以下は、その概要です。
お伝えした通り、疎開裁判は、ロスタイムに入りました。いつ、裁判所(仙台高裁)の決定が出てもおかしくありません。、
しかし、その中身を左右するのは、いま、いかに福島の子どもたちが危険な状態に置かれているか、その真実が明らかにされること、そして、彼らの命を今すぐ救えという市民の声がどれだけ大きいかにかかっています。
いま、福島の子どもを救えという声は日本だけではありません。世界から、著名な人権活動家チョムスキー、オーストリア首相、欧州国連本部のあるスイス・ジュネーブ市長がこぞって「福島の子どもたちを今すぐ救え」と声をあげています。
私たちは、今月13日に開催された 福島県の県民健康管理調査の検討委員会(座長・山下俊一福島県立医大副学長)の公表結果に注目しました。なぜなら、ようやく、私どもの裁判の原告の子どもたちが住む郡山の検査結果が明らかにされるからです。他方、郡山市で検査を受けた小中学生は、実に多くの子どもたちがA2判定(5ミリ以下の結節または20ミリ以下ののう胞)だと聞いていたからです。
結果は目くらましのようなものでした。 福島県は、それまで市町村別の受診者数を出していたのに、それを隠してしまいました。福島市なら、福島市全体でどれくらいの割合でA2判定が出たか公表されました。しかし、今回の郡山市になると、それを隠してしまいました。データは単に平成24年度の総数だけしか公開しなくなりました。
しかし、にもかかわらず、というより、だからこそ目くらましをしないといけないような差し迫った健康被害の危険が今回の公表結果から浮き彫りになりました。
1、一次検査
今回公表分35,189名(平成24年度、これまでの受診者総数111,546名-前回の受診者総数76,357名=35,189名)のうち、以下の表の通り、
6~10歳の女子の55.4%、
11~15歳の女子の57.6%
に「のう胞」または「結節」が見つかりました。この数値はこれまでで最高です。
に「のう胞」または「結節」が見つかりました。この数値はこれまでで最高です。
年齢区分
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A2
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B
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計
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受診者数
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割合
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6~10歳
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2,519
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26
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2,545
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4,591
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55.4%
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11~15歳
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4,460
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89
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4,549
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7,894
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57.6%
|
平成24年度のこれまでの受診者総数111,546名について、「のう胞」または「結節」が見つかったのは44.63%に達しました。
これが何を意味するかは→昨年5月の松崎意見書(甲131)で明らかにした通りです。
つまり、
上記検査の主体である検討委員会の座長=山下俊一・福島県立医大副学長らが2000年に放射能非汚染地域の長崎の子どもたちを甲状腺検査した結果「のう胞」が見られたのは0.8%(甲131。3頁。同別紙2の論文593頁右段3~5行目)、チェルノブイリ事故の5~10年後にチェルノブイリ地域の子供たちを調査した結果「のう胞」が見られたのは0.5%(甲131。4~5頁)であるから,これらと比べて途方もなく高い値である。
2、二次検査
今回、二次検査により「甲状腺がん、新たに2人 他7人に疑い」(毎日新聞の見出し)が報告されました。ただし、その報告の中身は報道により異なるので、改めて、正確に説明すると次のようになります。
2011年度の甲状腺の一次検査をおこなった3万8114人のうち、二次検査の対象であるB判定は186人。
前回(昨年11月18日)までに、81名が二次検査を終え、その結果、1名の甲状腺がんが判明。
今回、151-81=70名が二次検査を終え、その結果、手術後の確定診断[1]により甲状腺がん2名、「細胞診」(穿刺吸引細胞診)[2]により甲状腺がんの疑いが7名となりました。
この事態をどう評価すべきかについて、検討委員会の座長である山下俊一氏が検診したチェルノブイリ事故による甲状腺がんの発生データと対比して明らかにした北海道深川市立病院内科の松崎道幸医師作成の意見書(5)(甲163)を昨日、提出しました。
この事態をどう評価すべきかについて、検討委員会の座長である山下俊一氏が検診したチェルノブイリ事故による甲状腺がんの発生データと対比して明らかにした北海道深川市立病院内科の松崎道幸医師作成の意見書(5)(甲163)を昨日、提出しました。
この松崎意見書(5)では
①。7名の「甲状腺がんの疑い」とは「白か黒か50対50である」という意味の「疑い」ではなく、毎日新聞の報道にもある「約8割の確率で甲状腺がんの可能性」があるということ、すなわち「甲状腺がんの疑いが濃厚である」ことを意味します(5頁)。
②。この評価を前提にして、今回の検査結果について、チェルノブイリのデータと具体的に対比した上で次の結論を導いています(8頁)。
①。7名の「甲状腺がんの疑い」とは「白か黒か50対50である」という意味の「疑い」ではなく、毎日新聞の報道にもある「約8割の確率で甲状腺がんの可能性」があるということ、すなわち「甲状腺がんの疑いが濃厚である」ことを意味します(5頁)。
②。この評価を前提にして、今回の検査結果について、チェルノブイリのデータと具体的に対比した上で次の結論を導いています(8頁)。
1.
現在の福島の子どもたちには、被ばくから数年後のチェルノブイリ高汚染地域の子どもに匹敵する頻度で甲状腺がんが発生している。
2. 甲状腺がんは今後激増する恐れがある。◎郡山市の子どもたちの予測
中通りを検査対象とした平成24年度の検査の結果、二次検査を要するB判定は、全受診者数の0.6%。これまで判明した「甲状腺がんが3名、甲状腺がんの疑いが濃厚が7名」は平成23年度の二次検査を終了した151名の中から見つかったから、これは二次検査修了者数の6.6%。
そして、郡山市の最新の小中学生の総数は30,148名(郡山市のHP。小学生19,785名。中学生10,363名)だから、次の計算式が成り立ちます。
30,148名×0.6%×6.6%=11.9名
郡山市の小中学生の中から最大12名の甲状腺がん発生が予測されることになります。
しかし、これは原発事故2年目での発生数です。今後、4年、5年後にどうなるか。
その答えはチェルノブイリと比べる中で得られます。
チェルノブイリのベラルーシの小児甲状腺ガン数のデータが以下の表1です。
その答えはチェルノブイリと比べる中で得られます。
チェルノブイリのベラルーシの小児甲状腺ガン数のデータが以下の表1です。
ベラルーシの甲状線ガンの数(M.V.マリコ「ベラルーシの青年・大人の甲状腺ガン」(今中哲二編纂「チェルノブイリによる放射能災害」所収)
事故後5、6年目から小児甲状腺ガン数が激増しました(甲104矢ヶ崎意見書(4)別紙3参照)、これによると、事故の2年目、3年目の4名と5名に対して、5年目、6年目は29名と59名と激増し、5.8~14.75倍となったのです。
昨日提出の松崎意見書(5)によれば、「福島の小児甲状腺がんの発生率はチェルノブイリと同じかそれ以上のおそれがある」(2頁)のであり、これを数字で示すと、郡山市の小中学生は、原発事故後5~6年目には、小児甲状腺がんの発生が次のように予測されます。
最小 11.9名×5.8倍=69名
最大 11.9名×14.75倍=175.5名
◎甲状腺の病気が意味すること
しかも重要なことは、甲状腺がんの発生原因は、松崎意見書(5)が指摘するように、《チェルノブイリの小児甲状腺がんが、急性の直接被ばく(事故初期のヨード被ばく)だけでなく、その後の持続的低線量被ばく(放射性降下物による地表汚染)によって発生増加している》(7頁5)ことです。ただし、これは松崎氏の独断ではなく、山下俊一氏らの論文に書かれているものです(8頁に該当部分が引用)。
その上重要なことは、ウクライナ政府報告書(甲62・同148)でも示されている通り、甲状腺がんは子ども達の被ばくによる健康被害の氷山の一角にすぎず、象徴的な出来事だということである。言うまでもなく人は甲状腺だけを被ばくするのではなく、それ以外の様々な臓器、全身も被ばくしている。甲状腺障害が深刻であるということは白血病、心臓病、腎臓病、免疫力の著しい低下等の他の様々な健康障害も深刻であると予測させるものである(甲62・同148ウクライナ政府報告書。甲152NHK・ETV特集「ウクライナは訴える」)
◎結論
◎結論
ここから導かれることは、松崎意見書(5)の次の締めくくりの言葉、
《私たちが出来るのは、子どもたちにこれ以上の放射線被ばくをさせないことです。子どもたちを現状の放射線汚染地域に住まわせることを見直し、移住・疎開等を真剣に考慮すべきです。》(7頁)
《私たちが出来るのは、子どもたちにこれ以上の放射線被ばくをさせないことです。子どもたちを現状の放射線汚染地域に住まわせることを見直し、移住・疎開等を真剣に考慮すべきです。》(7頁)
に尽きます。
言い換えれば、子ども達は遊んで原発を壊したのでもなければ、原発を誘致した訳でもなく、原発事故の純然たる被害者です。事故の加害者である国と共に子どもを安全な環境で教育する憲法上の責務を負っている郡山市は子ども達をこれ以上被ばくさせないことによって、これ以上の甲状腺障害を初めとする様々な健康障害の発生から子どもたちを守る義務があります。それは、子どもたちを今すぐ安全な場所に避難させること、これによってしか実現の方法はないのです。
◎
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