示がありました。……先程、1号機の原子炉格納容器内の圧力を降下させる措置を行いました。このため、放射性物質を含む空気の一部外部への放出が行われますが、管理された中での放出でございます。……10 km圏外に出ていただいているというのは、まさに万全を期すためでございますので、その点にご留意をいただき、落ち着いて退避をしていただければというふうに思っております。」
◇デモ、デモ。放射能雲(プルーム)は風に乗って流れるわけで、四方八方に均等に拡散することはあり得ませんから、同心円状の避難区域等は愚の骨頂です。
◆3月12日午後:「福島第一原子力発電所においてですね、原子炉そのもののものであるということは今のところ確認されておりませんが、何らかの爆発的事象があったということが報告をされております。……放射能について測定はきちっと行なわれておりまして、……管理された下で、一部放出をするというような想定の下で、想定されうる数値の範囲であるというふうに考えておりますが、しっかりとこの放射性物質の数値の把握に努めて、周辺住民の皆さんの安全については万全を期している……」
同日午後(晩):「放射性物質の濃度は、……(ベント)の前後で一旦高くなっておりますが、その後、15時36分の爆発を挟んでも、いずれも低下していて、そして低いレベルにとどまっております。したがいまして、現時点で爆発前からの放射性物質の外部への出方の状況には大きな変化はないと認められ……、是非、冷静に対応していただきたい」としながら、退避指示を「念のために、更に万全を期す観点から20kmに拡大……」
◇デモ、デモ。本当は、ベントは「管理された下で」はまったくなく、フィルターのない排気口から空中へ自由奔放に放射能を放出したのであり、何も「万全を期して」はおらず、かつ爆発もあったため、大量の放射性物質を放出していたのです。しかも、1号機はメルトダウンを起していました。しかし、住民には正しい情報を知らせなかったため、すでにこの日から、福島第一原発から30 km圏外の飯館村などでは、子どもたちが甲状腺に放射性ヨウ素による大量の内部被曝を受け始めていました。
◆3月13日午前(朝):3号機についても「現在、いわゆる『ベント』と称しておりますが、圧力容器等から圧力を減らすために気体を抜くための作業、そして更に給水をポンプ等によって行なうため作業を行っているところ」で、「気体の中には身体に影響を及ぼさない程度の放射性物質が含まれ……」
同日午前2度目:「(ベントは)……手順に基づきましてなされているものでございますので、人体に影響を与える放射線が放出をされているものではございませんので、ご安心をいただければというふうに思います。」
同日午後:再度爆発の可能性があるが、「避難をしていただいている周辺の皆様の健康に影響を及ぼすような状況は生じないと考えております。」
3月14日午前:「(3号機が)先ほど11時01分、爆発が発生いたしました。……1号機で発生をした水素爆発と同種のものと推定……」「……所長の認識としては、格納容器は健全であると……。したがいまして、放射性物質が大量に飛び散っている可能性は低いと認識をいたしております。……現在20 km圏内からの退避の途上であったごく少数の皆さんに……、直ちに建物の中に、念のため退避をするよう指示……」
3月15日午前(11:07):「4号炉については、現在、火災が生じているという状況でございます。こちらの原子炉は、震災発生時において休止中の原子炉でございました。しかしながら、4号炉の(使用済み核燃料プール)の中に使用済み核燃料が……、この間の経緯の中で熱を持って、そして、そこから水素が発生をして、いわゆる水素の爆発……が起こったものと推察」「その結果……放射性物質もその時点から排出をされていたものと思われますが、全体が建屋で覆われている状況ではなくなりましたので、これが大気中に出ているという状況になっており……、身体に影響を及ぼす可能性のある数値であることは間違いありません。なお、是非冷静に受け止めていただきたいのは、これはまさに放出がされていると思われる部分近くの数値でございますので、距離が遠ければ遠いほど、この数値は落ちていくというものでございます。」
◇デモ、デモ。本当は、遠く離れても安全とは決していえず、東京以西にもホットスポットが点在します。しかし、日本政府はきちんと調査して公表する気配がありません。
◆3月16日午後:「現在、特に20~30kmの圏内において、本日文部科学省においてモニタリングをいただき、文部科学省から公表される数値について、専門家の皆さんのまずは概略的な分析の報告に基づきますと、直ちに人体に影響を与えるような数値ではない。こうした地域で、例えば365日24時間、屋外でこの数値の場所にいた場合に問題が出るかもしれないといったようなレベルでありまして、短時間こうした地域で、外で活動する、あるいはこうした地域に数日という単位でおられるということで人体に影響を及ぼすといった数値ではないということでございますので、その点については御安心をいただければと思っております。」
このように、「直ちに人体に影響を及ぼさない」と何回も繰り返し言明しました。
◇デモ、デモ。本当は、「いずれは影響が出る可能性がある」ということでしょう。にもかかわらず、その後の記者会見でも、「直ちに人体に影響はない」旨の発言を繰り返し、目くらまし発言と情報隠蔽をつづけてきました。
そのため、福島県内はもとより広範な地域の人びと、つまりチェルノブイリ原発事故の住民対策にあてはめれば、強制移住地域や移住権利地域
―― 頭書のとおり、原発内であれば原発作業従事者が全面マスクと防護服をまとわなければ近づけない高線量地域
―― に、無防備のまま住み続けざるを得ない人びとの人権(生存権)が著しく脅かされているのです。中央政府と地方政府の責任であり、「原子力ムラ」の妄動を許してきた私たち大人の責任です。
特に、放射線感受性の高い子どもたちを粗末にすることは許せません。国の三権たる立法府の国会は、行政府の政府は、司法府の裁判所は、この間いったい何をしてきたのか。
私はもう黙ってはいられません。「物言わぬ民」でいるわけには参りません。
私は、デモでもせずにいられません。
皆さん。市民の権利のひとつの表現方法である「デモ」、「ふくしま」の子どもたちの命と暮らしを守るための「ふくしま集団疎開裁判の会」の「2.23デモ」に、大挙して参加しましょう。
2013年2月6日
なまい・ひょうじ
0 件のコメント:
コメントを投稿