その最大の主張は、
1、原発事故後5~6年目の郡山市
今月2月13日に開催された 福島県の県民健康管理調査の検討委員会(座長・山下俊一福島県立医大副学長)の公表結果に基づき、松崎意見書(5)の評価を、郡山市に即して検討すると、郡山市の小中学生は、原発事故後5~6年目には、小児甲状腺がんの発生が
最小 11.9名×5.8倍=69名最大 11.9名×14.75倍=175.5名
と予測され、これはベラルーシのチェルノブイリ事故後5、6年目の小児甲状腺がん数の29名と59名(→表1参照)と比べ、同数~6倍弱になります。
すなわち、このまま被ばくし続けると、5,6年後には、郡山市一都市だけで、ベラルーシ一国の同数~6倍の小児甲状腺がんが発生する可能性があります。
すなわち、このまま被ばくし続けると、5,6年後には、郡山市一都市だけで、ベラルーシ一国の同数~6倍の小児甲状腺がんが発生する可能性があります。
2、原発事故後2年目の福島県
福島県の予測では、平成23年・24年の検査で750名程度の子どもがB判定とされる。これまでのところ、B判定のうち6.6%程度の子どもに甲状腺がんが発症しているので、2年目で750人×0.066+10人≒60人が甲状腺がんの可能性がある。
ただし、ここには事故直後3月15日に最も大量の放射性ヨウ素が押し寄せたいわき市方面の子どもたちが含まれていません。
小児甲状腺がんの発症は、チェルノブイリ原発事故の翌年、ベラルーシで4名の子どもだった(→表1参照)のに対し、福島県では、(いわき市も含めると)60名を相当数上回る子どもたちに甲状腺がんが発症している可能性があります。 つまり、福島県は、ベラルーシの15倍以上の小児甲状腺がんが発生する可能性があります。
こんな酷い事態を放置して、果して法治国家と言えるのでしょうか。 放置国家、児童虐待国家と改名すべきではないでしょうか。
以下は、その事実を指摘した、抗告人の準備書面(8)(その別紙1~4)の全文です。
ただし、ここには事故直後3月15日に最も大量の放射性ヨウ素が押し寄せたいわき市方面の子どもたちが含まれていません。
小児甲状腺がんの発症は、チェルノブイリ原発事故の翌年、ベラルーシで4名の子どもだった(→表1参照)のに対し、福島県では、(いわき市も含めると)60名を相当数上回る子どもたちに甲状腺がんが発症している可能性があります。 つまり、福島県は、ベラルーシの15倍以上の小児甲状腺がんが発生する可能性があります。
こんな酷い事態を放置して、果して法治国家と言えるのでしょうか。 放置国家、児童虐待国家と改名すべきではないでしょうか。
以下は、その事実を指摘した、抗告人の準備書面(8)(その別紙1~4)の全文です。
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平成24年(ラ)第12号抗告人 A1~A12
相手方 郡山市
抗告人準備書面 (8)
2013年2月20日
仙台高等裁判所民事2部 御 中
抗告人ら代理人弁護士 神 山 美智子
‥‥(略)
目 次
1 甲状腺検査結果
2 事故直後の放射性ヨウ素の内部被ばく線量について
3 結論
1、甲状腺検査結果
福島県の県民健康管理調査の検討委員会(座長・山下俊一福島県立医大副学長)は、本年2月13日に至り、前回(昨年11月18日)に公表以降の甲状腺等の検査結果を公表した(甲226)。
但し、今回は、昨年9月11日までは公表していた市町村別の実施状況(甲162)を一切公表せず、そのため、今回、公表された郡山市の子ども達の受診者数も不明である(昨年6月12日公表の資料では、福島市の検査状況について、6月8日現在の途中段階であっても受信者数を公表していたのに比べ、明らかに情報を非公開にしている。別紙1参照)。
むろん福島県は、既に検査結果済みの郡山市のデータを保有しているが、しかし福島県は、郡山市や福島市をはじめとする各市町村の小中学校のデータを、小中学校の学校設置者であり、小中学生を放射能から安全な環境で教育する憲法上の義務を負う各市町村に提供していないことが判明したので、抗告人が直ちにこれを入手することは不可能である。そのため、甲226の配布資料からは郡山市の子ども達の甲状腺検査結果を論ずることができない。しかし、福島県が公表した甲状腺検査の実施スケジュール(案)(別紙2)によれば、前回(昨年11月18日)の公表分31,182名は福島市の残り、二本松市、本宮市、桑折町、国見町などであり、今回の公表分35,189名は白河市、西郷村、泉崎村(対象者は合計14,655名)と郡山市(対象者は64,478名))の一部であることが分かるから、公表分の優に半数以上が郡山市であると推測される。
それによると、
①.
甲状腺検査の一次検査について
今回公表分35,189名(平成24年度、これまでの受診者総数111,546名-前回の受診者総数76,357名=35,189名)のうち、6~10歳の女子、11~15歳の女子についてみると、以下の表の通り「のう胞」または「結節」が見つかっており、この割合はこれまでで最高である。
年齢区分
|
A2
|
B
|
計
|
受診者数
|
割合
|
6~10歳
|
2,519
|
26
|
2,545
|
4,591
|
55.4%
|
11~15歳
|
4,460
|
89
|
4,549
|
7,894
|
57.6%
|
(注)上記表の数値の計算方法(以下の通り、今回と前回の数値の差を出した)
6~10歳の女子
公表時期
|
A2
|
B
|
受診者数
|
今回(2.13)
|
7,004
|
48
|
13,035
|
前回(11.18)
|
4,485
|
22
|
8,444
|
差
|
2,519
|
26
|
4,591
|
11~15歳の女子
公表時期
|
A2
|
B
|
受診者数
|
今回(2.13)
|
9,056
|
175
|
16,409
|
前回(11.18)
|
4,596
|
86
|
8,515
|
差
|
4,460
|
89
|
7,894
|
また、平成24年度のこれまでの受診者総数111,546名について、「のう胞」または「結節」が見つかったのは44.63%に達する。
これらの割合の数値が意味することについては、昨年4月26日公表の甲状腺検査結果を検討した松崎意見書(甲131)が明らかにしたことがそのまま当てはまる。要点をくり返すと、上記検査の主体である検討委員会の座長=山下俊一・福島県立医大副学長らが2000年に放射能非汚染地域の長崎の子どもたちを甲状腺検査した結果「のう胞」が見られたのは0.8%(甲131。3頁。同別紙2の論文593頁右段3~5行目)、チェルノブイリ事故の5~10年後にチェルノブイリ地域の子供たちを調査した結果「のう胞」が見られたのは0.5%(甲131。4~5頁)であるから,これらと比べて途方もなく高い値である。
②.甲状腺検査結果の二次検査について
今回、二次検査により「甲状腺がん、新たに2人 他7人に疑い」(毎日新聞の見出し)が報告された。但し、その報告の中身は報道により異なるので、改めて、正確に説明すると次のようになる。
今回、二次検査により「甲状腺がん、新たに2人 他7人に疑い」(毎日新聞の見出し)が報告された。但し、その報告の中身は報道により異なるので、改めて、正確に説明すると次のようになる。
2011年度の甲状腺の一次検査をおこなった3万8114人のうち、二次検査の対象であるB判定は186人だった。前回(昨年11月18日)までに、81名(別紙3)が二次検査を終え、その結果、1名の甲状腺がんが判明した。今回、151(※1)-81=70名が二次検査を終え、その結果、手術後の確定診断[1]により甲状腺がん2名、「細胞診」(穿刺吸引細胞診)[2]により甲状腺がんの疑いが7名となった。
(※1)2013年2月13日公表資料2-1 6頁「二次検査の実施状況」二次検査修了者
この事態をどう評価すべきかについて、検討委員会の座長である山下俊一氏が検診したチェルノブイリ事故による甲状腺がんの発生データと対比して明らかにした北海道深川市立病院内科の松崎道幸医師作成の意見書(5)(甲163)を今般提出する。
(※1)2013年2月13日公表資料2-1 6頁「二次検査の実施状況」二次検査修了者
この事態をどう評価すべきかについて、検討委員会の座長である山下俊一氏が検診したチェルノブイリ事故による甲状腺がんの発生データと対比して明らかにした北海道深川市立病院内科の松崎道幸医師作成の意見書(5)(甲163)を今般提出する。
この松崎意見書(5)によれば、まず、7名の「甲状腺がんの疑い」とは「白か黒か50対50である」という意味の「疑い」ではなく、毎日新聞の報道にもある「約8割の確率で甲状腺がんの可能性」があるということ、すなわち「甲状腺がんの疑いが濃厚である」ことを意味する(5頁)。
次に、この評価を前提にして、今回の検査結果について、チェルノブイリのデータと具体的に対比した上で次の結論を導いている(8頁)。
1.
現在の福島の子どもたちには、被ばくから数年後のチェルノブイリ高汚染地域の子どもに匹敵する頻度で甲状腺がんが発生している。
2.
甲状腺がんは今後激増する恐れがある。
中通りを検査対象とした平成24年度の検査の結果、二次検査を要するB判定は、全受診者数の0.6%だった(※2)。
(※2)2013年2月13日公表資料2-1 2頁「甲状腺検査の結果概要①」
これまで判明した「甲状腺がんが3名、甲状腺がんの疑いが濃厚が7名」は平成23年度の二次検査を終了した151名の中から見つかったから、これは二次検査修了者数の6.6%である(※3)。
(※3)10÷151=6.6%
(※2)2013年2月13日公表資料2-1 2頁「甲状腺検査の結果概要①」
これまで判明した「甲状腺がんが3名、甲状腺がんの疑いが濃厚が7名」は平成23年度の二次検査を終了した151名の中から見つかったから、これは二次検査修了者数の6.6%である(※3)。
(※3)10÷151=6.6%
そして、郡山市の最新の小中学生の総数は30,148名(別紙4。小学生19,785名。中学生10,363名)だから、次の計算式により、郡山市の小中学生の中から最大12名の甲状腺がん発生が予測される。
30,148名×0.6%×6.6%=11.9名
しかし、これは原発事故2年目での発生数である。チェルノブイリのベラルーシでは以下の表1の通り、事故後5、6年目から小児甲状腺ガン数が激増した(甲104矢ヶ崎意見書(4)別紙3参照)、これによると、事故の2年目、3年目の4名と5名に対して、5年目、6年目は29名と59名と激増し、5.8~14.75倍となった。
ベラルーシの甲状線ガンの数(M.V.マリコ「ベラルーシの青年・大人の甲状腺ガン」(今中哲二編纂「チェルノブイリによる放射能災害」所収)
今般提出の松崎意見書(5)によれば、「福島の小児甲状腺がんの発生率はチェルノブイリと同じかそれ以上のおそれがある」(2頁)のであり、これを数字で示すと、郡山市の小中学生は、原発事故後5~6年目には、小児甲状腺がんの発生が次のように予測される。
最小 11.9名×5.8倍=69名
最大 11.9名×14.75倍=175.5名
しかも重要なことは、甲状腺がんの発生原因は、松崎意見書(5)が指摘した通り、《チェルノブイリの小児甲状腺がんが、急性の直接被ばく(事故初期のヨード被ばく)だけでなく、その後の持続的低線量被ばく(放射性降下物による地表汚染)によって発生増加している》(7頁5)ことである。これは松崎氏の独断ではなく、山下俊一氏らの論文に書かれているものである(8頁に該当部分が引用)。
その上重要なことは、ウクライナ政府報告書(甲62・同148)でも示されている通り、甲状腺がんは子ども達の被ばくによる健康被害の氷山の一角にすぎず、象徴的な出来事だということである。言うまでもなく人は甲状腺だけを被ばくするのではなく、それ以外の様々な臓器、全身も被ばくしている。甲状腺障害が深刻であるということは白血病、心臓病、腎臓病、免疫力の著しい低下等の他の様々な健康障害も深刻であると予測させるものである(甲62・同148ウクライナ政府報告書。甲152NHK・ETV特集「ウクライナは訴える」)。
ここから導かれることは、松崎意見書(5)の締めくくりの言葉、《私たちが出来るのは、子どもたちにこれ以上の放射線被ばくをさせないことです。子どもたちを現状の放射線汚染地域に住まわせることを見直し、移住・疎開等を真剣に考慮すべきです。》(7頁)に尽きる。
言い換えれば、子ども達は遊んで原発を壊したのでもなければ、原発を誘致した訳でもなく、原発事故の純然たる被害者である。事故の加害者である国と共に子どもを安全な環境で教育する憲法上の責務を負っている郡山市は子ども達をこれ以上被ばくさせないことによって、これ以上の甲状腺障害を初めとする様々な健康障害の発生から子どもたちを守る義務がある。それは、子どもたちを今すぐ安全な場所に避難させること、これによってしか実現の方法はない。
2、事故直後の放射性ヨウ素の内部被ばく線量について
放射性ヨウ素131は半減期8日と短い間に消失してしまうため、早期の測定、調査が不可欠だが、福島原発事故直後、国は、放射性ヨウ素131の動きを十分に捕まえることはできず、住民の内部被ばく調査も行うこともなく、住民は、放射性ヨウ素131によってどれくらい初期の内部被ばくをしたのか不安を抱いてきた。これに対し、本年1月27日の国際シンポジウムで、放射性医学総合研究所が甲状腺被曝線量を推計した結果を報告した。新聞報道によれば、《原発事故直後に飛散した放射性ヨウ素による1歳児の甲状腺被ばく量(等価線量)は30ミリシーベルト以下がほとんどだった‥‥国際原子力機関(IAEA)が甲状腺被ばくを防ぐため安定ヨウ素剤を飲む目安としている50ミリシーベルトを下回った。》(福島民報)という安心をもたらす内容だった。
しかし、この推定は果して的確なものだろうか。それは約2週間後の県民健康管理調査の検討委員会で明らかにされた甲状腺がんの発症数の深刻な事実によって、この推定の不完全さが最も雄弁に証明された。
のみならず、この推定の構造をつぶさに検証した報告書を今般、提出する(甲228)。県民健康管理調査の結果が上記推定を外側から揺るがすものだとしたら、これは内側から科学的に論駁するものである。
3、結論
小児甲状腺がんは、通常なら100万人に1人の病気である。福島県の県民健康管理調査の検討委員会による本年2月13日の結果発表により、前述した通り、平成23年度検査によってB判定とされた子どもらのうち、6.6%の子どもが甲状腺がんを発症している疑いが濃厚となった。平成24年度検査でB判定とされた子どもは、公表されているだけで549人であり、福島県は、更に郡山市、三春町で200名程度の追加が見込まれるとしている(甲226.6頁■二次検査体制拡充の9行目)。すなわち、750名程度の子どもがB判定とされるのである。そして、今回の結果発表の結果によれば、このうち6.6%程度の子どもに甲状腺がんが発症している可能性がある。約50名である(750人×0.066=49.5人)。公表されている平成23年度検査の10名と合わせると60名になる。更に言えば、福島第一原発事故によって平成23年3月15日に最も大量の放射性ヨウ素が押し寄せたいわき市方面の子ども達は、未だに検査すらなされていない(ようやく平成25年度の検査予定である〔甲226.8頁〕)のである。いわき市方面では、更に相当数の子どもに甲状腺がんが発症している可能性がある。
チェルノブイリ原発事故の翌年、ベラルーシでは4名の子どもに甲状腺がんが発症した。福島では、既に60名を相当数上回る子どもたちに甲状腺がんが発症している可能性がある。原発事故を原因とする甲状腺がんが本格的に発症するのは、事故から4~5年後からである。このまま手をこまねいた場合、福島の子ども達にどのような悲劇が待っているのだろうか。
にもかかわらず、政府と福島県は、事ここに至っても、従来の姿勢を変えず、それどころか除染目標の年間1ミリシーベルトの引き上げの検討すら表明している(2013年2月18日 読売新聞ほか)。もはや望みは、人権の最後の砦である司法しかない。それとも、司法は、福島の子ども達を悲劇の底に突き落とす共同正犯になるつもりなのだろうか。日本のみならず全世界が固唾を飲んで注視している。
以 上
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